おじさん俳優好きとしては、この三人の取り合わせ、なかなか魅力的。 監督がリチャード・リンクレイターだというのもそれを後押し。 話には意外性なさそうではあるんだけど、この人たちのやり取りが見たい!
2003年、バージニア州ノーフォーク。 バーを営むサル(ブライアン・クランストン)のもとに、ドク(スティーヴ・カレル)と名乗る男がいきなり現れる。 二人はともに海軍に所属し、ベトナム戦争を共に戦った仲だが、30年前に別れたきりだった。 ドクはもう一人の仲間ミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)にも会いたいと言い、三人は再会。 そこでドクは、一人息子がイラク戦争で戦死したという知らせを受け取ったので、息子を一緒に迎えに行って故郷のポーツマスに連れて帰るのを手伝ってくれないか、と突然の訪問の理由を打ち明ける。 実はアルコール依存症の気配のあるサルと、過去から決別して神父として神とともに生きる道を選んだミュラーは困惑するが・・・という話。
ブライアン・クランストンはカメレオン系の俳優さんであるが、サルはちょい悪オヤジ風でなんかちょっとかっこいい! 『ブレイキング・バッド』とも『GODZILLA』とも『トランボ』とも全然違うのがすごい。 よく見れば顔は同じ人なんだけど(当たり前)、雰囲気とかが全然違うので同じ人とは思えないんだよな〜。 俳優としては当たり前なのかもしれないけれど、ここまで違う人はなかなかいないと思う。
雰囲気違うといえばスティーヴ・カレルもそうなんだけど、すごくいかれてる系がすごく普通そうかどっちかにわけられる気がする。
ローレンス・フィッシュバーンは見た目のインパクトが強いせいか、人に説明するときに「『マトリックス』のモーフィアスの人」って言うと通じやすい(海外ドラマ派には『CSI』の“教授”ね)。
そんな三人が<同年代>として登場すると、「(年齢的に)そんなもんなんですかね〜」と納得してしまう感じあり。 それもまた演技力か。
30年間、それぞれ別の道を歩いてきた三人の邂逅は、最初はぎこちないものだったが次第にかつての空気感が戻ってくる雰囲気がすごくいい。 特にミューラーは悔い改めて過去を忘れたがっているから二人に心を開きたくない感がありありだったけど、それも途中から我慢してるのかと見えてくるから面白い。 だから最初からお喋り全開のサルが主役みたいなんだよなぁ。 でも喋れば喋るほど、はしゃげばはしゃぐほど、奥に隠そうとしている彼の孤独が浮き上がる。 妻もなくし、息子もなくしたというわかりやすい悲劇を背負ったドクはあらためてキャラ付けする必要がないし。 そんな重い題材を背負っているからこそ、映画はコメディタッチのロードムービーとして進む。
男三人の下らないバカ話の中に潜む真実。 バカ話がそれだけで終わらない余韻を残すのは、それだけ彼らが年齢を重ねてきていろんなものを見てきたから、というのがわかる。 年をとるのがかっこいい、というのはこういうことなのね。
そして、ドクの息子が死んだ原因であるイラク戦争について語りながら、実際に語れるのはベトナム戦争のこと。 911をはさんで世界は一変したように思われるけど、アメリカはまだベトナム戦争を整理できていないことを知る。 この映画の設定が2003年である意味もきっとそこにある。
昔話はしても回想シーンは出てこない、これって重要なポイントかも。
そして、やっぱりこういう時に流れるのはボブ・ディランなんだよなぁ。 おじさん俳優かっこいい!