2019年06月07日

アメリカン・アニマルズ/AMERICAN ANIMALS

 詐欺とか盗難とか、実はあまり好きじゃない。 華麗な盗みの手口はすごいよね、とは思うけど、だまされた・盗まれた側のことを思うと心から楽しめないというか(怪人二十面相は明智小五郎という好敵手がいるから、うまくやってもやり返されて痛い目に遭っているので楽しめる)。 なのでこの映画も予告編では『オーシャンズ』シリーズや『レザボア・ドッグス』を引き合いに出していたので、「・・・ちょっと、どうかな」だった。 でもなんかひっかかっていて・・・「あ、これ、観に行ける最後のチャンスかも」と気づいたときに行ってしまった。

  アメリカン・アニマルズP.jpg 普通の大学生が起こした普通じゃない強盗事件。
  ケンタッキー州の大学図書館に眠る時価12億円を超えるヴィンテージ本を狙った事件。まさかの実話。

 2004年、ケンタッキー州トランシルヴァニア大学の図書館にて盗難事件が発生した。
 犯人は4人の大学生。 自由を追い求めるウォーレン(エヴァン・ピーターズ)と特別な何かを手にしたいスペンサー(バリー・コーガン)、とFBIエージェントを目指しているエリック(ジャレッド・アブラハムソン)とトレーニングジムの経営に携わり成功していたチャズ(ブレイク・ジェナー)。 目的は時価1200万ドルともいわれるジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』。 彼らはどうやって計画を練り、どのように実行したのか・・・という話。
 冒頭に、「THIS IS NOT BASED ON A TRUE STORY. THIS IS A TRUE STORY.(これは真実に基づいた物語ではない。真実の物語だ。)」と出る。 え、どういう意味だろう?、と思っていたら・・・モデルになった本人たちとその家族、関係者も出てきてインタビューパートもあるのであった。

  アメリカン・アニマルズ3.jpg バリー・コーガンの顔がコワい。
 『聖なる鹿殺し』のときのヤバさ具合が印象深すぎて(『ダンケルク』のときはそこまで気にならなかったのに)、スペンサーがとにかくなにかをやらかしそうで怖いのだが、本物のスペンサーがまるでアンドリュー・ガーフィールドと若い頃のデニス・クエイドの間みたいな顔をしているのでびっくりする。 普通にハンサムでいいおにいちゃんみたいじゃないか。 本物のウォーレンの方は主犯を疑われたのも頷ける感じのやばい雰囲気を発しているが、演じるほうはちょっと窪田正孝似のマイルド寄り。 エリックとチャズは本物とちょっと似た雰囲気なのに。 それがただの再現ドラマとは違う奇妙なバランスを保っているような、あえてバランスを放棄しているような。 とにもかくにも、<青春期の痛み>をしっかり描いているなぁ、と思う。
 ひとりの証言から複数の表現にするあたりが面白い。記憶は曖昧だし、その人にとってそれが真実だとしても他の人から見たらそうとは限らない、をあらわしているのが、逆説的に「真実の物語」なのかな、と思う。

  アメリカン・アニマルズ2.jpg 『アメリカの鳥類』、これで畳一畳分ぐらいある。
 本の形になってはいるが、貴重な複製画を束ねたという形状。 だから高価なのだが・・・そんな有名なものはすぐ足がつくし、ウラでさばこうと思えば足元みられて安く買いたたかれるし、いくら管理がゆるそうでたやすく盗めると思っても、本気でやろうとするなんてバカじゃない?、とついあたしは考えてしまう・・・仮に盗んだとして、どう保管するわけ? 芸術品への気配りを彼らがしていない点で、「おいおい、お前たち!」と言いたくなる感じなのだが、もうつっこみたいとこ満載だよ・・・「あぁ、バカだなぁ」と何回思ったか。
 それは2004年の彼らであり、現在の本物の彼らでもあり・・・痛みもわかるんだけど。 物語をぶつ切りする形でインタビュー画面を挿入するのも、ただの物語として消費してほしくない、こちらを居心地悪くさせていろいろと考えさせるようにということだろうか。 だとしたら、あたしはまんまとはまってしまいましたよ。

  アメリカン・アニマルズ1.jpg 実行当日、年寄りに変装。
 彼らはほんとにバカなのだが、「退屈な日常を脱したい・ここを超えたら何かが変わるに違いない」と考えることをとがめることが自分にはできるだろうか、と考える。 自分は特別だ、必ず何かを成し遂げるはずと思わなかったことなどないと言えるだろうか。 ただあたしは犯罪になることをしなかっただけ、物理的にではなくともわかっていたけど誰かを傷つけたことはあったのではないか、自分にとってこの人は価値はないと口にしなくとも思ったことは数多くある。 世界は自分の思うがままだとうぬぼれない若者の方が少ない。 でも、実際に行動に移す人の方が少数だから、余計特別だと見えてしまうのだろうか。
 彼らは行動に移した結果、罪悪感を背負って、更に収監もされる。 そんな犠牲を払っていったい何を手に入れたんだろうか? 行動に移さなかった場合に彼らが手にするはずのものは永遠に失われてしまったのだろうか。 むなしいな・・・。
 計画だけなら完璧だ、いつだって。 現実は必ず、不確定要素が入ってくる。 それをどこまで予測するか、予測しようと思うか。 本人も言っていた、「引き返すチャンスは何度もあった」と。 それでも引き返さなかったのはやはり彼らの読みが甘かったのと、「その先を知りたい」気持ちに乗っかってしまったからだ。 それもまた「若さ故」なんですかねぇ。
 なんだかすごく切なくなった。
 それは「自分がもう若くない」と思い知らされたからではない。 年齢がいくつであろうとも、何かを飛び越えれば何かが変わると考えてしまう人はいて、そのうちの何人かは実行に移してしまうのだ、ということに。 もしかしたら若いうちならそこから学びやり直しができるのかもしれないけど、若くないということはやり直しの可能性自体断たれていると思い込むよね、と。
 居心地の悪い映画だけど、でもこの感じ、キライじゃないよ。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする