2018年12月05日

イット・カムズ・アット・ナイト/IT COMES AT NIGHT

 昨今のホラー映画には、「『〇〇』製作陣による」的な惹句がよくつく。 ホラーはかなり細分化されているジャンルなので、その一言があるかないかで大違いだし、観る側としても「あ、そっちの傾向か」と参考になるのも確かなんだけど、その<製作陣>がどこまで正確なのか、という問題もあって・・・ま、所詮は宣伝文句なのだから、100%真に受けるな、という話ですよ。
 とはいえこれは『イット・フォローズ』製作陣ということで・・・「あぁ、現代視点から見る寓話や教訓的なものをホラーの衣にかぶせるタイプ?」となんとなく予測して・・・でも実際は観てみないとわからないから。

  イットカムズアットナイトP.jpg 外には恐怖。中には狂気。
   92分、あなたは<精神を保てるか>
   『イット・フォローズ』製作陣が仕掛ける、極限心理スリラー

 森の奥深くにある一家がひっそりと息をひそめて暮らしている。 だが祖父が感染し、まわりに広まる前に処分しなければならない、と父のポール(ジョエル・エドガートン)は現実を知らせるために17歳の息子トラヴィス(ケルビン・ハリソン・ジュニア)に手伝わせ、祖父を埋葬した。 以来、母のサラ(カルメン・イジョゴ)との三人暮らしだ。 世界が一体どうなっているのか、“それ”の感染がどこまで広まっているのかまったくわからない。
 ある日、家に侵入者があった。 祖父を燃やした煙を見てきたのかもしれない、感染者かもしれない、とかなり警戒して話を聞くと、その男はウィル(クリストファー・アボット)と名乗り、妻と小さな子供とともに廃屋に隠れ住んでいるが、水が足りなくなってきたので廃屋(と思われる家)に侵入して必要なものを手に入れようとした。 この家は人の気配がなかったからだれも住んでいないと思った、と告白。
 ウィルの家には家畜がいるとのことで、それら全部ひっくるめてポールの家に引っ越してきたら、と話はまとまる。
 新しい住人が増え、家の中の空気が変わる。 楽しい生活になるはずだったが、ある出来事から疑心暗鬼が一気に深まり、カタストロフへと突き進んでいく・・・という話。

  イットカムズアットナイト1.jpg <新たな家族>を迎えて、この家で暮らすためのルールが発表される。
 そもそも“それ”は夜に来るらしいのだが、病原体なのかどうかいまひとつわからない。 昼間外出するときにはガスマスク・ゴム手袋推奨だが、それ以外の対策はしていない(髪の毛も、他の肌の部分とか全部空気にさらされてますけど)。 家の窓ガラスが割れた後の修理に板を張っていたけど、結構隙間ある仕上がりで外気入ってきますけど! まぁ、そのあたりは緩和エリアで、住宅としているのはより家の内側・赤く塗ったドアよりも中が、安全エリアということなんだろう。 研究所のような設備は無理だけど、できる限り“それ”の侵入を防ごうとする努力は見えるんだけど、「まず、手を洗え! それから手袋をしろ!」と水の入ったポリタンクを渡されるけれど、タンクをあけるその手は素手なんだよ。 そのポリタンクはのちに洗浄されるのか? 彼らの取る対策は意味があるのかどうかよくわからないんだよな・・・という印象は最後まで拭えず。
 『クワイエット・プレイス』よりも更に、「この状況はどういうことなのか」を語らない。 大事なのはそこではない、ということですね。

  イットカムズアットナイト2.jpg 感染したものはすべて燃やしてから埋める。
 それで感染のモトを断てるのかもいまいち不明なんだが・・・遺体をビニールシート的なものにくるんで燃やしていて、それで拡散防止になるのかなぁ。 そもそもちゃんと燃えないのでは。 そんな細かいことがいちいち気になりましたが。
 問題はそこではない、多分。
 家族3人で暮らし、他者との交流のない<息子>という立場のトラヴィスはこのままでは一生子供のまま。 ウィル一家が登場することによってはじめて違う役割を持つ。 ウィルの妻キムは“母親ではない異性”だし、ウィルの息子アンドリューは“保護すべき存在”。 薪割りの仕方を教えてくれるウィルもまた、兄や師のような存在としてトラヴィスの刺激となる(でもそれはそれで“父親”としてのポールのプライドを刺激することでもあるのだが)。 トラヴィスがカギだ、という見方をするとすべてが不穏に見えてくる。
 恐怖の原因である“それ”は最後まで姿を現さない。 でもそういうことなんだろうな、とわかりはするんだけれど、ホラー映画としてわかりやすい何かを期待すると肩透かしかも。 一部フロイト的解釈は古いな、と思うけど、まぁそこは古典的なことということで。

  イットカムズアットナイト4.jpg 灯りが安心なのはわかるが、そんな強い光源を寝るとき枕元に置くなんて、きちんと寝れないのはそのせいじゃないの、とか思っちゃうよ。
 若さというか、思春期の不安定さのようなものはホラーと相性がよいけれど、ここまでいろいろトラヴィスに背負わせなくてもいいんじゃないの・・・と後半は悲しくなってくる。 父親の威厳は大事かもしれないけど、そもそも異常な状況下なのだからもっと会話をしたほうがよかったのに。 ウィル一家のこともそう、一度家に招いたのならもっと信じるべきだったし、もっと腹を割って話し合うべきだった。
 もしかしてこの映画、アメリカの<家族バンザイ思想>に一石を投じるモノですか?

  イットカムズアットナイト3.jpg そして銃を持っているからそれをたやすく他人に向けられてしまうという事実も。
 普通の状況ではないから、武器を人に向けることも場合によっては人を痛めつけることもいとわない。 気持ちとしてはそうなるだろうけど、やはり銃が身近にあるかどうかって大きな違いだよなぁ、と。
 ジョエル・エドガートンの「教養足りないマッチョ系、愛情深いが表現不足」のキャラは似合いすぎで、その頑ななおやじっぷり、なんとかならんか!、と何度も思うのだけれど、それ故にラストのせつなさや絶望感は深まる。
 あぁ、すっきりしないなぁ! なんかいろいろと、かなしすぎて。
 『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』のほうがカタルシスあったよ!

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする