2019年06月02日

殺人鬼がもう一人/若竹七海

 あ、若竹七海の新刊!、と本屋で思い、でも葉村晶シリーズではないな、そもそも文庫じゃないし、ということで図書館に予約。 それがようやく回ってきましたよ(でもこれより前に予約した米澤穂信『本と鍵の世界』はまだまだ待機人数が多い・・・)。

  殺人鬼がもう一人.jpg 連作短編集でした。
 東京都心まで電車で約一時間半の場所にある辛夷ヶ丘は、かつては勢いのあるニュータウンだったが今ではさびれたベッドタウン。 成長した子供たちは都心へ出ていき、年齢を重ねた親世代が多く残っている、典型的な<さびれた郊外>である。 そんな町では事件もなく平和でのどか・・・と思いがちだが、何故か放火殺人があったり、空き巣や詐欺の事件も相次ぎ、ダメ警察官の吹き溜まりと噂される辛夷ヶ丘署は上も下への大騒ぎ。 生活安全課に所属する砂井三琴と田中盛が捜査を命じられ・・・。 そこから始まる、個性が強すぎる住人たちのこと。

 『ゴブリンシャークの目』・『丘の上の死神』・『黒い袖』・『きれいごとじゃない』・『葬儀の裏で』・『殺人鬼がもう一人』の6編収録。 最初の2編は砂井三琴が語り手だが、3編目からはそれぞれ違う語り手に。 でも砂井三琴はすべてに登場するし、前の話で名前が出てきた人が次で主要人物になったりといったクロスオーバー感もあり。 田舎町が舞台ならコージーミステリっぽくもできるのに、あえてそことは最も遠い(でもよく考えたら遠くないのか)、人の悪意どころではないダークでヘヴィななにかがてんこ盛り。 でも文体はどこかユーモアを漂わせているので余計にたちが悪く、「なにこれ、ホラー!」と大変気分が重くなる感じ。
 勿論、面白いんですよ! 面白いんだけど・・・イヤミスなら重いほうがまだ耐えられる。 軽いタッチのイヤミスってこんなにイヤな気持ちになるか、とびっくり。
 こういう<底意地の悪さ>が若竹七海の真骨頂だと言われれば確かにその通りなんですけど・・・思いのほか、自分が“良識の徒”なのだと気づかされてしまいました。
 でもきっと、もしこれの続編が出たら読んじゃうんだろうな。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする