2018年10月24日

LBJ ケネディの意志を継いだ男/LBJ

 ウディ・ハレルソン、好きだ。 この人もなんだかんだいって役柄で見かけの印象を変える人。
 でももしかしたら長いキャリアの中で初めての実在の人物? 特殊メイクで顔を変え、声と喋り方も変えてリンドン・ジョンソンになり切る! 実話ベースだとみると、この人はほんとにそういう人だったのかなぁと思えてくるから不思議(JFK絡みの映画には必ず出てくるけど、脇役だからあまり内面は掘り下げられない)。 同時代を生きていない人に対してはイメージだけしか伝わらないんだな・・・だから映画やドラマなどで初めて知ることで驚くわけなんだけど(それもどこまで本当に近いのかって話にもなるが)。

  LBJ P.jpg 過去<JFK>には戻れない、けれど未来は変えられる。

 最強の内院総務と呼ばれていた実務に長けた政治家リンドン・B・ジョンソン(ウディ・ハレルソン)は、1960年の大統領予備選に民主党代表として立候補するか悩んでいた。 正確には、自分から言うのではなくまわりに推されて仕方なく、という形をとりたかった。 ライバルのジョン・F・ケネディ(ジェフリー・ドノヴァン)はまだ若く理想家で(南部出身であるジョンソンには公民権運動は絵空事にしか見えなかった)、自分の敵ではないと思ったが、予備選挙でジョンソンはケネディに敗北。 公民権運動の盛り上がりにより、第35代大統領にケネディはなった。
 大統領の申し出により、ジョンソンは副大統領となる。 司法長官のロバート・F・ケネディ(マイケル・スタール=デヴィッド)はジョンソンに苦々しい思いを抱くが、「敵に回すより味方につけたほうがいい男だ」と兄に説得される。 それに副大統領は代々閑職とされていたが、ジョンソンは自分が力を発揮することで後年副大統領の地位は上がると考えていた。 ジョンソンの先輩であるジョージア州上院議員リチャード・ラッセル(リチャード・ジェンキンス)は、「これで南部の言い分がより通るようになる」とよろこぶが、ジョンソンは公民権法成立に動くケネディ兄弟と、ラッセルを代表とする南部連合(公民権法反対派)の間に立って先延ばしを図っていた。
 しかし1963年11月22日、ジョン・F・ケネディは暗殺され、ジョンソンが第36代大統領に就任することに・・・という話。

  LBJ 2.jpg 妻が最大の理解者って、大きいよね。 ちなみに奥様の名前が<レディ・バード>でした!
 剛腕、のようなイメージと違って、ジョンソンは実は繊細で小心な男であった、とこの映画では描く。 勿論その姿を見せるのは妻の前だけであるが。 「ケネディは国民に愛されている、でも俺は愛されてない」、それがジョン・F・ケネディに対するジョンソンの気持ちで、だからこそ自分をジョン・F・ケネディに認めてほしいと思ってた。 でも副大統領なのに大統領と腹を割って話す機会ってなかなかないんですね・・・それがあったらその後の展開もだいぶ違ったような気がしたけど。
 しかしこの時代、更に南部出身とあってはやたらと「男らしさ」を誇示しないといけなかったのかなぁ、という感じ。 たとえ話とかいろいろ下品だし、現在だったらセクハラと言われても仕方のないレベル・・・でもそういうポーズが必要だった時代なのでしょう(当人たちはポーズだとも気づかないまま)。
 映画の前半は大統領予備選の票読み、ジョン・F・ケネディ暗殺後の後半は公民権法成立のために必要な票集め、とアメリカの政治システムそのものを描いているのが面白かった。 主役はそれで、ジョンソンやケネディはそれを引き立てるための材料にすぎないかのような。

  LBJ 3.jpg 似てる? 政治家としてはJFKは絵になる男だっただろうが、ジェフリー・ドノヴァンのほうがハンサムだな、冷静に思ってしまった。
 この人、確か別の映画でボビーを演じていなかったかしら?(『J.エドガー』だった?) あたしの中では『バーン・ノーティス』のマイケルなんだけど映画だといつも違う顔で驚かされる。 この映画ではジョン・F・ケネディについてはほぼ表面しか描いていないので、彼はジョンソンを嫌っていなかった、むしろ好意を持っていたというのがわかる程度。 むしろジャクリーン・ケネディの描かれ方が『ジャッキー』の補完になっているような。

  LBJ 1.jpg リチャード・ジェンキンスが差別主義者の役なのは残念だったが、ラッセル上院議員本人はそう思ってないからな。 この二人のやりとりは台詞も多くてスリリングで面白かった。
 南部の白人たちは何をもって「伝統」と考えているのだろうか。 黒人に権利を認めないことが?
 でも南部の白人がみなそうだというわけではなく、ヤーボロー議員(ビル・プルマン)のように公民権法賛成の人もいるので(はっきり描かれていなかったが北部にも反対の人はいただろう)、相手を激高させずに「そもそもあなたの考え方が人種差別なんですよ」ということを回りくどく伝えて説得していくことが必要、という。
 以前のジョンソンも元々公民権運動反対派だった。 大統領になってケネディの路線を継承する、と決めたのはそうでなければ国民の総意を取れないからかもしれないし、ケネディと一緒にいたことで公民権法の必要性をより強く感じ取ったからかもしれない(ジョンソン家のコックは黒人女性で、ジョンソンは昔から彼女の世話になっていて尊敬しているため、個人的に彼は差別主義者ではなかったと思うが、南部の政治家として必要なポーズをとっていただけかも)。

  LBJ 4.jpg するとボビーは「何故兄の路線を継承する?」と苛立ちを見せる。
 この映画ではジョンソンとロバート・ケネディとの会話のほうがジョンよりも多く描かれている。 明らかにジョンソンを嫌うロバートの姿にはジョンソンならずとも違和感を禁じ得ないが、そこに嫉妬があるとするならばわかる気がする。
 ボビーは兄の補佐をしたかった、なのに副大統領にジョンソンがおさまった(司法長官のほうが権力は大きいけど、後世の記録に残るのは大統領・副大統領コンビ)。 兄の遺志を継ぎたいのに、それをやろうとするのはジョンソン。
 いやいや、結果が大切じゃない? 兄弟だし、感情は理性では割り切れないのかもしれないけれど、そこがボビーの若さだったのかなぁと感じる。

  LBJ 5.jpg そして、大統領就任演説。
 ここがこの映画いちばんの見せ場だったと思うのですが、なんか感動しちゃった!
 心の底からの真実の言葉は人の心を動かせる!、という場に立ったような気持ちになった。
 政治って大変だけど、こういうことが成し遂げられるならやめられなくなるだろうな、とも。
 リンドン・ジョンソンの伝記映画だと考えればベトナム戦争に触れないのはおかしいし(劇中にちょこっと出てくるが、「公民権法成立のほうが先」とあとまわしにされていた)、ウォーレン委員会も出てこないし、片手落ちの感があるだろうけど、そこまでやっちゃったら映画終わらないよね・・・本質もぼやけるし。
 ウディ・ハレルソンにつられましたが、思いのほか面白かったし引き込まれてしまった。 ロブ・ライナーの職人芸を観た。
 大統領になりたかった男が、自分のためではなく他の人たちのために大統領という職を引き受ける、というアメリカが目指す民主主義の美しいカタチを描きたかったのかな、と。 これもある意味、反トランプ映画なのかしら。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする