2019年01月28日

バハールの涙/LES FILLES DU SOLEIL

 この映画はまったくノーマークだったのですが(映画館でチラシを見なかったような・・・予告編も観てなかった)、上映予定作品一覧からHPで予告編を観て・・・「あぁ、これは観たほうがいい」と感じる。 これは今の世界に続いている話、過ぎた時代の話ではなくて。
 全国で14館しか上映していないそうである・・・神戸国際松竹ありがとう、と思いつつ、遅れても上映館が増えるといいのに。

  バハールの涙P.jpg 母 VS IS 女に殺されると天国へ行けない
   ISに拉致された息子を助け出すため最前線で戦うことを余儀なくされたクルド人女性バハールの生き様を描いた感動作。

 2014年8月3日、イラクのクルド人自治区である北西部のシンジャル山脈沿いの村に、IS(イスラミックステート:イスラム教原理主義過激派集団)が突然襲い掛かり大量虐殺を始めた。 この地域はヤズディ教という独自に発達した宗教があり、それへの弾圧がISの目的だった。 脱出できた人々もいるが、逃げ遅れた人々は殺されるか拉致されるかだけ。 クルド自治区政府軍はISと戦う抵抗部隊組織を送り出し、国連のサポートも取り付ける。 バハール(ゴルシフテ・ファラハニ)をリーダーとする女性だけの戦闘部隊もまた前線に立っていた・・・という話。

  バハールの涙1.jpg 黒い眼帯の人はそれっぽく見えるが、実は非戦闘員のジャーナリスト。
 フランスから来た戦場ジャーナリストのマチルド(エマニュエル・ベルコ)は以前、爆撃に巻き込まれて左目を失明。 同じ職業の夫も戦場で失い、パリで待つ一人娘と時折FaceTimeで会話するだけと様々なものを失い自責の念にかられつつも、この仕事をやめることができないでいる。 女性だからということを本人は意識していないとしても、女性部隊を取材できたのは女性だからかも。
 というわけで、この映画は完全に女性目線である。 なので無意識の男性目線的押しつけにイライラさせられることがないのがよかった(映画の内容は重たいけれども)。 あたし自身は“筋金入りのフェミニスト”ではないのだけれど、フェミニスト的感覚を当然とする世代なのだなぁ、ということを改めて実感する。 それがいいことなのかどうかはよくわからない。
 この映画では2015年11月11日から13日までの3日間が進行中の出来事として描かれ、その合間にマチルドが聞き取ったバハールの過去が都度回想シーンとして挿入される仕組み。 しかし時に回想があまりに長く、そっちに重心が行ってしまいそうになる(“今”のシーンに戻って、「はっ、そうだ、回想シーンだった」と気づかされて、“今”がどういう感じなのかわからなくなりそうに)。

  バハールの涙2.jpg 彼女たちの合言葉は「女 命 自由」。
 なんだかそれだけで泣きそうになる。
 ISのやってることはボスニア紛争やアルジェリア内戦などを思い出させる(違うのはスマホがあるかどうかぐらい)。 信じるものや民族が違うというだけで男を殺し、女には自分たちの子供を産ませて、子供は洗脳して戦士にさせるというのが・・・全然独自性のあるものではなく正当性もないことに彼らは気づいているのかどうか。
 イスラム教では、<女性に殺されたら天国へ行けない>とされているそうである。
 逆の<男性に殺されたら天国へ行けない>がないということは、そもそも男が殺す側である・女に権利はないと言っているようでつらい。 男が始めた戦いに女が立ち上がるとはどういうことか、という意味の重さ!、ですよ。 このへんの感覚はアジア圏ならではかもしれないが。
 更にショックだったのは、ISの自爆戦闘員をクルド人側が「カミカゼ」と言っていたこと・・・そんな形で日本語が広まっているのは不本意だ。

  バハールの涙4.jpg バハール、弁護士として日常にいた頃。
 普通の生活をしていた人が、こんな極限状態に放り込まれ、ひどい目に遭い、どうにか逃走して数か月で銃をとって戦うようになる・・・いったいどんな修羅をくぐらざるを得なかったのか考えるとつらすぎる。 男ども、死ね、と思う。 憎しみは何も生まないことはわかっていても、そう感じてしまう気持ちはあるのだ、誰にも。
 この町での戦闘は落ち着いたとしても、空爆や銃撃で瓦礫と化したここをどうやって再建させるのか。 そして違う町では戦闘はまだ終わっていない。 武力では何も解決しないことを、人間はいつになったら学べるのだろう。
 原題は“LES FILLES DU SOLEIL”=<太陽の女たち>? テーマは女性の強さなのに『バハールの涙』という漠然とした哀しい系のタイトルになってしまうのは、明るい話ではないとするための予防線? もうちょっとなんとかならなかったのかな。
 バハール役の人、なんか見たことあるんだけど誰だっけ、と思っていたら・・・なんと『パターソン』のちょっと天然の妻の人だそうではないか! あっちはファニーフェイスな感じだったのに、こんなに美人だったとは。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする