2018年07月16日

告白小説、その結末/D'APRES UNE HISTOIRE VRAIE(BASED ON A TRUE STORY)

 ロマン・ポランスキー新作。 予告を見た感じでは『ゴーストライター』みたいに文章や文字に苦しめられ、いつしか現実と文章が紡ぐ内容が区別がつかなくなっていく話かなぁ、と。 しかも今回はそれを女同士で。 <戦慄のミステリー>とか書かれちゃったらどうしてもつられてしまうのですよ、あたしは! それに、なんだかんだいって『ゴーストライター』、楽しめたし。

  告白小説、その結末P.jpg それは、作者さえも知らなかった――

 人気作家であるデルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)だが、今回上梓した本は母親との日々、それも精神を病んで自殺してしまった母親との関係を“事実をもとにして”書いたものであった。 その本はベストセラーとなり、デルフィーヌはサイン会や朗読会、出版関係の人たちとのパーティーなどに招かれ、疲れ切っていた。 フィクションの形をとろうとも、より自分の身を削って書いた作品だったから。 だからまだ次回作にまで手が回らない。 むしろ、これを書いてしまってあと自分に何が書けるのかという不安におびえているほどだった。
 そんなとき、あるサイン会でエル(エヴァ・グリーン)と名乗る美女と出会う。 フランス語でELLEは女性の三人称単数の代名詞だが、彼女は「エカテリーナの愛称なの」と言う。 別のパーティーでエルと再会したデルフィーヌは、聞き上手な彼女に今まで誰にも話していなかったあれ以来の疲労について話す。 エルは「わかるわ」とデルフィーヌが必要とする言葉をかけてくれ、彼女といるととても楽になるとデルフィーヌは感じ始めて・・・という話。
 なんとエルの職業はゴーストライターなのであった。

  告白小説、その結末2.jpg デルフィーヌはすべて肯定された人生を送っている。
 パートナーは文芸評論家で、世界中の作家にインタビューするのも仕事なので二人はあえて同居せず、お互いの仕事のペースを優先して生活するルール。 勿論時間が合えば二人で田舎の別荘でゆったり時間を過ごすことも。 彼はデルフィーヌのことをとても大切に考え気遣っており、放心状態に近い彼女の精神状態にも気づいていてなんとかしたいと思っているのだ。 フランス人だから? 最高の相手じゃないか!
 なのにデルフィーヌはそれを当たり前みたいに捉えていて。 自分が情緒不安定なことで手一杯なのかもしれないけど、だったら自分でそれを認めて休養を取るとかセラピー受けるとかすればいいのに、そのままってところがイラっとする。
 そう、デルフィーヌは結構迂闊な人なのである。
 自分でやるのが面倒、となると頼める人に頼んでしまう。 その歳で、全然自立していない。 だからあれ以来連絡を取るようになったエルに、すっかり頼りきりに。

  告白小説、その結末3.jpg エルはいつの間にかデルフィーヌの“親友”の位置に。
 そんなすぐ知り合った相手を仕事場に入れるか? 「フェイスブックが炎上してるわよ」と言われて「そんなものやってないわ。 よくわからないから見て」とPCのログインパスワード教える? そういう危機感のない、だからといって天真爛漫系でもないただ怠惰なだけに見えるデルフィーヌに観客のイライラ度はMAXに。 エルに何かされても自業自得だよ、とまったく同情されないキャラクターに。
 まぁ、そうなってくると「エルがきっと何かする」という流れになるのは必然。

  告白小説、その結末1.jpg エル、その表情は悪魔だ。
 かわいさ余って憎さ百倍、みたいなことなんですかね。 「こんなに世話してあげているのに、感謝とかねぎらいが足りないわ!」とばかりにだんだん高圧的になっていくエル。 怒りの衝動が過ぎればまた元には戻るんだけど・・・この感情のすれ違い具合はなんですか、新婚生活みたいなものですか? よそゆきの顔で付き合ってきた二人がいざ素顔でやっていこうとすると「前はこうじゃなかったのに」と期待と実際がずれていく、みたいな感じ?
 雨降って地固まる、となっていけばいいんですけどね・・・この二人には不穏な何かを取り払うことができませんよ。 デルフィーヌも早く手を切ればいいのに、何も行動を起こさない。

  告白小説、その結末4.jpg 依存、という言葉がよぎる頃にはもう遅い。
 なんとかまとめたデルフィーヌの次回作のプロットにもエルは厳しくダメ出し。 すべての面においてエルに主導権を握られるデルフィーヌだが、ふとした会話の中でエルの過去に大変ドラマティックな出来事があることを知り、それをネタに次の小説を書こうと考える。 物書きの業って恐ろしいな、とつくづく。
 でも結構早い段階からネタ割れしてたんですが・・・それでも最後までハラハラできました。 結論もはっきり出さず、「結局どっちなの!」とやきもきさせる終わり方で。 いや、わかっているのです、どういうことなのか。 でも、「結局どうなの!」と言いたくなっちゃう感じなのです。
 それがポランスキー・マジック?

  告白小説、その結末オリジナルドリンク.jpg 映画館のコンセッションでオリジナルのドリンクが売ってました。
 普通のアイスティーにストロベリーシロップワンプッシュ、さらに上から無糖炭酸水。 「よくかき混ぜてください」と言われます。
 ティーソーダ、好きなんです。 しかも暗がりで飲んでいるせいか、氷のせいか、ストロベリーの味がときどきローズっぽく感じたり。
 確かにミステリアスでした。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする