2018年05月25日

パティ・ケイク$/PATTI CAKE$

 ラップはよくわからない。 ブラックミュージック(特にR&Bやソウル、今は言わないかもしれないけどブラックコンテンポラリーなんかも)は好きなんですけど、やはりメロディーがあるかどうかの違いで、リズムだけ・もしくはリズム強化のラップはそんなに。 それでも『8miles』で、黒人貧困層から這い上がるための手段としてのラップ(ライム)というものを知った。 この映画もただのラップ映画だと思っていたら観なかったかもしれないけれど、そういう生活の苦悩が描かれていると知ったから。
 ちなみにタイトルは、『パティ・ケイクス』と読みます。

  パティケイクスP.jpg あんたがスターだって知ってたよ

 舞台はニュージャージー。 23歳のパトリシア(ダニエル・マクドナルド)はバーテンダーとして働きながら、神聖視するラッパーO-Zに認められたいと暇さえあればノートにリリックを書きつけている。 薬局で働くジェリ(シッダルト・ダナンジェイ)とともにラップを練習し、“パティ・ケイク$”aka“キラーP”としてデビューすることを願っている。
 しかし彼女には酒浸りの母バーブ(ブリジット・エバレット)と介護を必要とする祖母ナナ(キャシー・モリアーティ)がいて、祖母の薬代にも事欠く毎日。 せっかく稼いだお金も母に使われてしまうことも。 子供の頃から「ダンボ」というあだ名でからかわれ、鬱屈していたパトリシアはある日、駐車場でのフリースタイルラップバトルに飛び入り参加して見事に相手を言い負かす。 そこで無口な青年バスタード(マムドゥ・アチー)と知り合い、みんなでラップグループを組むことに・・・という話。

  パティ・ケイクス1.jpg ジェリがインド系、ということがやけにリアル。
 もはや貧困層には人種関係なしなのだ。 ラップバトルの際にパトリシアへのヤジが「白い『プレシャス』かよ!」だったり、ネタに映画などが引き合いにされるのが面白かった。 貧困層だからといって映画を観れないわけではないのだ。 それはスマホの普及と関係があるかもしれないし(『スーツ/SUITS』では大金持ちの弁護士と貧乏ポーターが心通わせる手段が映画の名台詞だったりしたし)、日本より娯楽としての敷居が低いからかもしれない。 もしくは、ラップをやるからには最低限の知識や言葉の表現が必要で、それを映画のセリフなどから学んでいるのかも、とかいろんなことを考えてしまった。 ちなみに“aka”って表現、時々見るけどなんなんだろう、と思ってましたが、“またの名は・別名”って意味だったのねと知る。

  パティ・ケイクス4.jpg とにかくおばあちゃん(みんな「ナナ」って呼ぶけど)がすごい。
 登場した瞬間から佇まいがド迫力で、人生いろいろあったんです感が。 だからこそパトリシアの夢を理解するし、応援もする。 ほんとかっこいい! そのかわり母親が・・・(元ロック歌手で、メジャーデビュー寸前に妊娠発覚・・・とかでいろいろこじらせて今はアルコール依存症)。 貧困問題は常に家族の問題と表裏一体。 どこでその連鎖を断ち切るか、それともすべて引き受けるか、どちらかしか方法はないのか。
 その覚悟はできてない(もしくは発想もない)パトリシアにとって、詩を書くのは唯一の現実逃避であり自己表現。
 あぁ、そうか、ラップってお金がなくてもできる音楽なんだ(ある程度のレベル以上のものをつくろうとしたら機材とか必要になってくるけど)。
 ライム(ラップの歌詞の意?)には下品な言い回しも多いけど、韻を踏むことが重要視されスピードと言葉数も必要。 練習では普通なのに人前では緊張して言えなくなっちゃう、でも一度吹っ切ったらどんどん行ける、みたいな感じがリアルでよかった。 ラップ・ヒップホップ初心者でも楽しめるメジャーな曲調なのもよし。
 こういうストーリー展開って素材は違えど王道だよね・・・しみじみ。

  パティ・ケイクス5.jpg インディーズファーストアルバムのジャケット。 グループ名はメンバーの頭文字をとってPJNB。 ナナもメンバーだ(でも顔出し不可)。
 パーティーのケータリングのアルバイトを始めたパトリシア、音楽関係の人に会ったらCDを渡す、という地道な努力を続けつつ、実はバーテンダーとしても有能であることがわかってくる。 場末の店で働いている感じではあれど、カクテルの種類や作り方をきちんと勉強していたのだ。 そういう「見えない努力」ができる人だとわかることで、パトリシアへの好感度はMAX!
 だからオーディションに向かう彼女らを心から応援したくなっている。 まさに青春映画です!
 でも結局家族の物語に帰結してしまうところは・・・個人的にはちょっとなぁ、なんですが、まぁそのほうが大多数には受けるよね。
 普段から弾丸トークのジェリに、無口すぎるバスタードという仲間との関係性をもう少し見たかったけれど、それは「これから先の話」ってことで。
 ラップ映画と思わせつつ、エンドロールで流れるのはブルース・スプリングスティーン。 まぁお母さんはロック歌手だったということもあり、「音楽のジャンルにも断絶はなし」と感じさせてくれるエンディングでした。

posted by かしこん at 23:59| 兵庫 | Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする