『産む、産まない、産めない』に続く、妊娠・出産・子育てをめぐる7つの短編集。
前作の物足りない感は多少払拭されているのか! ちゃんと「産まない」人は出てくるのか!
今回は連作ではありませんでした(テーマは共通でも、登場人物がリンクすることはない)。
最後の一編だけなんだかとってつけたようなSF要素だなぁ、と思ったらそれだけ書き下ろし。 単行本にするのにページが足りないからあわてて書き足したのか・・・というのがまるわかりな感じがして悲しい。 それまでの比較的リアルタッチな作品群から浮いている。 筆者の興味はもうこのテーマから離れたのかな、という気すらしてしまうじゃないか。
まぁ、前作からは深く掘り下げられている感じはありますが・・・。
どっちにせよ、「女性は子供を産みたいものである」という価値観が大前提の世界観の話なので・・・確かに世間的にはそういうものなのかもしれないですが、「断固として子供は持たない」と考えている女性は一定数いるので、そこにまったく触れないのはどうなんだ、と思ったり。
うーん、そう考えている人はもう揺るがないから、物語として成立しづらいということなのだろうか(キャラクターとしては<揺らいでる>人のほうが動かしやすいだろうし)。
だから今回は「子供をほしいと思わない」という人が出てくるんだけど無神経でデリカシーがない人のように描かれている・・・(実はそういうわけでもないのだが、短編なのでフォローが少ない)。 あと、子供を持たない選択をした人は、ほしい気持ちはあるんだけど、自分の夢をかなえるためには妊娠はできない(このタイミングを逃すと年齢的に厳しい)、と決断する。 ここでもやっぱり「女性は子供を産みたい」価値観が正しいとされている。 デリケートな話題だから各方面に気を遣った結果そうなってしまうのかもしれませんが、デリケートな話題から少し脱却してもいいんじゃないか。 隠すからマタハラが生まれるのかも。
「子供ほしくない」と断固とした意志と覚悟を持っているあたしの友人たちは、別に特異な人たちではない。 仕事もできて、人に気遣いもできる割と普通の人たちである。 そういう人たちも普通、という世の中になるためのブレイクスルー的作品、ないもんですかね。
あ、あたしは「子供がほしい」という人の気持ちを否定する気はまったくありません。 だから、「子供ほしくない」という気持ちも否定してほしくないな・・・と思うだけなのです(「子供ほしくない」と言えば「なんで?」と当たり前のように聞かれるのに、「子供ほしい」という人に「なんで?」と聞くと、何故なんでと聞かれるの?、みたいな顔をして答えをくれないのはどうしてなのか、とあたしはずっと思っている)。
そういうことを言うと「子供を産めるのは女の人だけなんだから」・「少子化社会が救われない」みたいなことを言われちゃうけど、それにとらわれるのも呪いだと思うのだ。
勿論、何の疑いもなく産んで育てている人たちもいるし、それはそれで素晴らしいこと。
でも「産まない」ことに誇り(?)を持っている人たちもいるのだ。
うーん、これはもう自分で書くしかないのか?
ラベル:国内文学