2019年02月23日

ファースト・マン/FIRST MAN

 2月8日公開なのに、すっかり出遅れてしまった。
 そう感じたのは、まだ2週目だというのにシネコンで小さいスクリーンに移動させられ、一日の上映回数もがくんと減っていたからだ。 前宣伝すごくやってたのに、早々に「ヒットしない」と見切りをつけられたのか・・・いや、3週間で終わっちゃった『フロントランナー』よりはいい待遇なのかもしれない・・・。

  ファースト・マンP.jpg 月への不可能な旅路を体験せよ。
   人類史上、最も危険なミッション

 テストパイロットであったニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、ある日新聞に載っていたNASAの宇宙計画参加者募集を見て、試験を受けて合格する。 面接官の一人だったディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)が上司になった。 ニールは妻のジャネット(クレア・フォイ)らとともにヒューストンの専用住宅に移り住む。 隣の家は同じく試験に合格したエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)一家だった。 ジェミニ計画からアポロ計画、ソ連との宇宙開発競争の末、人類初の月への到達を目指す日々・・・という話。
 『人類 月へ行く』(トム・ハンクス製作総指揮のドラマ)と違ってNASAの宇宙計画をつぶさに網羅するものではなく、ニール視点での“体感”映画であった。 冒頭から大気圏周囲のものすごい振動に舌を噛みそうな感覚に陥った。 4DXで観たらどうなることやら(意外と大丈夫なのかもしれないが・・・2D版だとこちらが余計なことを想像して酔いそうになった可能性あり)。

  ファースト・マン2.jpg とにかく<失敗>、多い。
 ニールがNASAに入ったのはマーキュリー計画後らしい。 宇宙飛行士試験を受けるのは軍人か民間人かでわけられていたようだ(軍服を着ている受験者が、スーツ姿のニールたちを見て「インテリが」と言う)。 インテリでなにが悪いのか! そもそもニールは空軍にいた気がするんだけど、所属していても軍服を着る着ないの区別があるのかな? まぁそんな細かいことが気になってしまいました。
 というのも、ドキュメンタリータッチというかドラマティック性を排した仕上がりなので、すべてのシーンに意味があるのではないかと感じてしまって。 感情を表に出さないニールに対して、こちらがつい感情を引き受けてしまう。
 だから訓練のシーンや宇宙空間にいるシーンはほぼ恐怖。 ガタガタな機械・性能が貧弱なコンピュータ、よくこんなので宇宙に行きましたね!、というあとの時代から見てホラーでしかない。
 訓練中の事故で人が次々死んでいくのも・・・ついさっきまで普通にしてたのに、という。 だから誰もが生と死の境目にいる、次は自分かもしれないというのは、仲間たちの共通認識だったのだと。 そもそも、幼い長女を病で失っているニールにとっては生と死の曖昧な境界を求めていたのかも。

  ファースト・マン3.jpg ジャネットはニールを現実に引き留める役目。
 クレア・フォイ、『蜘蛛の巣を払う女』のリスベットと同じ人はとても思えなく、年齢ももっと上みたいに見えた。 ジャネット的にはいろいろ思うこともあったのでしょうが、そこは最低限しか。 ニールにとっては女神のような人という感じなので、母性強めに描かれているような(でもそこでいきなり怒らなくても、というシーンもなくはない・・・)。
 ニールはずっと“ほぼ無表情〜憂い顔”の周辺をうろうろしているので(ニールが感情を明確に表すのはアポロ1号の事故の連絡を受けた瞬間だけ)、感情豊かな人が近くにいてほしいですよね。

  ファースト・マン1.jpg アポロ計画後半、宇宙服もかなり立派に。
 その分、「宇宙計画はただのカネ食い虫」的世論が盛り上がる・・・黒人がラップで「白人が月に行く」という場面の破壊力はすごかった。 科学にはカネがかかるものなんですよ・・・でもそんなの関係ない人たちには全く伝わらないし、自分の生活もあやうい人たちにとってはそんなことにカネを使うなと言われたら反論できないよね。 でもアポロ計画が進んだのはソ連との競争に勝たなくてはという国のメンツがあったせいともいえるわけで・・・純粋な科学探求だけではここまでできなかったことは明白(日本だってはやぶさが成果を上げたから盛り上がるわけで、国産ロケット打ち上げ失敗が続いていた時期は「そんなこともうやめろ」と言われ続けていたんだもの)。
 なんだかせつなくなってくる。
 けれど月面着陸のシークエンスでは、すべてがどうでもよくなっている。 その瞬間がすべてで、それこそすべて地上に置いてきた、という感覚に。 空気が全部抜けて完全に無音になった時の驚きは、この世界に自分一人しかいないという感覚にも似た戦慄と恐怖。 だからこそ愛娘への想いに泣いてしまいそうになるのよ。 多分このシーンはフィクションだろうけど、ここを描きたかったのかも、という強い意志を感じてしまった。
 それにしてもおじさんがいっぱいで個人的にうれしかった。 キアラン・ハインズ、お約束のキャラだったわ、J・K・シモンズにもいてほしかった。 いつもあやしいジェイソン・クラークが(ついこの前は金髪の野獣だったのに!)普通の、むしろいい感じの人であやしさが薄れていたのでおどろいたし、マイク・コリンズなのはルーカス・ハースだし!
 あたし世代にとってのM・ナイト・シャマランが、今の世代にとってのデイミアン・チャゼルなのかもしれないなぁ、とふと感じた今日此頃。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする