2017年12月12日

女神の見えざる手/MISS SLOANE

 ジェシカ・チャステイン、好きです。 ちょっと狂気をはらんだ<デキる女>か、突き抜けた無邪気さですべてを変えてしまうか、どちらかに分類される役柄が多いけど、圧倒的にかっこいいのは<デキる女>のほうでして、今作もまたそんな役。
 予備知識はそれだけだ、さぁ、観るぞ!

  女神の見えざる手P.jpg 彼女がアメリカを「毒」で制す――。

 ワシントンで辣腕を振るう優秀なロビイスト、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)。 彼女は大手ロビー会社のコール=クラヴィッツ&W社の稼ぎ頭で、その能力を買われてアメリカ全土にじわじわと広がる銃規制派をねじ伏せてほしいという銃擁護派団体からの依頼が入る。 しかしミス・スローンはそれをよしとせず、自分の部下たち4人をつれて退社、ロドルフォ・シュミット(マーク・ストロング)率いる銃規制派の旗を抱える小さな会社へ移籍する。 そこから彼女と仲間たちによる銃規制法案可決のためのロビイ活動が始まるが、敵は巨大で真正面からいってもつぶされるだけ。 だが決してあきらめず、抜きんでたアイディアと途方もない決断力で勝負を挑む・・・という話。

  女神の見えざる手2.jpg 彼女についていくことを決めた部下たち4人。 勿論、元の会社に残った者たちもいる。 それだけ現代のアメリカ社会において「法律による銃規制」は高いハードルなのである。
 ちょっと前にも書いた気がするが、ロビイストとは「特定の団体(顧客)の利益をはかるため、マスコミや世論を動かして議員等に圧力をかけ、議会での立法活動に影響を与える」人たちのこと。 自分の信念のために働いているロビイストもいるが、金次第で顧客の利益優先の人もいる。 ミス・スローンは前者であるとわかるものの、そのために手段は選ばないのでかなり怖い。 自分でも自覚はあるのか、それとも仕事中毒なのか、自分の中にある満たされないもののために仕事にのめりこむのか、冒頭からミス・スローンはいろんな意味で危険な存在であることが示唆される。 でもそういう役、ジェシカ・チャステインは似合うんだよ!
 しかし彼女だけでなく、実は豪華なキャスティング。 前の会社でミス・スローンの片腕的存在だった(でも大学院に進むつもりなのに仕事に引き留められていた)ジェーン・モロイ(アリソン・ピル)、前の会社の上司だったジョージ・デュポン(サム・ウォーターストン)、スパーリング上院議員(ジョン・リスゴー)などなど、「なんか見たことありますけど!」な人たち多数。 しかもサム・ウォーターストンとアリソン・ピルはドラマ『ニュースルーム』のレギュラーで、あれも実際に起こった事件・事故をモチーフにしたものだったので、この映画自体もなんとなく実録ものっぽい雰囲気が出ているというか、ジャーナリスト的手法でありつつ内幕物になっているという、大変社会派であることを意識したキャスティングと見た。 だからなんとなく、イギリス映画っぽかったです。

  女神の見えざる手3.jpg きゃー、マーク・ストロング! 悪役じゃないわ! かっこよかった!
 シュミットは銃規制のためにロビイスト会社を立ち上げたCEO。 会社は小さいが信念の人であり、彼の会社にはその趣旨に賛同した人々が集っている。 ミス・スローンから見ればロビイストやアシスタントとしてのレベルはバラバラだろうけれど。
 日本にずっと暮らしていると、何故様々な事件・事故が起こっていながらアメリカではいっこうに銃規制が進まないのか、というのは全く理解できないのだけれど、銃規制を望む人たちも少なからずいるというのは見ていてやはりうれしかった。 でも、全米ライフル協会をはじめとする銃擁護派(むしろ推進派)の力が強すぎることと、アメリカにおいては建国の理念である<自由>を妨げるものはどんなことであっても許されないという国民性の問題になってきちゃうのかな、と思う。
 だからこそ国民への意識改革というか、それだけやりがいのある仕事なのでしょうが。

  女神の見えざる手5.jpg 真っ黒一色だと思ったら、靴のソール裏が真紅!
 一日のほとんどの時間を仕事に捧げている彼女にオシャレをする時間などないはずなのだが・・・どうやらスタイリストに一式届けさせている様子。 パーティーのときも髪やメイクも全部プロに。 だがたくさんの資料が詰まったカバンだけは取り替えない。 クロコダイル革のちょっとネイビーっぽい黒のカバンは、そのまま彼女の稼ぎの象徴である(ブランド名は映らないように工夫されていた。 かなり高価そうだったが、それを無造作に扱うのもまたかっこいい)。
 でもあたしにはこの生活、無理だ、と思わされた。 ミス・スローンのような鉄の意志がないのも勿論だが、体力もそうだし、ときには自分よりも下の立場の者に人格を攻撃するほどの言葉を浴びせなくてはならない。 さらには、自分だけではなく部下たちの命まで狙われるかも。 そもそも、人の気持ちを、主義主張を操らなければならないのだ。 精神的な負担ってどれくらいよ・・・。

  女神の見えざる手4.jpg しかもかつての右腕、ジェーンは敵側に・・・ミス・スローンが厳しすぎたせい?
 そんなわけでミス・スローンは新しい会社でエズメ・マヌチャリアン(ググ・ンバータ=ロー)を見い出し、彼女に重要なポジションを任せるように。 エズメは本心から銃規制を願っていて、そのためにシュミットについてきたワシントンの住人としては変わり種。 ロビイストになりたい野心もないし、生活も慎ましやか。 彼女のカバンはいつもコーチ・レガシーのキャリーオール(色はナチュラルブラウン)で、それもまたミス・スローンとの見事な対比になっていた(こっちのカバンがわかったのはあたしもかつてほしいなぁと思っていたからだった。 でもあたしの希望よりはちょっと小さくて・・・アメリカ版のこっちは日本で売っていたものより大きめだったので、あのサイズならあたしは買ってたかもしれない)。
 仕事をする女にとって、どんなカバンを持っているかは性格づけに欠かせない、と思わされる使い方でしたよ。 そこだけでもこの映画、高評価。
 でもいちばんの見どころは、「真のロビイストとは」という部分。
 人として高潔で、品行方正であるに越したことはない。 けれど欠点だらけでも、正しいと信じる理念のためにやるべきことをやって結果を出すとがむしゃらに突き進む人のほうが魅力的。 一見無茶苦茶なこともするけれど、その裡に信じるべき何かがあると気づく人たちは彼女についていく。 その期待に応えるべく、更に動く。 彼女はそういう人だから。
 銃規制派と擁護派、どちらが勝つのか。 そう簡単に決着はつかないけれど、そのスリリングな戦いの過程は見る価値あり!

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする