2019年05月23日

家蝿とカナリア/ヘレン・マクロイ

 図書館予約本が落ち着いたので、またヘレン・マクロイに戻ってみる。
 『幽霊の2/3』に並ぶ、もしくはそれ以上とも評判の高い、『家蠅とカナリア』。 これはちょっと厚めだし、あたしは『幽霊の2/3』に衝撃を受けてしまったクチなので、ずっと読むのをためらっていたのよね・・・でもそんなこと言ってたらいつまでも読めない! このタイミングで読んじゃえ!、と勢いがつきまして。

  家蠅とカナリア ヘレン・マクロイ.jpg “Cue for Murder”:<殺人の合図>?
 1942年。 ニューヨークのある劇場にて上演中に、舞台上の一人が殺されていることがわかる。 舞台初日に招かれていた精神分析学者でニューヨークの警察顧問も務めるベイジル・ウィリングは、犯行の前から劇場周辺で起こっていた奇妙な出来事が気にかかっていた。 衆人環視の中で起こった殺人にウィリングはどう挑むのか・・・という話。

 ベイジル・ウィリング博士モノ第二弾ということで・・・ウィリング博士のキャラクターがまだ硬いというか、一人一段高みにいる感が強くてあらためて驚く。 まだ恋人のギゼラも登場していないため、ある時期の少年探偵団ものの明智小五郎のように、完全無欠のスーパーヒーローなのだ。 真実がわかっているのにあえて口に出さない、みたいなところもあって。
 で、いつものように<人間の心理>に重きを置いた話ではあるのだが、演劇界を舞台にしているのが他の作品とはちょっと違うところ。 才能のあるなしにかかわらず、芸術というジャンルに身を置こうという人々はそうじゃない人たちとはちょっと違う。 キャロル・オコンネルの<キャシー・マロリーシリーズ>の『死のオブジェ』あたりをつい連想してしまい、登場人物のキャラの濃さが似ているのかな、と感じたりする。 でも割とステレオタイプな登場人物も多いような気もするのだが・・・なんだろう、この「読まされてしまう」感じは。 それが好きということかしら。
 時代も古いし、心理分析もいまと比べたらちょっと・・・というところもあるのに妙に納得もできてしまうのは、80年ぐらいでは人間の本質は変わらないということなのかも。 20年ぐらいだと文化的な古さが中途半端に強調されてしまうのかもしれないけれど、ある程度以上古い分にはまったく気にならない。
 しかも古典的な本格ミステリのように始まってそのまま続いていくのに、終盤サスペンススリラーに雰囲気がガラッと変わる鮮やかさ!
 勿論、犯人当てやトリックの解明は本格ミステリなのだけど。 このサスペンスの匙加減がロマンティックなのだよ!
 もしかしたら著者が女性というところもちょっと関係しているのかしら(読者のあたしも女性だから?)。 あまり作者の性別を意識することはないのだが・・・ファンだから、ということでしょうか。
 あぁ、残り作品が少なくなったなぁ! ちょっと間を置こうか。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする