2018年06月13日

ビューティフル・デイ/YOU WERE NEVER REALLY HERE

 結局、原作を読む前に映画を観た。 本は薄かったんで読めそうだったんだけど、あえて「映像からのインパクト」を大事にしてみることに(すでに予告編、観てるし)。 そしてホアキン・フェニックスの変貌ぶり・怪演ぶりを見るにつけ、「あぁ、リバーが生きていたらどんな俳優になっていたんだろう」ってつい思ってしまうのです、ごめんなさい。

  ビューティフル・デイP.jpg 復讐を、手にしたふたり
   行方不明の少女ニーナを探してほしいという依頼が男の元に舞い込む。
   しかしそれは、いつもと何かが違っていた――

 便利屋のジョー(ホアキン・フェニックス)の主な仕事は、行方不明になった少女たちを見つけ出して依頼主に送り届けること。 それは家出した少女だったり、そのあと厄介なことに巻き込まれて帰れなくなった子もいるため、仕事で必要とあれば殺しもする。 そして彼は元軍人で、かつての任務地におけるトラウマにも苦しめられている。 そんなある日、政治家の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)を見つけてほしいという依頼がやってくる。 いつものような仕事だと思ったジョーはニーナを見つけ出すが、その背後にいたのはいつも相手にするような連中とはちょっと違っていて・・・という話。
 『レオン』的な感じなのかな、と思ったけど、海外版のポスターに「21世紀の『タクシー・ドライバー』」とコピーがついているように、ジョーの苦悩・幻影・妄想が全編を彩る(だからホアキン、ほぼ出ずっぱり)内省的要素の強い映画であった。

  ビューティフル・デイ3.jpg ジョーはほぼ無表情のように見えるが、ひげもじゃに隠れがちな微表情と目が多くを物語る。
 危険なお仕事なのに、ジョーの得意な武器はハンマーで(しかも小型の、かなづちという言葉が似合うタイプ)銃は持っていない。 敵が持っていたら場合によっては奪い取って使うけど。 音楽はほとんどビートで、大事なときにだけメインテーマがかかる以外かなり静か。 だからこそノイジー系のサウンドがジョーの内面にリンクするようでドキドキする。 かなづちが相手の骨を破壊する音もしっかり聞こえる。 音楽:ジョニー・グリーンウッドだったよ! PTA以外の映画もやるのね! 『ファントム・スレッド』の正統派クラシカルと違って、こっちは「レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド」がやっていると納得のでき。 ラジオから流れてくるオールディーズのキャッチ―な甘さが、ノイズをより引き立てる。

  ビューティフル・デイ4.jpg お互い空虚さをかかえた者同士の出会いに、多くの言葉はいらない。
 ジョー視点で描かれるのでニーナについての描写は最小限だが・・・彼女の「何も映していない目」だけでもう十分すぎるほど説得力が。
 スタイリッシュな映像美、といえば聞こえはいいけれど、トラウマが今も常にジョーを苛んでいることがぐいぐい迫ってくる感じは、観る側にもじわじわとその傷口をリアルに想像させる。 だからジョーのすることに、ほとんど共感できてしまう哀しみ。 ぱっと見た目鈍重そうに見えるジョーの姿も、世界の何かから自分を守るための鎧のように見えてくる。
 原題の“YOU WERE NEVER REALLY HERE”(君は決してここにはいなかった・ここにいてはいけなかった・いなければよかったのに)の持つ意味の重さがつらい(邦題『ビューティフル・デイ』には希望があるけど)。

  ビューティフル・デイ1.jpg そう、それでもほのかな希望はあると信じたい。
 時折、胸を突かれるような美しいシーンがある。
 監督・脚本はリン・ラムジー、『少年は残酷な弓を射る』の人だそうで・・・あの映画も独特だったが更にこの映画は洗練された印象。 なるほど、カンヌが好きそうな感じでもあるなぁ、と納得できる。 でも賞関係なく、あたしこの映画結構好きかも・・・繰り返し観たいとは思わないけど。 エンドロールではホアキン、いい俳優だなぁ、と満足。 リバーのことは思い出さなかった。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする