2018年07月22日

エヴァ/EVA

 結局、原作を読むより先に映画を観ることになってしまった。 多分かなり翻案されているようだから、いいか。
 ともかくイザベル・ユペール観たさですよ。 あんまり『ELLE』と似たような役はやらなくても・・・と思ってましたが、ちょっと別方向でした。

  エヴァP.jpg すべての男たちが、この女に狂わされる――。

 自分の人生に希望を持てないベルトラン(ギャスパー・ウリエル)は、ふとしたきっかけから戯曲を盗作し、新進脚本家として脚光を浴びる。 美しく賢い恋人カロリーヌ(ジュリア・ロイ)もできた。 その舞台『パスワード』の上演評判も上々で地方ツアーに回るほどに。 だがベルトランは出資者のレジス(リシャール・ベリ)から次の作品の執筆をせかされて焦っていた。 缶詰めになって執筆するとカロリーヌの家の別荘を借りることにしたベルトランだが、吹雪の中夜遅くに別荘に到着してみるとガラスが割られ、「道に迷って困っていたから利用させてもらった、きちんと弁償するよ」という中年男がいて激高する。 男を追い出すがもう一人女がいて、入浴中。 それがエヴァ(イザベル・ユペール)だった。 もちろん彼女も追い出すのだが、エヴァの面影が頭を離れないベルトランは彼女との再会を試み、彼女との会話を次の作品に利用しようとするが・・・という話。

  エヴァ1.jpg かつらとメイクで“娼婦エヴァ”に変身。
 原因はエヴァにある、みたいなポスターイメージですが、実はもともとベルトランは壊れている。 今は「才能ある若き脚本家」と人には思われているが実際は他の人が書いたものの一枚目を付け替えただけだし(またそのくだりがクールで不穏・・・)、今後も脚本家を名乗る気ならそれなりの努力というか付け焼き刃でも知識をつけようという気配もなく、なのにその場しのぎでお金をもらうために次作を書くと約束してしまった気配。 流されるままに生きてきたのか、それともすべてをあきらめているのか。 もしかしたらそんな彼が初めて執着したのがエヴァなのかな、という気がした。
 かつては男娼だったらしい過去もにおわされるベルトランを、ちょっと美貌が崩れかけた感じでギャスパー・ウリエルがやっているのがはまり役。 それでも十分美しいんだけどさ。

  エヴァ2.jpg 何故この二人が付き合うようになったのかの説明はない。
 カロリーヌは戯曲『パスワード』に使われている技法や暗喩を読み解く力はあるものの、目の前の恋人がニセモノ(もしくはからっぽ)であることに気づかない。 恋は盲目だからなのか、ベルトランに特別な魅力を感じているからなのか・・・よくわからない。 インテリ女性にありがちの、「自分が選んだ男が間違いだったとは思いたくない」症候群なのかなぁ。
 ただカロリーヌも、男だったら結婚を考えている相手としてふさわしいイメージ(美人で良妻賢母型・親が資産家・最終的には男の言うとおりに従う、など)を背負わされた類型的なキャラクターから抜け出していない気はするので、彼女自身の魅力が伝わってこないもどかしさはあったかな。

  エヴァ4.jpg が、この映画でいちばん魅力的でなければいけないのは“エヴァ”なので。
 原作のタイトルは『悪女イヴ』ではあるけれど・・・エヴァが悪女ではないことは早々に明かされる。 彼女が娼婦として働く理由ははっきりしていて、そこだけとったら純愛チックですらある。 でもそれを美しいものとは描かないし、エヴァのぞんざいな口調や粗暴な態度から「もしかして彼女はあまり賢くないのか?」と思わされたり(本能的な判断には優れているが)。
 どうやら、美しいものにはそれにふさわしい知性を持ってほしいとあたしは感じているようだ。
 エヴァもベルトランも賢さを使う方向性が異なっている。 なんだかとても残念だ。

  エヴァ3.jpg 自分の愚かさを知っているレジスが、もしかしたらいちばん賢い人だったのかも。
 いやいや、それにしてもイザベル・ユペール、特にメイクもせず普通にしているほうがキレイなんですけど! だからこそあえて厚化粧で安っぽいかつらをかぶることで“エヴァ”になりきっていたのか・・・。 とはいえ彼女自身には謎はなく、ただ自分の思うとおりに生きているだけ。 むしろ壊れているベルトランが、もっとどんどん自分を破壊したい願望にとりつかれ、そのためにエヴァを利用したと考えるほうが合点がいくのだが・・・いろいろ語られていない部分が多すぎて、「あぁ、いかにもフランス映画だなぁ」という感じ。
 ストーリー的には消化不良なれども、目の保養にはなりました。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする