2019年04月11日

記者たち ‐ 衝撃と畏怖の真実/SHOCK AND AWE

 最近、ロブ・ライナー社会派だよなぁ、と感じていた。
 でも惹かれたのは予告でウディ・ハレルソンがメインの新聞記者として出ていたから(でもロブ・ライナー本人も重要そうな役で出ている)。
 <字幕監修:池上彰>を大きく宣伝してますが、2017年制作の映画がこの段階で日本公開されるのは、『バイス』の前座的な意味合いではないのか・・・という気がするのはあたしだけ?
 原題“SHOCK AND AWE”はイラク侵攻の作戦名で、“衝撃と畏怖”の意味である。

  記者たちP.jpg 真実は、誰のためにあるのか。
   仕組まれたイラク戦争、その真相を追い続けた記者たちの揺るぎない信念の物語。

 911の衝撃冷めやらぬアメリカ、<テロとの戦い>の舞台はアフガニスタンからイラクに移ろうとしていた。
 2002年、大統領ジョージ・W・ブッシュは「イラクは大量破壊兵器を保持している」として、イラク侵攻に舵を切る寸前。 
 全米で31の地方紙を傘下に持ち、記事を供給する新聞社ナイト・リッダーの記者ジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)はその前に、ホワイトハウスがイラクに戦争を仕掛ける気だと情報を入手する。 イラクにイスラム原理主義テロリストをバックアップする気などないと考えていたワシントン支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は二人に更なる取材を命じ、元従軍記者で高名なジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)をこの件で雇うことにする。
 取材の結果、イラクに大量破壊兵器がある証拠はなく、むしろ政府主導による捏造と情報操作であると確信したナイト・リッダーは連日報道するが、ワシントン・ポストやNYタイムズなど大手紙は政府見解をほぼそのまま流し、国中に愛国の嵐が吹き荒れる。 次第に孤立するナイト・リッダーだが、記者たちは自分たちが調べた事実を信じ、戦争回避の道を模索する・・・という話。
 悲しいことに、イラク戦争が始まってしまったことも、イラクに大量破壊兵器がなかったことも今のあたしたちは知っている。 すべて政府の嘘だとわかった後も戦争が終わっていないことも。 だからひたすらにせつないのであった。

  記者たち1.jpg ナイト・リッダーの編集部。
 2002年前後ってインターネットは今ほど普及・浸透してなかったのだな、とか、リアルに自分が体験した時代でもあるので「あぁ、こういうニュース映像、見た!」といろいろ思い出す・・・。
 そう、日本にいても(いたから?)、「何故、急にイラク?」と感じたことは覚えている。 そのとまどいをもっと強く感じていたのがナイト・リッダーの記者たちだったのだと考えると、彼らの焦りがすごくよくわかる(大手メディアのほうはほとんど描かれないのでそっちが御用記者と化してしまったのは謎である)。
 そうそう、パウエル国務長官が最後の砦ってみんな思ってたよなぁ、とか。
 ブッシュはもちろん、ラムズフェルドもチェイニーもマジむかつくぜ!、な感じ。 まさに、『バイス』の予習にはもってこいだぜ・・・。

  記者たち3.jpg 政府関係者も良心あるものは、匿名が条件だがナイト・リッダーに実情を語る。
 役名もない数シーンの登場でも、見たことある役者さんがゴロゴロ出てくる。 これってロブ・ライナーの人徳なのだろうか。 多分低予算なのであろうこの作品に出るのは、ギャラとかよりも「こういう映画の手助けをしたい」というみなさんの心意気をとても感じた。 ロブ・ライナーが結果的に大変おいしい役で出演しているのも、経費削減策なのかもしれない(どうやら別の役者がキャスティングされていたようだがスケジュールが合わず、自分がやることにしたという)。
 経費削減でがんばらないとこういう映画はつくれない、というのは日本と一緒ですね・・・。

  記者たち5.jpg WTCビルが崩壊したのを見て、軍を志願した若者たちも多かった。
 新聞記者の姿だけでなく、そういう若者たちやその家族を描くことで広がりが出る。 彼らと記者たちが交差するシーンは、紙の上のことと現実の出来事がクロスする意味合いも持つわけで。
 でも全体的なテイストはほろ苦い。 同じく新聞記者たちを主人公にした『大統領の陰謀』、『スポットライト 世紀のスクープ』や『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』などと違ってカタルシスがないから(彼らの報道が世の中を変えられなかったことを観客は知っているから)。
 それでも、真実を信じて語り続けることをやめてはいけない、という誓い。 そういう人たちを一般人は見抜いて支えないといけない、という想い。

  記者たち4.jpg トミー・リー・ジョーンズ、絵にかいたようないぶし銀。
 <宇宙人ジョーンズ>感が一切ない、ベトナム帰りの従軍記者の言葉と存在の重み!
 政府報道官の誰の言葉より真実味があるのに、やはりテロへの恐怖が全土を支配していたあの空気感では届かないのか。 あとからならばいくらでも言えるけど、その時代特有の空気感は実際に同時代を生きていない者にはわからない・・・あたしがいくら資料をあたっても題材にした映画やドラマを観ても大学紛争や全共闘世代を理解できないのはそのせいなんだろうな、と納得。
 ウディ・ハレルソンはこちらの期待以上にキュートだったし(奥さんがミラ・ジョボヴィッチとか美人過ぎ!)、ジェームズ・マースデンも『X−men』のサイクロプスの頃と比べたらいい役者になりました。 地味テイストの映画って役者がより味わえるから好きさ。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする