2018年07月12日

罪人のカルマ/カリン・スローター

 前作『血のペナルティ』のイメージがあまりよくなかったのでどうしようかと思ったけれど、ウィルのほうにまた焦点が戻ってきたみたいなのでいいかなぁ、と。 一冊でまとまってくれているのはうれしいが、600ページ超えの後味よろしくない話を読み込むには覚悟がいる。 でもシリーズだから、一からはじまる物語よりは抵抗感が低いのは確か。
 これは<GBI特別捜査官ウィル・トレント>シリーズ6作目にあたる。 最近半年に一作ぐらいのペースで翻訳されるのは、やっぱりそれなりに売れているということなのかしら(翻訳の方は一作おきですが)。 でもサラが主役の<グラント郡シリーズ>の翻訳までは手が回らないのか、それとも版権の問題なのか、サラの過去の話だからもういいだろうなのか。 翻訳物はそういうのがあるから困るよ。

  罪人のカルマ カリン・スローター.jpg またもやばめな表紙・・・。

 現在、ジョージア工科大学の女子学生が行方不明になる事件が発生。 しかし上司のアマンダの命令でウィルは事件から外され、空港勤務を命じられている。
 1975年、ジョージア州アトランタ警察は刑事に女性を起用し始めた。 アマンダ・ワグナーとイヴリン・ミッチェルは新米女性刑事として、男社会の警察組織の中で懸命にもがいていた。 二人は誰も気に留めない売春婦の連続行方不明に事件性を感じ、ひそかに捜査する。
 その二つの時間軸が交互に並び、いつしかウィルの出生の秘密が明らかに・・・という話。
 若き日のアマンダとイヴリン(今のウィルのパートナー、フェイスの母親)が非常に魅力的に描かれており、女性蔑視の社会の中でがんばるだけでなくそういう偏見(女にはこれはできない、的な)が自分の中にもあることに気づいて、まわりだけでなく自分とも戦うみたいなところ、すごくいい。 その世代の人たちの努力があればこそ、のちの世代は楽になっているわけで(男女差別がまったくなくなったとは言えないが、その時代に比べればぐっと減っているのは確か)。 またアメリカ南部は黒人差別の歴史が根強いから、女性に対するものもひどかったであろうと想像がつく。
 彼女たちの努力がひそかに実を結び、味方が増えていく過程はカタルシスすら感じさせる。 現在パートの話の印象が薄くなってしまうほどに。 だからこそ、『血のペナルティ』で語られた内容が非常に残念なのだ。 いろいろあっても希望があるような若き二人(だけでなく、警察に勤める女性たち)のその後があんなふうになっていったなんて・・・それだけ、男社会を生き抜くのは大きすぎる負担だったのだろうか。 でも同期の絆がとても強くなっているのは納得だが。 というか、この物語を補完するための前作だったのだろうか、という気がしないでもなく。
 全体の3分の2を越えたあたりでやっと現在パートの意味合いがわかってきますが・・・そこまで気持ちがあるのならウィルがかわいそう過ぎないですか!、と思ってしまうのは甘いのでしょうか。 この40年弱でアマンダに何があったのか・・・ひねくれすぎというか、感情を隠すことが出世には必要だったのかもしれないが、隠すなら隠すで歪んだ形で表現しないでくださいよ。
 そんなわけですっかり本作の主役はアマンダになっており、ウィルもサラもフェイスも脇役。 そんな中、ぶちかますアンジーの破壊力ときたら。 名前のせいもあるんだけど、どうもアンジーにはアンジェリーナ・ジョリーを連想してしまうよ。
 あぁ、こりゃまた続きが出たら読んじゃうよ・・・。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする