2017年09月04日

開かれた瞳孔/カリン・スローター

 ウィル・トレントシリーズの救いのなさにちょっと疲れたので、それ以前の<サラ・リントンシリーズ>を探してみた。
 ハヤカワミステリ文庫に、一冊。 2002年刊行。 あの当時は性犯罪色の濃いシリアルキラー物が林立していたような気がする・・・(『リゾーリ&アイルズ』の原作になったテス・ジェリッツェンとかもこのへんか?)。 『羊たちの沈黙』ブームの頃はいろいろ読んだけど、ちょっと食傷気味になったからチェックが甘かったかも。 2002年といえば『飛蝗の農場』なんかを読んでおののいていた時期だなぁ。 一皮むけば変態、よりも、普通っぽい人が何かを踏み外して転げ落ちていく、というほうに興味が向いていたのかもしれない。
 そんなわけで今では当然品切れ・重版未定。 図書館から借りだしました。

  開かれた瞳孔.JPG この表紙も記憶にあるようなないような・・・。
 サラ・リントンはジョージア州グラント郡の小児科医であり、検視官。 この町で生まれてこの町で育った。 両親も妹も近所に住んでいる。 警察署長であるジェフリー・トレヴァーはよその町から来た人物だが、サラの元夫でありお互いがお互いを忘れられないのに素直になれず、いびつな関係性を保ったままである。
 そんなある日、妹と昼食の約束をした簡易レストランの女子トイレで、切り裂かれて血まみれの女性―知人の大学教授ジビル・アダムスを発見する。 懸命に命をつなごうとするサラだが、出血多量のためショック状態に陥ったシビルを救うことはできなかった。
 シビルの双子の姉のリナは刑事であり、ジェフリーの部下でもある。 妹に起こった事態を知って刑事の枠を超えた行動に出るのをジェフリーは恐れる。 さらに女子大生の行方不明事件が発生、同一犯による連続事件が疑われる。
 そんな三人を主要視点として描かれる、おぞましき事件の真相とは。

 『ハンティング』に登場したサラはジェフリーを亡くしており、それ故に彼恋しさに支配されていたようだが・・・この時点ではジェフリーはまだ生きているせいか、向こうの浮気がもとで離婚したことにサラは非常に腹を立てており(というか浮気されたことに、か)、ジェフリーが「あれは君の気をひきたくてやったことで、今も愛しているのは君だけ」という弁明に耳を貸さないが、心の底では許したいと思っているのだが性格的に傷つけられたことがどうしても許せない、というとても面倒な状況に。 ジェフリーとしてもいい大人がその言い訳かよ・・・という感じで、結局許さないうちにジェフリーが死んでしまったから、サラは後々ジェフリーとのいい思い出しか思い出せなくなって『ハンティング』の状態になっているのだろうな・・・と思うしかない。 それくらい、『ハンティング』のときとサラは別人のようである。 『開かれた瞳孔』のシリーズの続きが読みたくなってしまうではないか! <ウィル・トレントシリーズ>にいま結構注目が集まっているので、その勢いでこっちのほうも訳してもらえないかな〜(でも、これってネタバレになるんだろうけど・・・時間がさかのぼってしまったから許してもらってもいいですか)。
 となると、タイミングが合わなくてわかっていないけど、こういった「埋もれた傑作シリーズ」ってのは意外に多くありそうな気がする。

 で、今回の事件ですが・・・顔見知りの多い町で起こった事件ということで、「犯人、こいつでは?」と読者としては結構早い段階で気づきますが、動機とかがわかるのは最後のほう。 犯人以外にもいろいろな要素がちりばめられているので(それらをレッド・へリングと呼ぶには登場人物たちの人生に影を落としすぎである)、「やっぱりこの作者は登場人物たちをひどい目にあわさないと気がすまないのか?!」と思うほど。 それが物語の吸引力になっているのは確かですが・・・やはりつらい。
 たとえ事件は解決しても、関係者には深々と残る傷。
 それらを思う存分描いてくれているので、550ページ越えである(にもかかわらず、読み始めたら割と早めに読み終えてしまった)。
 エピローグにはサラとジェフリーの関係が修復されるような予兆はあれど、その手前までに救いがない展開が続いたのでとってつけたような無理やりなハッピーエンドに感じなくもなく・・・そのあたりが<デビュー作だから>なのかも。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする