2017年11月15日

IT イット “それ”が見えたら、終わり。/IT

 『IT』が映画化されると聞いたとき、「なんて無茶な」と思った。
 原作は読んでいたし(高校を卒業後、大学に行くまでの春休みに図書館から借りたハードカバーで、大学生のとき文庫になって買って、と最低2回は)、前後編のテレビドラマ版も何回か観ている。 過去の少年時代と現在の大人時代を行ったり来たりする構成を描くには映画では時間が圧倒的に足りない。 原作はかなり厚めの文庫にして4巻になる長さ、3時間のドラマ版でも足りなかったのだから(そして終幕近くの特撮のショボさに至っては、少年時代の素晴らしい描かれ方を台無しにする破壊力で、「あのドラマ、前半はよかったよね〜」と見た者全員がそう言うというすごさである)。
 でも今回は少年時代のみに特化、と聞いて「それならありかも」と思った。
 11月3日公開を心待ちにしていたのに、10月上旬の段階では神戸市の映画館で上映予定を公表するところがどこもなく、あたしの行ける範囲ではMOVIXあまがさきしかない状態。 ま、JR尼崎駅直結だから仕事帰りに寄れるし、と考えていたところ、急遽OSシネマズハーバーランドと109シネマズHAT神戸が名乗りを上げた。 どうやら、日本の配給会社は最初全国20館での公開を考えていたらしいが、本国での空前の大ヒット(9月公開作品の興行成績だけでなく、ホラー映画としての興行成績記録も塗り替え中)を受けて202館に拡大したとのこと。 そんなこと、できるんですね・・・。 でもそうやったのは結果として成功だったのでは。 あたしは結局ハーバーランドに行ったのですが、レイトショーだけど(しかもR15+)、結構混んでいた。 映画館の方によると、土日は高校生がグループで大挙して訪れているらしい(そういうことを聞くあたしもあたしだが)。 公開一週目は回数多いが、二週目以降は現状維持もしくは減らされることが当たり前の昨今、上映回数が増えているというのはまぎれもなくヒットしている証拠! 原作やドラマ版を知らない若い世代が観ている、ということがなにより原作ファンとしてうれしかったです。 これをきっかけに原作を手に取ってくれる人がいるかもしれないじゃないか(ちなみに原作は絶版でしたが・・・映画公開に合わせて電子書籍化。 そして拡大公開に合わせるように紙書籍も復刻されました。 バンザイ!)。

  イットP.jpg 子供が消える町に、“それ”は現れる。

 1988年、メイン州デリーという小さな田舎町にて。 ある雨の日にビリー(ジェイデン・リーバハー)の弟ジョージ―(ジャクソン・ロバート・スコット)が行方不明となる。 他にも子供たちが何人か行方不明になっている。 事件なのか事故なのか一切わからぬまま、年が明けてもビリーは弟を探して町の地図と格闘、下水道があやしいと考え始める。 ビリーの友人でお調子者のリッチー(フィン・ウォルフハード)や喘息持ちのエディ(ジャック・ディラン・グレイザー)、ユダヤ教会牧師の息子スタン(ワイアット・オレフ)もその手助けをするが、ときには付き合いきれないと思うことも。
 そんなときデリーに引っ越してきたベン(ジェイミー・リー・テイラー)は肥満気味であることを常にからかわれてきた過去から、友達づくりよりも図書館で本を読むほうが好きだった。 見た目で周囲に誤解され、いじめや嘲笑を受けている少女ベヴァリー(ソフィア・リリス)は父親から虐待されていて居場所がなく、黒人のマイク(チョーズン・ジェイコブズ)もまた肌の色のせいでいじめにあっていた。 そんな<負け犬>な彼らがそれぞれに恐怖の対象を見たことで団結し、友情をはぐくみ、“それ”・クラウンピエロ姿のペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)との闘いを決意する・・・という話。

  イット1.jpg <ルーザーズ>のみなさん。
 ビリーが乗っている自転車に<SILVER>と彫り込まれているのを見ただけで一瞬目頭が熱くなったあたし。 どんだけこの物語が好きなんだ、って感じですが、映画のいたるところに原作愛があふれているのでたまりません。 ベヴァリーは出てきた瞬間「彼女だ!」とわかるし、一月の炎もちゃんと出てくる。 原作では少年時代は1958年の設定でしたが、それを1989年に置き換えることであたし自身の記憶と重なり、ノスタルジーすら共有できるヨロコビ!(デリーの映画館で上映されているのが『エルム街の悪夢5』だとか、エディの着ているTシャツに見覚えあるぞ、とか)。 その時代で黒人差別もどうなんだとは思いますが、一部のいじめっ子だし、田舎町だと偏見もなんだかんだ減らないよなぁとか身に覚えがあるのであまり違和感は覚えず。
 で、時代は変わってもメインのストーリーは同じなわけで・・・となると「どうやってそれぞれをペニーワイズと遭遇させるのか」が見どころです。 原作において印象深いエピソードはその原形を保ちつつ、新しい表現で。 そうでない部分はまったく違うアプローチで。 Jホラー的描写もあるし(流れを見ていかないと怖さの意味がわからない)、びっくり箱的な単純な驚かせ方もあるし、どっちかに偏ってもダメだけどそのバランスがいい具合に配分されている感じ。 特にペニーワイズの唐突さは場合によっては失笑を買いかねないおそれがあるのだけれど、子供たちが本気で怖がっている(ように見える)ので、わりとうまく回避できていたと思う。
 そう、子供たち、みんなうまかった!

  イット2.jpg ここはトラウマ級のシーンで、期待を裏切らず。
 ジョージ―がペニーワイズと出会ってしまう場面、ここが序盤のハイライトですが、そこに至るまでの流れが緊張・緩和・緊張で、先を知っていてもドキドキする。 雨、黄色いレインコート、排水溝、ついでに赤い風船の取り合わせは、もうそれだけでジョージ―の運命を語ってしまうもので、不吉な予感しかない組み合わせ。 アメリカで『IT』公開前に排水溝や側溝の網状の金属蓋に赤い風船を結び付けて放置するといういたずらが頻発したというニュースを見かけたけれど・・・もしかしたら『IT』はアメリカ人にとっては怪談のようなものなのかもしれない。 原典を当たった人は少なくとも、あらすじはだいたい知ってる、みたいな。
 と、うかうか思っていたら、とんでもなくショッキングなシーンをお見舞いされました。 え、そこ、映しちゃうんだ! あえてぼかさないんだ!
 これがR15+の恐ろしさか・・・。 かわいそうなジョージ―。 

  イット3.jpg ペニーワイズの不気味さもまた進化している。
 そしてペニーワイズですよ。 ドラマ版よりも、原作のイメージよりも少し若い印象。 甲高い笑い声と子供だましなやり口もまた<幼稚さ>を引き立てるんだけど、やることそのものはこの上なくえげつないので・・・。 メイクで俳優さんの素顔はまったくわかりませんが、ステラン・スカルスガルドの息子でアレキサンダー・スカルスガルドの弟ならばそれなりのイケメンでは? しかしそんなことはまったく感じさせず、得体の知れないペニーワイズをハイテンションで演じきったことはお見事としか言いようがなく、「スカルスガルド一家、すごい」と思ってしまった。
 しかしあたしがいちばん度肝を抜かれたのは・・・「ほーら、浮かぶよー。 みんな、浮かぶよー」みたいなペニーワイズの決め台詞みたいなのがあるんですが(英語では“You'll float,too.”かな?)、それが視覚化されている場面。
 VFXの進歩のおかげもありますが、あれをそう表現するか!、という驚きですね。 あのシーンだけでこの映画はもう合格点!
 ただ、一応上映時間は135分といささか多めではあるものの、ルーザーズたちの仲良くなっていく過程をもっとじっくり見たかったなぁ。 あの儀式に関しては省いてOKだったのでそこはいいのですが、7人のキャラ立ち具合が必要最小限だったので、ちょっと物足りなかった。 それだけ子供たちが役にはまっていたというのもあるのですが(いじめっ子と呼ぶにはかなり犯罪に近いことをやっているやつらについても放置ではなく、その背景も描いているので公平といえば公平なんですが・・・だからより『スタンド・バイ・ミー』的要素が強く出ちゃったかな)。
 最後にタイトルが出て・・・<chapter one>とかぶさります。
 ここで客席から「え、これで終わりじゃないの? 続きがあるの?!」的ため息が多くもれ・・・あぁ、やっぱり原作知らない人が多いんだなぁ、と実感。
 説明不足な部分は多々あれど、これはこれで終わってもいい感じ。 原作を知らない人は読みたくなると思う! ある意味、これを越えたものを作らないといけない宿命を背負った後編は大変ハードルが高くなったのではないか(ラストの処理を含めて)。
 後編は2019年公開予定だそうです。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする