イタリア映画も最近公開されるの増えてきたよね〜。 ラテン系好きとしてはうれしい、かつてイタリア語会話をEテレで学んでいた身としても耳を鍛えるいい機会である(とはいえ勉強はすっかりやめてしまっているのだが)。 というわけでイタリア映画、できるだけ観に行きたいのだがうまいこと日程が合わず、やっとこれに。 しかもジャンルとしてはサスペンス、アメリカのテレビドラマのリメイクだという。
コピーがほぼあらすじだという・・・物語はカフェ・バール<ザ・プレイス>のみで展開される。
奥の席に一日中座り、分厚いノートに何かを書いている男(ヴァレリオ・マスタンドレア)。 彼に自分の願いをかなえてもらいたい男女が、店に入れ代わり立ち代わり現れては彼に悩みを打ち明け、状況を報告する。 たとえば、「以前のように神を感じられなくなった。 また神を感じたい」とやってきた若きシスターには、「妊娠しろ」と言い、「シスターだからそんなことはできない」と返せば「では神を感じられなくてもいいのだな」と・・・数日悩んでまたやってきた彼女と会話し、彼女は「ではどういう相手がいいか」と考え始める。
たやすい悩みならこんなところまで来ないため、それぞれの願いは切実でありながら実現が難しいものばかり。 だから男もまたそう簡単にはできない条件を出すのであろうか。
バールがそもそも「昼はカフェ、夜はバー、簡単な食事もとれます」というお店。 一時期定着しかけたのだが、日本では最近<バル>の勢力が強くなってきて(スペイン語、バルとバールはほぼ同じもの)、バルは西洋風居酒屋っぽく使われることが多いような。 <ザ・プレイス>はイタリアにはよくあるバールっぽく、広くもなく狭くもない。 カウンターの奥のガラスケースにはフォカッチャ的なパンや乾燥パスタなどが並んでいて・・・わぁ、おいしそう、と思う。
しかし物語には食べ物はほとんど出てこない。
帰ることはないのか。 店のオーナーの知り合いなのか、むしろオーナーなのか。 合間に彼が飲んだり食べたりするシーンはあるが、すぐに客がやってくるので食べ物がクロースアップされることはない。 「食べること」はこの映画ではまったく重視されていない。
そのかわり(?)、この映画はほぼ会話劇。 何が起きたか・どう考えたか客が話すことを男は詳細に聞きたがり、記入する。 話の内容が再現フィルムになることもないが、なんとなくその映像はこちらがイメージできるものになっている。 これも、ワンシチュエーションドラマになるのかな?
依頼に訪れるのは9人の男女。 説明はほぼなく、会話を重ねることでどういうことかわかっていく・・・のでずっと観ていないといけないのだが、無茶な願いに無茶な提案の繰り返しなので「次はどうなる!」とぐんぐん引き込まれる。 顔で区別できればいいから名前も気にしなくていいし(それが主要登場人物が少ない映画のいいところ)。
依頼人の希望に対し、男はノートを見て「ならばこうすればいい」と提案する。 「なんでそんなことを!」と依頼人たちは驚き、「それ以外のことならなんでもいい・別の方法にしてくれ」と懇願する。 それ以外では無理だ、と男は答え、イヤならやめていいと言う。 最終的に納得し、依頼人と男は握手を交わす。 これって、<契約>ですか?
実際、完了報告に来た依頼人とは「願いはかなう、これで終わりだ」とまた握手を交わす。
男は誰かの代理人のような立場なのだろうか。 無茶なことをしなくてはいけない依頼人はプレッシャーに耐え兼ね、男を悪魔呼ばわりする。 でもそもそも決めたのは自分なのに・・・感情をぶつけられる相手がいれば、そこに責任を押し付けたがるのもまた人間ということか。
いかにもなイタリア美女!、の登場にわかりやすくドキドキする。 しかもアンジェラって天使って意味じゃない?
依頼人たちの運命が交錯するのは想定内だったが、もっと厳密なジグソーパズル風になるかと思っていたらそうじゃなかった(結構大雑把なざっくり系)。 それと同時に男の存在について迫る部分の多さに驚く(そこはスルーか放置かと思っていた)。 男の苦悩がじわじわと浮かび上がってくる感じ、表情のうまさだなぁ。 めちゃめちゃハンサムというわけでもなく普通によくいそうな感じの人で、でもその目で普通の人ではないとわかる、みたいな。
神・悪魔・運命・人間・・・と大きなものについて否応なく考えさせられる内容で、勿論「答えは見る人の心次第」ではあるものの、エンディングでは不思議と妙な爽快感があるという。
名前はわからないけどなんとなく見たことがあるような人もいて、イタリア映画界の実力派アンサンブルキャストなのではないかと推測。 うまい人が集まるとそれだけで見ごたえあり! ただ日本語字幕がちょっと残念というか、文字数制限のせいかかなり訳が足りていないところを感じ・・・だからちょっとわかりにくいところがあるように感じた。 特に話が観念的になるところは。 あぁ、もったいない。 豪華声優キャストでの日本語吹替版を観たいなぁ、としみじみ思う。