2019年02月08日

天才作家の妻 ー40年目の真実ー/THE WIFE

 グレン・クローズがこれで、今回アカデミー賞主演女優賞に有力!だそうである。 中規模公開作品にしては事前の宣伝も早めにやっていたし(映画館で予告やチラシがあった、というレベルだが)、公開近くなってからは新聞や雑誌で取り上げられた映画評の切り抜きを掲示したりとシネ・リーブルではいつもやってることだが神戸国際松竹では比較的珍しい。 つまりそれだけ、「多くの人に観てほしい!」作品なのではないか、という熱意を感じるわけです。 まぁ、いまの映画館に足を運ぶ客層(50歳以上の方々)にアピールしそうな題材ということもあるかもしれないが。

  天才作家の妻P.jpg ノーベル賞の栄光に隠された【愛と嘘】

 1992年、アメリカ在住の現代文学界の重鎮とみられているジョセフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)はノーベル文学賞の知らせがくるのかどうか気をもんでいた。 妻のジョーン(グレン・クローズ)は「そういう電話は来るときは来るんだから、気にしないで普通にしていればいいのに」とゆったり構えているが、ジョセフは遠足前の子供のように落ち着きがない。
 不意に、待っていたその電話がくる。 飛び跳ねてよろこぶ二人、だがジョーンのほうが現実に戻るのは早かった。 お祝いのパーティーが開かれ、ジョセフの浮かれ気分は更に上昇する。 息子のデビッド(マックス・アイアンズ)とともにストックホルムで行われる授賞式に向かうジョセフとジョーンに、飛行機の中で記者・ジャーナリストのナサニエル(クリスチャン・スレーター)が声をかける。 是非インタビューを、という申し出に、ジョセフは「伝記作家はいらない」と冷たくあしらう。 しかしナサニエルの目的はジョーンのインタビューをとることだった・・・という話。

  天才作家の妻1.jpg ノーベル賞受賞をお知らせする電話、きました。
 なんで90年代設定にしたのか不思議だったが(年代まではっきりさせたら、その年にノーベル文学賞をとった人に失礼ではないのだろうか)、40年前の50年代ではまだまだ女性が社会的に活躍できない時代だったからか。 「夫を支える妻」という形でしか認められなかった時代・・・つらいです。 「糟糠の妻と思われるのはまっぴら」というジョーンの一言に、時代の抑圧のせいでしたかったことをあきらめた、という失意が漂う。
 それにしてもジョセフのダメなこと! 長女は妊娠中だというのに自分のお祝いなんだからちょっとぐらいいいだろ、とシャンパンの入ったグラスを強引に渡す・・・ひどいな! しかしそんな父に娘は慣れっこなのか、しぶしぶグラスを受け取るが持ち上げる気配ゼロ。 きちんと反論してもこの父親には通じない、と娘は学習しているのだな。

  天才作家の妻4.jpg ナサニエルと、デビッド。
 ある意味あきらめのいい(期待していない)姉に対し、弟のデビッドは自分でも作家の道を歩んでしまっているがために父親からのいい評価をもらいたくて仕方ない。 母であるジョーンがいくら「読んだわ。 素晴らしかった」と言ってもすんなり受け入れないし、いろいろこじらせている(だったら父親と同じ仕事するなよ)。 すぐすねる態度とか、全然大人になっていない雰囲気とか、「おまえ、父親にそっくりだな!」と言いたくなるぜ・・・ジョーン、子育て失敗しましたね。
 そんな機能不全家族に嵐を連れてくるナサニエル・・・なんか既視感があると思ったら、クリスチャン・スレーター、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でもレポーターの役だった! 老けましたね・・・(おたがいさまですが)。
 メインキャスト少なめ、室内での場面が多いしとても舞台的なところがあたしの好みです。

  天才作家の妻5.jpg 若かりし日の二人、ジョーンとジョセフ。
 結婚前の二人は、大学で文学・創作を教える講師とその学生。 しかもジョセフには妻と子供がいた・・・って、ほんとにクズ男だ! しかしそんな男に恋してしまったのだから、それはジョーンのせいでしょう。 ジョセフの元妻がジョーンに、「夫を引き取ってくれてありがとう」と言っちゃうような相手ですよ! 私だったら大丈夫、と思ってしまったのでしょうか。 その責任感(?)から結婚生活を40年続けてきたのでしょうか。 ある意味、この二人は似た者同士ということなのか・・・。
 恋愛には当事者以外には理解できないことが多々あり、逆に言えばその二人が満足していれば傍からどう見えようともしあわせだったりするから。

  天才作家の妻2.jpg ノーベル賞授賞式と、その後の晩餐会。
 授賞式のトリビアは面白かった。 アメリカ人は基本、お辞儀をする習慣がないのね。 ホテル側がサプライズを用意するとか(断ってもいいらしいが、ジョセフが話を聞いていなかったのでそのまま決行)。 そう、旅先でジョセフがよりグダグダになっている・・・ノーベル財団の招待だから旅費・滞在費用その他は全部財団持ちだからか、ジョセフはとにかくやたらめったら食べている・・・普段はジョーンにもっと節制しろと注意されているのだろうか。 あげく担当のカメラマン(若い女性)に色目を使う・・・ほんとに現代文学において文学の枠を広げた画期的な作品を書いた人なんですか、この人?
 ジョーンの鬱屈やイライラ加減がなくても、ジョセフは信用できないってなっちゃうんだよ。
 ただ、部屋で大喧嘩しても、娘から「無事に孫が生まれましたよ」と電話が来れば手を取り合っておおよろこび、さっきまでの喧嘩がどこかに吹っ飛んでいる・・・それが夫婦としての40年の歴史なのかもしれず、片方はそれで終わったと思っていてももう片方には別の話になっただけで終わっていないということかもしれず・・・。
 この、男性にありがちな単細胞的思考と、女性にありがちな解決していない問題はどんどん降り積もる性質も、お互いがそのことをわかっていればうまくいくのだろうが・・・ジョセフは「その話はもう終わった」と思ってとんでもないスピーチをしてしまうので、ジョーンの怒りは40年分爆発してしまう。 「あー、それ言ったら終わりだ!」ということをジョセフは自信を持って言っちゃうんだよ・・・むしろそう言えばジョーンはよろこんでくれると疑っていない愚かしさに背筋が寒くなる。

  天才作家の妻6.jpg 更なる大喧嘩。
 自分の何が悪いのかいまいちピンと来ていないジョセフ、最悪だ・・・。 しかしだからこそ、ジョーンはやっとこの関係に終止符を打つことを決意したのかも。 自分ばかりが耐えてきた、という思いは自分をどんどんすり減らすものだから(この点、日本人女性のほうが共感しやすいかもね)。 でも、そういう相手を選んだのもまた自分だというのが絶望的。
 ダメ息子のデビッドも、幼少の頃から両親の不安定さ(その言葉だけでは表現しきれないが)を見てきているから今のようになり、姉はもう少し大きかったからその理由をうっすらと感じ取っていて、早く結婚して両親から早く離れることを選んだのかも。 アダルトチルドレンにならないように(デビッドは気づくのが遅いからすっかりアダルトチルドレンだが、今気づいたことでこれから回復できるかも)。
 だがジョセフの逃げっぷりは見事というほかなく・・・ほんとに卑怯のまま、心を入れ替えないのはいっそ清々しいほどだ。
 芸達者なみなさんを舞台風に観られることの至福がここにある。
 デビッド役、顔というか目つきが気になるなぁ・・・と思っていたら、マックス・アイアンズって、ジェレミー・アイアンズの息子? 若かりし日のジョーンは、グレン・クローズの娘? ちょっと雰囲気似てると思ったら〜。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする