2018年04月24日

その雪と血を/ジョー・ネスボ

 思ったより超薄かった! 図書館の本待ちのタイミングでちょっと読み始めたら、すぐに読み終わってしまった。 でもそんな軽い世界ではなかったんだけど。
 主人公のオーラヴ・ヨハンセンは殺し屋。 今回ボスから依頼された仕事は、ボスの妻コリナを始末すること。 いつも通りの仕事として片づけるつもりだったオーラブだが、コリナの姿を一目見た途端に恋に落ちてしまう。 ボスの命令に背けば消されてしまう、しかし愛する女を殺すことはできない。 オーラブが下した決断によって、結果的に血で血を洗う様な出来事に・・・という話。
 オーラブの、武骨で無知を自任する繊細さ。 『レオン』を更に不器用にして衝動的になった感じというか・・・登場から、もう、「こんな人、長生きできないですよ」という看板を背負った佇まいで、もう最初の数ページでひきこまれた。 しかもオーラブにはコリナと出会う前にちょっとしたことで手助けした聾唖の女性・マリアという存在もいるのである。
 ボスのライバル《漁師》やその手下たちなど、登場人物が少ないのにもびっくりだ。

  その雪と血を.jpg パルプノワール、というのでしょうか。
 60年代ぐらいの雰囲気を漂わせるけど、実際の設定は1977年12月。
 ジム・トンプソンっぽいから60年代を連想したのかしら。 そもそもあたしの時代認識が間違っているのかも。
 一人称だからかもしれないけれど、<ハリー・ホーレ>シリーズと全然雰囲気が違う。 同じ作者が書いたのか、というくらい文体からして違っていて、これは時代とかのせいでもなくて作者が全部意図したもの。 つまり、ジョー・ネスボは引き出しをいっぱい持っている作家だということ。 この文体、好きだわ。
 雪といえばあたしのイメージは佐々木丸美なのだが(あたし自身がイメージを形成する時期に佐々木丸美を読んでしまったせいなのだけれど)、北欧ミステリには寒さの描写は数あれど、雪そのものの描写は意外にあっさりしているというか、そんなに印象に残ってなかったりする(そこにあるのが当たり前だからかもしれない)。 でもこれは、その雪に血が滴って王のローブのようになる、という一言で雪の白さと血液を包括してしまう結晶の冷たさをあらわしてしまっていて、ちょっとぞくぞくする。
 物語的には非常にありきたりなんですが(アメリカのギャング構想的な銃撃戦がノルウェーで起こる、と考えれば新鮮だけど)、終わり方が不意を突かれるほど美しくて、うっかり涙がこぼれそうになってしまった。
 そこをわざわざクリスマスと絡めるなんて・・・クリスチャン?
 それとも、イメージとしてのクリスマスを利用することで世界中の人に読ませようという戦略?
 ジョー・ネスボはイノセントな策略家だ。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする