2019年06月08日

死人狩り/笹沢左保

 勢いがついているのかどんどん読み進む。 翻訳ものに比べると、やっぱり最初から日本語の本は読みやすいから。

  死人狩り.jpg でもなんかイメージと違った・・・。
 7月、伊豆西海岸を下田から沼津まで結ぶ60人乗りバスに、銃弾が撃ち込まれて運転手が死亡、そのままバスは海に転落し、乗員乗客27人全員が死亡した。 警察は無差別大量殺人ではなく、乗客の誰かに強い恨みを持つ者による犯行とみなして、被害者についてしらみつぶしにあたっていく。 犯人の狙いはいったい誰なのか、事件の真相とは・・・という話。

 タイトルの『死人狩り』とは、死んでしまった被害者たちの背後関係を探る、という意味だった。
 えっ?!、って感じ。 なんか思っていたのと違ったよ。
 しかも時代のせいなのか(オリジナルは昭和57年4月に刊行)、痴情のもつれというか・・・必要以上にエロい場面があるんですけど・・・(汗)。 かといって官能小説に分類されるほどではないので、あの時代、駅の売店で買って新幹線や特急で読む出張族向けにエロを強化された文庫やノベルズが多かった、と何かで読んだことがあるような・・・これもそういう感じだったのかしら。 それでなくとも著者はキャリアの後半、ほぼエロの通俗サスペンスを量産していたような印象があたしにもあり、これはさきがけの時期? 過渡期?
 別な時代性にも驚く。

> 男が靴ベラをズボンのポケットに入れて持ち歩いているということは、九九パーセントまで確かである。

 ・・・マジで! 当時男性は革靴をオーダーして作ってもらうのが常識だったのですか。 そういうところは興味深い。 警察の人が参考人を恫喝したり、その言動は今の基準ではアウトだろうなぁ、っていうのは想定内だったけど。
 浦上という刑事さんが伊集院さんという刑事とコンビを組んで聞き込みに動くのだが、浦上さんは妻と子供二人をなくしている(このバスに同乗していた)。 捜査中に伊集院さんが何者かに襲撃され、病院に担ぎ込まれたことがあった。数日入院を言い渡され、ぶつくさ言う伊集院に、浦上が、
>「たまには、人生についてゆっくり考えていろ。特捜本部の方からも、無理をしないようにと言って来ているし、おれも一人で歩くのは女房を亡くしたような気がして寂しいんだが、仕方のないことだろう」
 となだめるのだが・・・いやいやいや、浦上さん、奥さんと子供たち亡くしたばかりなんですけど! そんな状況でこんなこと、言う? 作者、ここ書いてるとき浦上の奥さん死んでること忘れてたんじゃないの? それとも、そういう軽口(?)、出て当たり前なものですか?
 コンプライアンスではないけれど、「そんな無神経な発言しちゃう?」と思ってしまう今のあたし・・・こういうのが“不寛容な世の中”になっている証拠なのかしら。
 最後の章まで犯人がわからないのはサスペンス小説としての矜持なのかもしれないですが、あたしは途中で「そうなんじゃないかなぁ」と思い当たってしまった。 だから余計に関係ないエロい話が苦痛だったのかもしれず。
 でも、ちょっと聞き込みをしたぐらいで、その人を殺すような人がいたとは思えない、と結論付けているのは・・・大丈夫なのですか。 それとも、現在のほうが予想もしない裏の顔を持つ人の割合は増えているということか。 ネットもスマホもこの時代はなかったしね。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする