2017年10月05日

The 500/マシュー・クワーク

 <サム・ドライデンシリーズ>を2作続けて読んで、翻訳者の田村義進氏の言葉の選び方が面白いな、と思った。 キャリアも長いみたいだから(なんと越前敏弥氏の師匠だそうである!)、多分これまでにも読んだことあると思うんだけど・・・これってのが浮かばないなぁ、と検索してみたら、スティーヴン・キングの『書くことについて』やジェイムズ・エルロイやカール・ハイアセンの作品群、アガサ・クリスティーの『ゴルフ場殺人事件』なんかも訳してる!
 読んでた〜、でも全然記憶になかった・・・結構昔に読んでるものが多いから、翻訳者の名前を覚える、という意識が薄かったのかな。 何冊か続けて読んでたら違ったかもしれないけど(ハヤカワのアガサ・クリスティーはほとんど田村隆一が訳していたと思っていた・・・。 新訳かな?)。
 というわけで、田村義進氏の訳書、という観点から探してみた。

  The 500.jpg ポケミス初の横文字タイトルだそうです。 読み方は『ファイブ・ハンドレッド』。 そう思うとハヤカワの仕事が多いのかな?
 しがない貧乏学生である“わたし”(マイク・フォード)は、ロー・スクールの三年生で、同時に政治学も学んでいた。 理由はよくわからなかったが、そうすればワシントンDCで結構な職を得られるのではないかと思ったようだ。 “わたし”の父は詐欺と窃盗の罪で服役中で、母はとっくに亡くなった。 父のようにはなるまい、まっとうな道を歩もうと思っている“わたし”だが、実は父や父の仕事仲間たちからいろんなことを学んでいた。 道を踏み外そうと思えばすぐにできたが、すでにペナルティを受けた過去があるため踏みとどまった。
 ある日、“わたし”は客員講師として招かれた名うてのロビィスト、ヘンリー・デイヴィスの講義にもぐりこんだところ、質問に対する答えが気に入られ、“わたし”は<デイヴィス・グループ>にスカウトされた。 目的のためには手段を選ばない会社の方針は“わたし”の競争心をあおり、着々と出世街道を歩むことに。 使い切れない給与・報酬、豪華すぎる家や車、DCにありがちな上流社会との人脈、そして美しく賢い恋人、この世のすべてを“わたし”は手に入れた。 だがそんなしあわせなど長くは続かない・・・という話。
 <ファイブ・ハンドレッド>とは、政治家などワシントンDCを動かしている実力者たちのこと。
 またロビィストとは、ある目的を達成するため政策決定に影響を与える人たちのこと。 全米ライフル協会のように大きすぎ、有名すぎる団体もあるが、<デイヴィス・グループ>は戦略コンサルタント会社と名乗りながら裏でロビィ活動をする、DCの裏社会を知り尽くした最強のロビィスト集団である、という設定。
 日本は世界でもロビィ活動の下手(いや、そもそもそういう活動をしているかどうかも疑問)な国として有名だが、こんな海千山千を相手にしなきゃいけないなら確かに難しいわ!、と感じる。 というか、正確にはそこまでやりたくないというか・・・。
 小規模なロビィストの実態としてはドラマ『スキャンダル 託された秘密』でオリヴィア・ポープが体現してくれているので想像できない世界ではなかったが・・・仕事の基準が自分の信念かお金かでここまで違うものかとおののく(ま、どちらもえげつないことはしているのであるが)。
 その点、マイクの本質は揺らぎつつも「正義の側に立ちたい」人。 まぁ生い立ちのせいでいっぱしの金庫破り(解錠師)ではあるものの。
 スティーヴ・ハミルトンの『解錠師』をちょっと思い出させる部分はあれど、とにかく相手を出し抜く・自分の弱みを隠し通すというあたりはドラマ『スーツ』のような弁護士物にも通じる。
 一人称なのでスリリングさが強く、途中で読むのをやめられないが、描かれる事件のスケールは割と小さい?
 前半はリーガルサスペンステイストなんだけど、後半はアクションものになり・・・いろいろてんこ盛りなんだけど、結局大事なのは<家族>だという・・・いかにもアメリカンな話。
 でもやっぱりスピード感はある。 それが田村氏の得意技のひとつなのか。 マイクの自嘲的な語りがハードボイルドっぽいし。
 映画化権は売れたみたいだけど・・・それから5年以上たってるし、お蔵入り企画かな?

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする