ふと、18年くらい前に読んだ本のことを思い出す。
でも内容をうっすら思い出しただけで、作者もタイトルも出てこない。
ピアニストが水琴窟に憧れを抱くんだったよね。 確かタイトルに『水』が入ってる・・・そこまでで手がかり終わり。
・・・えっと、同じ著者で天才ヴァイオリニストが主役の連作があったよ! そっちから思い出せば検索できるはず。
しかしそれもまた思い出せないのであった。
あたしの記憶倉庫は連想ゲームで引き出しが開く。
楽器を前にして素晴らしい演奏 → そんな天才をあらわす言葉・・・神の手 → いや、<神の手>だと天才外科医のイメージだから、演奏する間だけ神が降りてくる感じ → 『神宿る手』だ!
こんなにスムーズではありませんが・・・でもその過程で「著者の名前にも“神”が入ってる」ことも思い出す。 ひとつ思い出すとぼろぼろと零れ落ちてくるものです。
あまぞんの<本>カテゴリで『神宿る手』を検索すると・・・著者名は宇神幸男!
そこから、水の付くタイトルを探したのでした(といっても著作数は多くないので名前をクリックすれば1ページですべて表示された)。 正解は、『水のゆくえ』。
図書館にあったので依頼する。 数日待って、連絡が来る。
そのうち廃棄処分されてしまうのでは・・・。
美貌のピアニスト、高階伶子をめぐる物語。
クラシック界にはいろいろ理不尽なことがある、とはうっすら知っていましたが、篠田節子『マエストロ』よりもこっちを先に読んでいたせいか、「あぁ、やっぱりそうなのか」という気持ちになり・・・悲しくなりました。
伶子は美貌かつ薄幸、という絵に描いたような<芸術家>。 彼女を救う存在として文芸評論家が現れますが、彼女が背負った宿命は普通の恋愛感情だけでは跳ね返せず、人間としての存在すべてをかけるぐらいの覚悟が必要。
芸術と人生、それをすべて水になぞらえているのがこの作品の特徴で、それ故に流麗で、流れを止めることはできない。
なにしろ読んだのはだいぶ前なので、「あ、こんなシーンあったっけ」と驚きつつ、印象深い部分はしっかり覚えていた。
なぜこの本を読む気になったかは覚えていないんだけど・・・記憶の中では大事な作品だった。 再読しても、その印象は大きく変わらなかった。 がっかりすることもあるだけに、幸運なほうだったと思う。
この勢いで、『神宿る手』も再読しちゃおうかな!
積読本が山ほどあるのにそんなことを考えてしまう・・・救いようがないのはあたしだ。
ラベル:国内ミステリ