2018年08月09日

スケアクロウ/マイクル・コナリー

 引き続き、マイクル・コナリー。
 今度は新聞記者ジャック・マカヴォイくんが主役。
 『真鍮の評決』にもちらっと登場し、さっぱり好印象を与えなかった彼、前回単独主役だった『ザ・ポエット』でもイヤなやつぶりを披露してくれましたが、あれから10年以上たっているけど彼は多少変わったのでしょうか。 いや、多分、変わってないな〜。
 シリアルキラー<ザ・ポエット(詩人)>との対決後、大手のLAタイムズの記者となったジャック・マカヴォイ。 しかし紙媒体不況は新聞社も例外ではなく、ジャックにもリストラ通知が。 若手への引継ぎ期間は2週間。 冤罪事件の匂いを嗅ぎつけたジャックは、これをLAタイムズ最後の仕事にしようと意気込むが、その背後にはシリアルキラー<スケアクロウ>がいた・・・という話。

  スケアクロウ1.jpgスケアクロウ2.jpg コナリー・ミステリー史上、もっとも不気味な殺人犯!、とのこと。

 冒頭からいきなり犯人側の描写なので、「誰が犯人か」が重要な話ではない。
 インターネットを熟知してそこを狩場とする犯人と、ネットの負の可能性について知らなすぎるジャックの攻防戦(というかその点でジャック側に勝ち目はないので、そもそもどこで気づくのかが重要)にハラハラさせられますが、本作の原著は2009年発行なのでスケアクロウ側ができることが2018年現在では「そういうことやろうと思ったら能力のある人にはできる、のは常識」。 だからジャックの気づかなさが非常に間抜けに映ってしまうという・・・。
 本書は『ザ・ポエット』同様、ジャックの一人称で進むのだが(犯人視点のみ三人称)、このジャック・マカヴォイくんのいささか露悪的な自我の発露が自己愛からきていることが透けて見えて・・・まぁ、うぬぼれやさんなのですね。 その感じが、すっごく腹が立つ(ミッキー・ハラーは自分の行為を恥じることを知っているが、ジャック・マカヴォイはどんな言葉を口にしようとも本心から自分が悪いとは思っていない)。 でも自分の署名入りで記事を書く人って少なからず性格にそういう要素があるのかも、そういうところがないと記者ってできない仕事なのかも。
 そしてジャックといえばレイチェル・ウォリングである。 <ボッシュもの>ではイヤな女代表その2(その1はボッシュの元妻)であるレイチェル、本職はFBI捜査官。 でもジャックと組むとイヤな女感が薄まる不思議・・・ジャックのほうがイヤなやつだから? でも解説で真山仁氏が「レイチェルってなんていやな女だ」的なことを書いているので、感じ方には男女差・個人差があるものと思われます。

 スケアクロウとは、当然のことながら案山子。
 インターネットの危険性を描きつつ、コナリーがいちばん描きたかったのは「新聞社を利益優先の産業と捉えることが間違っている」ということ。 ただの情報発信ならそこらへんのブロガーでもできる、家から一歩も出ずにニュースまとめサイトを運営できる、でもそこに書いてあることが真実かどうか、誰が裏を取り、責任を取る? それが記者の、新聞社の社会的役割なのだ、という気概。 コナリー自身が新聞記者出身だから、ということも大きいのだろう。
 そのため、犯人描写がいささか類型的という気もするが・・・「シリアルキラーの内面を理解する必要はない」という突き放し方は面白い。
 そう、次々といろんなことが起こるのであっという間に読み終わってしまうのだけれど・・・やっぱりジャック・マカヴォイ、好きになれないな〜。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする