2018年10月08日

輝ける人生/FINDING YOUR FEET

 ハリウッド大作を続けて観ていると、イギリス映画の地味さ加減が恋しくなる。 いや、イギリス映画じゃなくてもいいんだけどさ。
 <『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』のリチャード・ロンクレイン監督最新作>というコピーにつられてみました。 監督はハリウッドでも仕事をしているけれど、今回のキャスティングはどう見てもイギリスなんだもの。

  輝ける人生P.jpg 泣いて、笑って、恋をして。踊りましょう、幸せのステップで

 ロンドンから少し離れた郊外の屋敷に住むサンドラ(イメルダ・スタウントン)は専業主婦だが、娘も結婚して孫がいて、ついに夫のマイク(ジョン・セッションズ)はナイトの称号を与えられることになり、自分も“レディ”と呼ばれる身になるのだとサンドラは人生の頂点にいる気持ちに。 しかしそのパーティーの場で、マイクと自分の親友の浮気現場を目撃してしまう。 「君を傷つけるつもりはなかった。 わかるだろ?」と謝罪しているのかどうかわからないマイクの言葉を背に家を飛び出したサンドラは、ロンドンの団地で気楽な一人暮らしをしている姉のビフ(セリア・イムリー)のもとに転がり込む。 生活環境が全然違い、会うのも久し振りな姉妹だが、ビフは仕方ないわねとサンドラとの同居を受け入れるのだが・・・という話。

  輝ける人生4.jpg いかにも上流なパーティー。
 しかしそんな人目のある場所で泣き叫んじゃうサンドラ、よほどショックだったのでしょう。 しかしそんな彼女に「場をわきまえろ」と言っちゃうマイク、「お前こそ場をわきまえろ!(自分が主役のパーティーで、隅っこに隠れて愛人とイチャイチャするな!)」と観客全員からつっこまれるであろうこいつは言動が確実にモラ夫で、「いくらお金があってもこんな夫はイヤだよー」と思わせてくれるのではあるが、サンドラ世代にとってはそうとも言い切れないのであろう。 まして子供もいるし、これまでの積み重ねの年月もあるし。
 でもそれはサンドラの都合であって、自由人のビフにそれを理解してもらおうというのは難しい話。 <お上流>が抜けないサンドラと、マイペースすぎるビフに妥協点はあるのかとちょっとざわざわする。 でもそれを救うのはダンス。 日々飲んだくれてくだを巻くをサンドラを見かねてビフが通うダンス教室(まぁそんな真面目な感じじゃなくて、時間の合う人が集まって楽しく踊るのがいちばんの目的、みたいな)へ誘うのだ。

  輝ける人生6.jpg ティモシー・スポール、ポスト:ビル・ナイか!
 ま、いろいろあるんだけど、そこでダンス教室の仲間であるチャーリー(ティモシー・スポール)がいい味を!
 癖のある役が多かったティモシー・スポールが普通にコメディの普通の人っぽい役で出ていることに(そして違和感のないことに)オドロキ! でもすごくいい感じだった〜。 実直だったり皮肉屋だったり、華麗にステップを踏んでは真面目に人生や愛を語る。 いろいろおいそがしいビル・ナイがやりそうな役を今後は彼もするのではないかという気すらした。

  輝ける人生3.jpg ダンスシーンはキレッキレ!
 シニアの方々中心ながら、なかなかみなさんお見事なもので(ダンスの先生は若いから?)。 後半、大きなステージで踊る場面もあるのだけれど、あたしはこのストリートでのダンスシーンのほうが好きだった。
 で、またダンス教室に通っているそれぞれの人生がまた・・・多くは語らなくても、みんな何かを背負っている。 サンドラは自分の悲しみで全然まわりが見えていなかったけれど、若いうちならともかくある程度以上生きていたらみんな何かあるよね、ということがやんわりと伝えられてきて、あたし自身も「なんかすみません」みたいな気持ちに・・・。
 そう、やんわりなのだ。 説明台詞はほとんどないんだけれど、「こういうことなんだろうなぁ」というのがだいたい伝わる。 だから次のシーンの描写や展開がすんなり受け入れられて、むしろ納得する。 過剰に丁寧というわけでもないのに、ちゃんとわかるのがすごい。 よくある流れだからかしら・・・と思っても、類型的なワンパターンだとも感じない。 『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』もそうだったけど、適度にスパイスがきいているからかしら。 あ、役者のみなさんがみんなうまいからか。

  輝ける人生1.jpg イメルダ・スタウントンは『ヴェラ・ドレイク』とはまるで別人だし。
 サンドラの居丈高な感じっぷりに、最初あたしはサンドラのほうが姉だと思ったよ・・・全然妹っぽくないんだもの。 そんなかわいげのない人が次第にチャーミングになっていく(いや、もともとはそういう人だったんだろうけど)過程がとても自然でキュートだ。 それに一役買うチャーリーもすっごくチャーミング。 高齢化時代への、シニア世代の身の処し方として一つの回答と言える内容でした。 まだその域まで行っていないあたしとしては、頭の固い老人になってはいけないという教訓でしたかね。 世間的には「そういう年齢だから」と見られても、本人たちにとってはそういう意識があまりないというのは、どの年代にも言えることだよなぁ。

  輝ける人生5.jpg でもいちばんの見どころは、姉と妹との交流なのです。
 性格が全然違う二人、それぞれがお互いをうらやんでいたり、かなわないと思って嫌ったり。 だけど「一緒に育った」という共通の過去は変えられず、むしろ年齢を重ねたからこそわかりあえる。 マイペースと自由を履き違えがちのビフもサンドラを見て自分を見つめ直したし、サンドラも名誉とか建前を大事にしていたけれどそこには表面上のものしかないと気づいたし。
 そう、いくつになっても人は成長できるのだ!、といういい話でしたよ。
 ほのぼのできて、よかった。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする