2018年03月16日

ザ・シークレット・マン/MARK FELT:THE MAN WHO BROUGHT DOWN THE WHITE HOUSE

 ウォーターゲート事件をディープスロート側から描いたものか、という印象。
 アクションしてないリーアム・ニーソン久し振りじゃない?!、ということで。 それにしてもウォーターゲート事件を扱う映画やドラマが途切れないのは、アメリカにとってそれだけ大きな傷だ、ということなのだろうか。 しかしそれだけに「アメリカ人にとって常識」であるためか、説明が少なすぎ。 事前に知識を持っていないとついていけないこと必至。
 フーバー長官の死亡の報が入ってからのFBI内のバタバタぶりは『J・エドガー』の最後のあたりとリンクしていて、「あの映画の続きがこれか!」という驚きがあった。 この人がミス・ギャンディ?!、とか。
 現代史でもやっぱり、あたしは世界史弱いです。

  ザ・シークレット・マンP.jpg 権力には屈しない 相手が大統領であっても――
   アメリカ史上最大の政治スキャンダル ウォーターゲート事件
   大統領を辞任に追い込んだ内部告発者 FBI副長官が30年目に明かした衝撃の実話

 フーバー長官の死後、孤高の存在であったFBIも司法省やホワイトハウスからの干渉が入るようになった。 すべての組織から独立し、アメリカの正義を守る存在としてのFBIを守ろうとする副長官のマーク・フェルト(リーアム・ニーソン)だったが、長官代理は司法省からやってきたパトリック・グレイ(マートン・ソーカス)。 FBI捜査官はそれまでずっと生え抜きの人間ばかりで、管理職に外部から人を迎えることなど考えられなかった。
 そんな折、大統領選挙の133日前に民主党本部に侵入したとして男たちが逮捕される。 容疑者たちはみな元CIAやFBIで、いきり立つ捜査員たちにグレイは「48時間以内に捜査を終えろ(つまり、間に合わなかったらそこで手をひけ)」と指示を出す。 この事件の裏には再選を狙うニクソン陣営のたくらみがあるのではないかとにらむフェルトは、表立って捜査できない代わりに<ニューヨーク・タイムズ>と<ワシントン・ポスト>にひそかに情報をリークする・・・という話。

  ザ・シークレット・マン4.jpg 敵を欺くにはまず味方から、とばかりに、フェルトはグレイの側についていると他の捜査官たちに思わせて憎まれ役を買って出るところがすごい。
 さすがフーバーに仕えた最後の副長官、組織の理念を守るためには身を捨てる覚悟である(しかしこの高潔さが本当ならば、その後FBIはずいぶんと堕落したということに・・・とはいえFBIの独立性を保つため、フーバー時代にかなりあくどい手で権力者たちのスキャンダルなどを手に入れていたのも事実である)。
 邦題はともかく、原題は『マーク・フェルト:ホワイトハウスを震撼させた男』なので、映画は<ウォーターゲート事件>そのものよりもマーク・フェルトの人生に寄り添った形に。 だから余計事件について描写が最小限なのだろうか。 娘が行方不明とか(家出した模様)、奥さんと感情面ですれ違いがあるなど、「アメリカ的家族」からほど遠い彼の家庭は痛々しいが故に彼は余計仕事に邁進してしまうのだろうか。

  ザ・シークレット・マン2.jpg とはいえ、<FBI捜査官の妻>として全米転勤、いろいろ打ち明ける友人も作れない環境を続けたとあっては情緒不安定な奥様のことも責められない。 出番は少ないながらもダイアン・レインを配した理由はそこか。
 時代のせいもあるけれど、年齢の割にマークが老け込んでいるのは仕事のストレス&家庭のストレスなんだろうなぁ。 奥さんに「副長官になったんだから当然次は長官になると信じてこれまで我慢してきたのに」という気持ちがあるのはわからないではないのだが、それは夫の仕事であって妻には関係あるのか・・・と考えてから、アメリカのカップル文化の根の深さを思い知るのであった。 専業主婦(?)である彼女にとっては「フェルト夫人」という形でしか社会との接点がないのだ(そしてどうやら彼女は施設育ちらしく、普通の家庭というものを体験しないまま大人になった)。 彼女の人生もすごく悲しいのだ! 彼女を主役にしても映画ができそうなくらいなのに、サイドストーリー的に断片だけ語られてしまう哀しさですよ。

  ザ・シークレット・マン1.jpg それにしてもブルース・グリーンウッドは渋くてかっこいい!!
 フェルトとは長い付き合いらしい<タイムズ>のベテラン記者という役どころですが、超似合う! はまりすぎて意外性ゼロなほどである(出てきた瞬間から、悪い人ではないことが一目でわかるというか)。 彼に情報をリークするのかと思いきや、付き合いがあることからばれてはまずいということなのか、意味深な会話で一回目の会見は終わる。 このあたりぐらいから『大統領の陰謀』と裏返しの構造になっていく感じですかね。

  ザ・シークレット・マン6.jpg いつも同じ電話ボックスから新聞社に電話。 今だったら逆に足がつくよ?
 『大統領の陰謀』と同じような場面はあっても、あくまで視点はフェルト側から。 自分が「ディープスロート」と名付けられたことに戸惑う表情が面白かった(『ラブレース』で知ったのだが『ディープスロート』とは当時大人気だったポルノ映画のタイトルからきていたのよね。 あたしは『Xファイル』で「密告者」の代名詞として使われていたのが最初の記憶だけど)。
 そんなわけで、リーアム・ニーソン、ほぼ出ずっぱりです。 彼のシリアス演技を久し振りに堪能したい方は是非。 アクションはまったくありませんので。
 ホワイトハウスのジョン・ディーン(マイケル・C・ホール)、FBIのチャーリー・ベイツ捜査官(ジョシュ・ルーカス)、最後だけちょっと顔を出す弁護士(?)にノア・ワイリーなどなど、主に映画に出る人・テレビドラマでおなじみの方々が混在しているのがなんだか興味深かった。 かつての映画界とテレビ界の分断時代は完全に終わったんだなぁ、と改めて実感。
 ニクソンが失脚する過程は『フロスト×ニクソン』で一部描かれてはいるけれど、この映画では結構バッサリ(ニクソン役の俳優はいなく、当時のニュース映像だけで構成しているせいもあり)。 マークの立場では直接大統領に会うことはなかった、ということでもあるのかも。
 しかしフェルトが「自分がディープスロートである」と認めたのが2000年代に入ってから、というのが驚き(推測はされていたんだろうけど、はっきり認めてはいなかったのだな)。 彼のジャーナリストとの対談(?)が原作のようで・・・だから彼の人生に多少重きを置いたんだろうな。
 でも<ウォーターゲート事件>やニクソン政権について予備知識ゼロだとかなりきつい。 そのかわりちょっとでもあればとっつきやすい。 あたしは映画で得た知識しかありませんでしたが大丈夫でした。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする