2017年12月18日

オリエント急行殺人事件/MURDER ON THE ORIENT EXPRESS

 何故、今、『オリエント急行殺人事件』なのか?
 数か月前、最初に映画館でチラシを見つけたとき、普通にそう思った。 過去に何度も映画化・ドラマ化されてるし、みんな知ってる話じゃない? 5W1Hを解き明かすミステリの王道ジャンルで「みんなネタ知っている」は致命的じゃない?、と。
 しかし監督はケネス・ブラナーだという(しかも自分でポアロを演じるという)。 となれば、ただのオールスター映画ではなく、何か新しいことを盛り込んでくるということではないだろうか!
 そう思ったら、すごく観に行きたくなってしまったのだった。

  オリエント急行殺人事件P.jpg この列車には、名優たちが必要だった。

 英国政府の依頼でトルコである事件を解決したエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は、ポアロの友人でオリエント急行責任者のブーク(トム・ベイトマン)のはからいで、イスタンブール発フランス行きの豪華寝台列車オリエント急行を使って戻ることに。 普段はほとんど満席にならない一等客室がその日は満杯で、ポアロは相席になる。 食堂車でアメリカ人富豪のエドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)から身辺の危機を感じるのでボディーガードになってほしいと依頼されるポアロだったが、「そんなのは私の仕事ではない」と手ひどく断る。 走り続ける急行列車はスイス付近で雪崩のため線路が埋まり、運行が不可能に。 そんな中、ラチェットが刺殺体で発見され、密室と化した列車内に犯人がいるとポアロは考えるが・・・という話。
 原作でも、他の映像作品でも、「事件解決の帰り」としか説明されていなかった<その事件>をオープニングで描いたことは新しい!、と思った(たとえその事件が『名探偵コナン』の少年探偵団レベルであろうとも)。 それでポアロさんの特異な(気難しいが愛すべき)キャラ説明になっているし、そのあとは彼が何をしようとOKと思えるから。

  オリエント急行殺人事件4.jpg また、ラチェットの喋り方がほぼギャングで、「あ、こいつ、悪い世界のやつだ」と一目でわかるのもジョニー・デップらしい。
 しかもアルプス山脈(?)で起こるダイナミックな雪崩の描写とか、それに巻き込まれて先頭車両(この場合は機関車)が脱線するとか、後続車両が陸橋の途中に残ったまま緊急停止するなど、一連の流れはかなりスリリング。 オリエント急行はただ優雅なだけではない!、とここまで表現されたのは初めてかも。

  オリエント急行殺人事件1.jpg で、肝心のポアロさんですが・・・。
 あたしがこれまでに観た映像化されたポアロは、それこそ昔の映画『オリエント急行殺人事件』&『ナイル殺人事件』のアルバート・フィニーと、BBCが全作品ドラマ化したデヴィッド・スーシェだけ。 あたしが思う原作に近いポアロはデヴィッド・スーシェのほうだけど・・・今回のポアロ、これはこれでありです!
 多分、ポアロ史上いちばんダンディで、背も高い。 美食家の割に筋肉質。 されど若き日に別れたのか、国を去るときに(ポアロさんはベルギー人です)別れ別れになったのか、そんな思い出の女性の写真を胸に秘め、ときに写真に向かって泣き言をいうという最もセンシティブでロマンティスト。 なおかつ逃走した誰かを追いかけて列車外に飛び出すどころか陸橋をも下っていく武闘派!(ここ、いちばんびっくりしました)
 列車が止まってからは外にテーブルを出させ、雪の山脈をバックにお茶を飲みながら乗客一人一人に話を聞くなど、スペクタクルなパノラマを背景にしちゃってるのもよかった(あたしが雪の光景が好きだからかもしれないが)。

  オリエント急行殺人事件5.jpg この出来事は1934年の設定。
 キャロライン・ハバード(ミシェル・ファイファー)さんはイヤリングなど装飾品は30年代の最先端のデザインを身につけていて、ドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)などは10年・20年代のものを身につけている感じ。 年齢の違いもあるでしょうが、そういうところにも「生きる活力の差」が見えるようでうまいなぁ、と思った。
 ミステリーとしての基本設定は変わっていないので、<どう見せるか・どの段階から真実をちらつかせるか>に工夫があったと思うのですが、つい知っているからポアロさんの灰色の脳細胞の働きを逐一確認していなかった・・・だって、他にもウィレム・デフォーやセルゲイ・ポールニンが出てるんだよ! いろんな意味で濃いキャストたちから目が離せませんよ。
 そんなわけで、思いのほか楽しめたのです。
 コピーの<この列車には、名優たちが必要だった。>が、ダブルミーニングになっていると気が付いたとき、観客はもはやポアロさんの迷いに背中を押すしかなくなっている。

 ちなみに・・・ポアロなのかポワロなのか、あたしの中では今でも答えが出ていないんだが・・・。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする