2018年05月29日

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法/THE FLORIDA PROJECT

 まずはウィレム・デフォー目当てで(たとえアカデミー賞助演男優賞ノミネートでなくてもそこは観ますよ)。 ギャングでも殺し屋でもやばい業界の人でもないウィレム・デフォー、貴重です。
 でも、そういう“見覚えのある人”が出ていなかったら、この映画ってほとんどドキュメンタリーじゃない?、という。

  フロリダ・プロジェクトP.jpg 観るもの全てが魔法にかかる――
   二人を待ち受けるのは、ハッピーエンドさえ凌ぐ誰も観たことのないマジカルエンド。

 フロリダのディズニー・ワールドの近くにあるモーテル<マジック・キャッスル>は、本来ディズニーワールドにやってきたお客さんがリーズナブルに泊まる場所として建てられた・・・はずなのだが、現在の客のほとんどは家を失って住むところがない人々ばかり(サブプライムの影響がまだ続いているのか)。 その中の一人、6歳のムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)は母親のヘイリー(ブリア・ヴィネイト)と二人で一室に泊まり続けていて、似たような境遇の子供たちと毎日いたずらいっぱいの楽しい時間を過ごしている。 モーテルの管理人ボビー(ウィレム・デフォー)は時々厳しいことも言うがそれは子供たちを危険などから守りたいから。
 ヘイリーは仕事がなく、偽物の香水を安く仕入れてディズニーワールドのお客に本物として売りつけて日銭を稼ぐものの、ほとんどがモーテルの支払いに消えてしまう。 ムーニーにとっては楽しい日々だけれど、それがとてもあやうい綱渡りの上に成り立っていると気づかない・・・という話。

  フロリダ・プロジェクト3.jpg 正直、序盤の子供たちの言葉遣いや態度の悪さには引く。
 でも仕方ないのだ、だってそういうことは教わってないんだもん。 大人が騒いだり怒ったりするのが見てて楽しい、みたいなお年頃だし。 むしろ、大人が働いている間に子供たちだけでその時間を楽しむ(ある意味放置子なんだけど、その自覚がない)という自立性みたいなものがすごいな!、とだんだん思えてしまう(お金はないけど、子供たちはみなしっかり親に愛されている)。 この映画自体が子供目線の展開中心ということもあるけれど、ディズニーワールド周辺という立地の関係上、アイスクリーム屋さんの建物や川べりのベンチなどすべてが非日常仕様。 毎日のちょっとした散歩もムーニーたちにとってはすべて冒険! そりゃ楽しいよね!

  フロリダ・プロジェクト2.jpg しかしそんな“楽園”にも落とし穴がないわけではなく・・・そこに目を光らせ、悲劇を未然に防ぐのが番人たるボビーの役目。
 子供たちや困っている店子(?)はたくさんいるから誰かを特別扱いできない(しかもボビーはオーナーではなく雇われの身)、でもできる限りの譲歩はする、家賃が滞っていれば催促はするがそれぞれのライフスタイルにはできる限り干渉しない、という強面だけどほんとうに心優しいおじさんを自然体で体現するウィレム・デフォー超かっこいい。
 ボビーには子供たちの子供時代がちょっとしたことで終わりを迎えてしまうことをよくわかっていて、できる限りそれを長引かせたいと思ってる。 子供たちはよくわからないけど、そういうボビーの気持ちは通じるからなんだかんだ言ってなつく。 その空気感はすごくよかった。

  フロリダ・プロジェクト1.jpg しかし、パステルカラーの世界に忍び寄る貧困は押さえこめない。
 これもまた『パティ・ケイク$』同様、貧困層の人たちの物語なのである。 子供たちの「ちょっとしたいたずら」が大事になったら子供の養育権を剥奪されるかもしれない、と親同士の関係が険悪になったり(子供たちはなんで一緒に遊んじゃいけないのかよくわからないので時間をおいてこっそり会ったり)、ヘイリーはちゃんと働いたらいいんじゃない?、と一瞬思っても、ちゃんと働いているママ友もまた同じモーテル暮らしだったりと、その底なしの貧困さ加減には解決策が見つからない。
 ムーニーたちの「毎日ハッピー」な生き方には学ぶところが多いんだけど、生活の基礎が安定していないのはね・・・そしてそれは子供自身が選んだものではないからこそ、大人たちだって望んだ道ではないとわかっているからこそ、大人たちの奮闘が悲しくもむなしい。
 <ハッピーエンドさえ凌ぐ誰も観たことのないマジカルエンド>は、「あぁ、もうそうするしかないよねぇ」という哀しさと、子供たちの行動力だけが救いである、というように感じられて・・・ちょっと泣きそうになってしまった。
 子供は親を選べない。 でも、親の愛情を感じられるだけましなのか。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする