2017年09月22日

九つ目の墓<刑事ファビアン・リスク>/ステファン・アーンヘム

 <刑事ファビアン・リスク>四部作のうちの二作目、読了。
 時間軸としては一作目『顔のない男』よりも前、彼が故郷のヘルシンボリに帰ってくる以前の、スウェーデン国家刑事警察殺人課の一員としてストックホルムで働いていた最後の事件。
 前作では「社会風刺的・社会の暗部をえぐる的部分は少なめ」(あたしの基準はヘニング・マンケルなのでそれはフェアではないかもだが・・・)という印象を持ちましたが、今作はまるでそれを意識したかのようにスウェーデン以外のことが冒頭から。 全然違うけど、『目くらましの道』を思い出すような構成。

  ファビアンリスク2 九つ目の墓.jpg <九つ目の墓>の意味が分かるのはかなり後半。

 ストックホルムで連続猟奇殺人事件が発生。 同じ頃、デンマークのコペンハーゲンでも残忍な殺人事件が起こっていた。 手口から、過去の事件の容疑者がそれぞれ2名浮上する。 コペンハーゲン警察のドゥニヤ・ホウゴーは犯人はスウェーデンに逃走したと考え、ヘルシンボリ警察のクリッパン刑事の協力を得る。 ファビアン・リスクもドゥニヤ・ホウゴーも捜査を進めるうちに「この容疑者では理屈が合わない」と考えるようになるが、お互いの事件を知っているわけではないので連携が取れず、事件は泥沼の様相を呈す。 それぞれの警察上層部は理由は違えど早く事件の幕引きをしたいと考えていることもあり、刑事たちは焦りの色を濃くしていく・・・という話。

 この頃のファビアン・リスクにはきちんと有能なパートナーがいて(双子を妊娠中で体調が万全ではないにもかかわらず、彼女に気遣いできてないファビアンに更に腹が立つが)、『顔のない男』事件の時のように独断専行の捜査はしない。 むしろ、チームの他の刑事たちの中で飛びぬけて優秀、というわけでもない印象(その割に、本人は他の刑事を見くびっているところあり)。 パートナーのマリーンが優秀なのであって、ファビアンが優秀というわけではない、という感じ。 だから事件の終盤で彼が繰り返す失態(その中には取り返しのつかない大失態も含まれる)を読まされるこちらとしては、「・・・そりゃ、その後悪夢に悩まされるのは当たり前だよ。 というかヘルシンボリに戻ったのは家族のためが主みたいなこと言ってたけど、結局ストックホルムから逃げ出したかっただけじゃないか」と、ファビアン・リスクのダメっぷりにげんなり。 むしろ犯人の覚悟のほうが潔く感じてしまう恐ろしさ。
 『顔のない男』で重要な役割を担うドゥニヤ・ホウゴーやクリッパンが登場するのはサービスというか、未来を垣間見る楽しさを提供してくれるけど、ドゥニヤがセクハラ・パワハラに反撃できない弱い状況にあったのは意外(逆に、こういう不本意な過去があるからこそ、強さを身につけられたのかも)。
 結局、人間は自分がいちばんかわいい、というところから逃れられない、身も蓋もない話ではある。
 しかも数多くの登場人物たちのその後は結構ほったらかしである(ぎりぎりのところまでの描写はあるけど、その先が気になるんですけど!、というところは放置)。
 しかもエピローグ後半では、更なるシリアルキラー予備軍らしき人物が登場し、ヘルシンボリを目指すことが判明。 これが、三作目にかかわってくるのか?! また引っ張られる終わりですよ!
 なんか、こうなると4作で終わって大丈夫なのか・・・(なんかいろいろ消化不良起こしそう)、という気になってきた。
 マリーンのその後、特に気になる。 『顔のない男』に書いてあったかな?、と本棚を探す羽目になった。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする