2018年01月31日

煽動者/ジェフリー・ディーヴァー

 CBI捜査官、キャサリン・ダンス単独主役としては第4弾。
 前作『シャドウ・ストーカー』でも休暇中の捜査というアウェイ戦だったキャサリン、今回は麻薬捜査の過程での尋問結果ミスで民事部(主に書類仕事なので拳銃の携帯も許されない)へ左遷されるところからスタート。 とはいえ実際に民事部では働くわけではなく、銃を持たないままこれまでのように働いちゃうという、結構無茶な展開です。

  煽動者.jpg 原題は“SOLITUDE CREEK”。 本文中に日本語訳<コドクノオガワ>が使われているのに、この邦題はどうなんだ・・・まぁ、わかりやすいし、しかもレッドヘリングになってないこともない。

 ライブハウス・<ソリチュード・クリーク>にて将棋倒し事故が起こり、多数の死傷者が出た。 民事部の仕事として保険適応できるかどうか確認に現地に行ったキャサリン・ダンスは、これが人為的に引き起こされたパニックによる結果だと気づく。 建物の外に置かれたドラム缶で焚いた火から出た煙によって観客を火事だと誤解させ、非常口の前には大型トラックを停めて開かないようにした犯人がいる。
 麻薬捜査は続いており、近隣ではヘイトクライムとみられるいたずらが度を越した事件も続いていて、オニール保安官もおおいそがし。 キャサリンは民事部に籍を置いたまま、それぞれの事件の解決に努めるが・・・という話。
 群集心理というか、個人ではなく集団になってしまった時の人間のどうしようもなさ(人間性を失い、冷静さも理性もかなぐり捨てられる)、判断力をなくす描写は迫力があり、「うわっ、絶対こんなところにいたくない・・・」と思わされるのに十分。 でもこればっかりはいつどこで起こるかわからないし、人の多いところに住んでいれば常に隣り合わせにある危機で、北東北暮らしが懐かしいですよ。 だからこそそれを仕組む犯人の冷徹さ・情け容赦なさはサイコパスと定義される人物の「共感性のなさ」そのもので、またおそろしい。 でも、計画が厳密であればあるほど被害はひどくなるんだけれども、途中で一つつまずくと計画自体が成り立たない脆弱性もあって、完璧さと自滅の道は紙一重です。
 リンカーン・ライムもの同様、読者をだます“あえて描写しないことをあとでネタばらし”がここでも炸裂してますが、リンカーンものに比べると若干小振りな印象を受けるのは何故かしら。 キャサリンの家族に割かれる部分が多いから?(リンカーンには家族はいないわけではないが出てこない、仕事仲間が彼にとっては家族だから)
 キャサリンが音楽好きなので、いろんなアーティストやバンドの話題が出てくるのが楽しく、TVを見ないリンカーンと違ってまたもドラマの話題がふんだんに出てくる(息子が『ブレイキング・バッド』を見たいというのでキャサリンが前もって見たら好ましくないシーンがあったので許可しなかった、とか)。 また、今作では日本ネタがいい形(?)と悪い形で出てくるので「なんかすみません」と思ってしまったり。
 ジェフリー・ディーヴァーは、自分の読者は全作品読んでいる、という前提で次の物語を書いているのだろうか。 そんな自信が随所に感じられます。 まぁそんなあたしも、周回遅れとはいえ読んじゃってるわけですが。
 さりげなく引っ張っていたキャサリンの恋愛にも一応の決着が(そこの部分はまるでロマンス小説のようだ)。 これでシリーズ終わるのかなぁ。 でもディーヴァーのことだからさらっと続けそうだしなぁ。 まぁ、続報を待ちましょう。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 01:43| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする