2018年03月08日

ドクター・スリープ/スティーヴン・キング

 図書館予約本が一段落すると、次は何を読むかで悩む。 いや、読みたいものはたくさんあるので、「どれを先に読むか」で悩む。 同時並行で何冊か常に読んでますが、勢いがつけば一気読み。
 これも、そんな作品でした。
 『シャイニング』の36年後の続編。
 とはいえ、あたしが『シャイニング』を読んだのはかなり前のことで・・・しかも映画版のほうを先に観てしまったという(映画にいまいち納得がいかないところがあったので、それを埋め合わせたくて読んだのだが、結構違う話だったので衝撃を受けた。 古典的ゴーストストーリー×超能力だった)。 『ドクター・スリープ』単独でも楽しめる(でも深くしみるのは『シャイニング』を読んでいる人)という評判を受け・・・昔読んでるんだから、これを読んでいるうちに思い出すのでは?、とローティーンだったころに自分の記憶力に期待してあえて復習はしなかった(映画もあの頃、一回観た限りだが・・・意外と覚えていたりするから)。

  ドクタースリープ1.jpgドクタースリープ2.jpg あぁ、読み終わると表紙の意味がわかるなぁ・・・。

 <オーバールック>ホテルでの惨劇をからくも逃れたダニーとその母ウェンディのその後の暮らしから始まる。 序章に当たる<その日まで>を読むことで、読んだことのある人は『シャイニング』の記憶がよみがえる(読んだことのない人は、ここで必要最低限に知識を得られる)。
 そして物語は一気に30年後に。 少年だったダニーはすっかり大人になり、あの頃恐れていたはずの“父親”と同じ道を辿っている。 ひとところに落ち着けず、ついにティーニータウンに流れ着いたダニー(正確にはダン・トランス)は不思議とこの土地に落ち着けるような気がして、そしてダンに手を差し伸べる理解者とも出会い、彼の人生はようやく一ヶ所に立ち止まる。 “かがやき”の能力は年齢とともに弱まってはいたが、完全に失われたわけではなく、ホスピスの職員として働きながら旅立つ人々の手助けをするように。
 そんなダンの静かな生活はすぐに終わりを告げる。 ダン以上の“かがやき”を持つ少女アブラからの接触があり、“かがやき”を持つ子供たちを長年の間餌食にしている<真結族>という存在がアブラを狙っているという。 ダンはアブラを救うことができるのか!、という話。

 前作が<ゴーストストーリー×超能力>ならば、今回は<吸血鬼(のようなもの)×超能力>。
 ダンが大人になっている場面には衝撃を受けた! というか、どん底にいるある人のくだりを読んでいて、それが少年ダニーののちの姿であるとわかったときの驚きときたら! 勿論、作者はその効果をわかったうえで書いているんだろうけど、まんまとやられました・・・。 その物語はひとまず終わりを告げるかもしれないけれど、そのあとは読者が思う以上にハッピーとは限らない、という哀しさを見せつけられ。 だからダンが立ち直っていく様、彼が自分が思うところのそれなりの人に近づいていくのがうれしかった。
 この物語的にはアブラの存在が結構大きく、ダンの出番が少ないのでは?、と思える部分もあるものの、かつてジャック・ハローランがダニーを導いてくれたように、今度はダンがアブラのメンターになる番。 人生はそういう順送りですよ、というのがしみじみと感じられ、時間の経過と自分も年を取ったという感慨があります。
 今回の敵<真結族>は“かがやき”を持つ子供たちを極限まで痛めつけ、最後に吐き出される“命気”をエネルギー源とする種族。 勿論、そうされた子供たちは死んでしまうので(場合によっては被害者は子供でないこともあるが、命気の純度は子供のほうが強いから)、吸血鬼的なイメージで。 上巻のはじめのほうで<真結族>がある人間を自分たちの仲間にする儀式の様子が、あまりにも邪悪すぎるポーの一族という感じで心底ぞっとする(そう思うとキング・ポーは優しかった)。 が、そんな<真結族>も物語が進むにつれて無敵ではないことがわかってくることで、逆に悪役として魅力的に見えてくる面白さ。
 ダンとアブラの出会いが偶然にしてはできすぎていると感じても、本編では「偶然と呼べることは何もない」と繰り返され、すべてが必然であったかのように読者も感じてしまう。
 キングの初期作品にあったものにくらべ、中期以降の作品は<語り>の勢いが強くなって、「ときにはちょっと無駄な部分もあるんじゃないの?」と思ったりもするんだけど・・・本書『ドクター・スリープ』にもその傾向は多々あるんだけど、その無駄にも見える過剰な語りが独特のリズムを産み、結果的に読まされてしまうという。 多分、それはあたしが慣れてしまったからで、これからスティーヴン・キングを読む人はそれこそ『シャイニング』や『デッド・ゾーン』あたりから入ったほうがいいと思う。
 実際、あたしは子供の頃はキングが苦手で(理不尽に子供が死ぬから、という理由で。 子供の頃のあたしは結構まともだったなぁ)、高校生で映画『デッド・ゾーン』を観て感銘を受け、原作を手に取って苦手意識がなくなった。 キング作品の映像化には当たりはずれが多いが、きっかけとタイミングにはなるので・・・キューブリック版の『シャイニング』をキングは今も許してないみたいですが、まぁ映像化を許してしまったのだからそういう部分はあきらめるしかないかと。
 で、今回は普通に読んでいたのですが・・・エピローグに当たる<眠りにつくまで>でまさか泣かされるとは!
 電車の中で読んでいたのにあふれ出る涙を抑えられず、大変でしたわ。
 ちなみに『ドクター・スリープ』も連続ドラマ化決定だという話・・・確かにおいしいキャラクターが多いから、ドラマのほうが描きやすいとは思うんだけど、バトルシーンは映像化が難しいと思う。 やっぱりこれは、小説だからこそ成り立つ物語。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする