2019年04月26日

殺す者と殺される者/ヘレン・マクロイ

 またしても、ヘレン・マクロイに戻る。
 これは<ベイジル・ウィリング博士もの>ではないが、ヘレン・マクロイの最高傑作だという人もいる。 自然とハードルが上がりがちだが、内容についてあたしには予備知識がほぼないので、ノンシリーズ物として読み始める。

  殺す者と殺される者 ヘレン・マクロイ.jpg 時代を感じるサスペンスだが、ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)とは雰囲気が全然違う。

 大学で教えていたハリー(ヘンリー)・ディーンは、氷の上で昏倒し、意識不明で入院した。 おじからの遺産を相続し、不慮の事故からの回復をきっかけにして、ハリーは仕事を辞めて故郷クリアウォーターへ戻ることにした。
 新たな環境で新たに始まる生活。 初恋の人は結婚しているが、自分の中には彼女への想いが消えずに残っていることを知るハリー。 そして引き出しの中の運転免許証が消え、差出人不明の手紙が部屋にある、など、小さなが次々と起こる。 いったいこの町で何が起き、何が起ころうとしているのか・・・という話。

 ウィリング博士は出てこないけど、心理学的要素や用語がたくさん。 そのへんが「あぁ、ヘレン・マクロイだなぁ」と感じる所以。
 一人称である効果が絶大というか、こういうのがないと一人称を使ってはいけないのかな、ぐらいの気持ちにさせられる。
 途中で、ずっと前に読んだことのある『影をなくした男』のことを思い出す。 全然違う話なのだが、様々な兆候(それは予感にも通じる)にじわじわと不安を覚えていくハリーの感覚がそれに近いのかも。
 サスペンス的には先が読めてしまう部分もあるのだが・・・(それは書かれた時代的に仕方がない、後発作品をこちらが先に読んでいるせい)、ネタが割れたからといってそれで終わり、という話ではないので。 自分自身とは何か、という現代にも通じる根源的社会的な恐怖については今のところ古びる気配はない。
 単独作品だからこその面白さではあるけれど、もしウィリング博士が出てきて種明かしをしてくれたらいったいどういう展開になっただろう、と想像するのもまた楽し。 あっという間に読み終わってしまい、寂しい。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする