2017年07月23日

越前敏弥トークショー&サイン会に行ってきた!@OSシネマズハーバーランド

 OSシネマズのホームページ欄の<おしらせ>で、ひっそりとその告知を見つけた。

“メアリと魔女の花 原作翻訳者越前敏弥さんトークショー&サイン会”
映画「メアリと魔女の花」の原作「The Little Broomstick」(メアリー・スチュワート作)を翻訳された越前敏弥さんに作品や翻訳にまつわるさまざまなエピソードをお話いただきます。
越前敏弥さんの著書・訳書をご持参の方、または当日会場にて書籍をご購入の方にトークショー終了後、サイン会を予定しております。

  20170723トークショー1.JPG 最近ハーバーの映画館行ってなかったから・・・事前に質問なども公募していたらしい。 ミントの方にもこのポスターぐらい貼っておこうよ!(貼っていたけどあたしが気づかなかったのかな・・・汗)
 あ、行ってみたい!、と思うじゃないですか。 海外ものを読むあたしにとって、翻訳家という存在は大変ありがたく、畏敬の念すら抱く存在です(原著を生かすも殺すも翻訳次第、ということをあたしは古くは福島正実さんに、その後東江一紀さんから学びました)。
 しかも、越前敏弥といえば、現役の翻訳家の中では結構なビッグネーム!
 なのに、
  ○ 事前申し込み不要
  ○ 整理券配布なし
  ○ 当日、時間までに会場に直接お越しください。
 こ、これはどうなの?! あまり人が来ないことを前提にしているの?
 13時半からなんだけど・・・何時に行ったらいいのかしら。 悩んで・・・当日、一時間ぐらい前に到着。

  20170723トークショー2.JPG 会場はこんな感じ。 60人入れる?
 まぁ、やるんなら多分ここだろうなぁ、と思っていた場所にセッティングされており、とりあえず入れないようにテープで囲われている。 すでに立って並んでいる人(!)がいたのであるが、そんなに込んでいる感じはしないなぁ、とあたしは近くの椅子に腰かけて待つ(エレベーター傍ではあるがロビーの延長という位置づけなので、壁沿いにサイコロ椅子&テーブルが並んでいるのだ)。
 で、本を読んでいたら・・・13時頃、係員の人が来てテープを開け、「お待ちの方、どうぞ」と呼び込みを始める。 30分前開場なのね、と記憶に刻む。 念のため今後、同様のイベントがあったときのための参考に。
 「前の方からつめてお座りください」といわれたからつめて座ったけど(あたしは4番目に入場しました)・・・あたしの右隣に来る人がいないんですけど! だ、大丈夫か、人は来るのか!、と多分あたしは主催者なみに心配していたと思う。 時間ぎりぎりには、まぁまぁ人は集まったみたいでよかったです(最前列故、後ろの方の全貌がつかめず)。
 ちなみに、また本を読みつつ待っていたのですが、気がつけば越前敏弥さんご本人がノートPCやマイクのセッティングをしており、スタッフとの打ち合わせもあってなきがごとし(司会進行者もいなく、スタッフ側は越前さんにすべて丸投げ・・・こんな仕事でいいのか、とあたしは冷や汗が出る思い)。 あ、ちなみにあたしは越前さんの著作は何冊も読んでいますが、お顔は知らなくて、今回ポスター見てはじめて知ったのでした。 だから「えっ、ご本人が?!」と狼狽したのですが、多分翻訳塾とか大学の講師とかしてるんだろうな、という手慣れ感をそこに見ました。 越前さんおひとりではなく共訳者の中田有紀さんもいらしてました。

 で、トークショーは『メアリと魔女の花』の予告編をスクリーンで流してから始まり・・・あ、しまった、こっちが思ってた以上にメアリの比重高そう、と感じてもあとの祭り。 だって映画観てないんだもん・・・<翻訳にまつわるさまざまなエピソード>を自分に都合よく拡大解釈してしまった! 実は・・・ジブリ系列の方々がつくる原作ありファンタジー映画は結構原作をていよく利用しているというか、そこまで変えるならオリジナルストーリーにしろ!(原作ではなく原案扱いにしろ!)、と言いたくなるものが多いので・・・なので『メアリ』も正直期待してません(『アリエッティ』でもひどい目に遭ったし)。 『ゲド戦記』は論外としても、そもそも宮崎御大自ら『ハウルと動く城』やらかしてるし、『千と千尋の神隠し』に至っては基本設定丸パクリなのに児童文学の名作『霧のむこうのふしぎな町』を「参考にした」と結構な騒ぎになるまで公言しなかったという経緯もあるし、「やつらが古典ファンタジーを映画化するとロクなことがない」とあたしの中にはイメージが出来上がっています。
 それはともかく、オリジナルの日本版『小さな魔法のほうき』は1970年代に発行され、今では絶版なので今回映画公開に合わせて新訳の依頼があった、という経緯からお話しいただく。 これまで何冊も新訳を手掛けてきて、どれも訳を新しくする必然がある(言葉や言い回しが現代にそぐわない、今とは情報伝達速度が違うから間違った解釈のまま訳されている、等)と思って訳したけれど、『小さな魔法のほうき』に関してはもともとの訳がいいから悩んだ。 ただ、ですます調の文体なので、三人称とはいえメアリ視点で物語は動くので、だ・である調のほうがスピード感が出るしメアリの感覚に近くなる、ということで<だ・である調>を採用。 主人公の名前はほんとはメアリーなんだけど、映画としては日本人に聞き取りやすく「メアリ」にしたいという要望がスタジオポノックからあったので、映画に登場する人物の名前表記は映画に合わせた、そうです。 これまでの翻訳家生活でもここまで映画に寄せて訳したことはない、とおっしゃってました(勿論、物語は原文に忠実)。 かなり特異な新訳状況だったようです(越前さん側がいろいろ問い合わせたので、スタジオポノック側は絵コンテのコピーを送ってきたらしい)。
 そしてびっくりしたのは原作と映画の相違点。 原作ではメアリは“メアリ・スミス”というよくあるありきたりな名前であることがコンプレックスになっているのだけれど、映画では「それでは観客がわかりづらいから」とメアリは赤毛であることがコンプレックスになっていることになってるとか! それって『赤毛のアン』じゃん! で、原作には出てこない“赤毛の魔女”が映画には登場しているらしい・・・そういうところがイタいんですよ。 原著者のメアリー・スチュワートは本名かペンネームかわからないけど、本名だとしたらスコットランド女王と同じ名前であることでからかわれたりしたのかもしれない(もしくは“メアリー・スチュワート”も意外によくある名前とか)。 観客が主に子供だから、と考えているのかもしれないけれど、わかりづらいから変えるのではなく、そこをわかりやすくすればいいんじゃないの? そうやって子供は異文化を受け入れていくんじゃないの? ・・・はぁ、またなんかイメージが固定化される。

 あと印象に残っているのは、あの時代のイギリスの児童文学は一文が長くて、ひとつの文章で一段落ってこともある(10行ぐらいあったりするらしい)。 一般書では絶対しないけど、今回『メアリと魔女の花』はハードカバー・角川文庫・角川つばさ文庫と3パターン出版され、つばさ文庫のほうは子供向けなので(訳文そのものはどれも同じだけど)、長すぎる段落を割ったそうです。 かつ、一部の漢字を平仮名にして総ルビ。 それも、イギリスの古典文学を少しでも幅広い世代に読んでもらいたいから。 そのためには自分のこだわりは捨てる(とは言ってなかったけど)、というのが、もしかしたら彼の仕事が途切れない理由ではないかと感じました。
 あとはメアリの映画の裏話・・・神木くんのアテレコは別撮りで一日で終了したそうだけど、それであのクオリティ、ほんとに彼はうまいねぇ、とか、プロデューサー西村氏の熱量の多さとか(ノンフィクションWで『かぐや姫の物語』制作現場に密着したやつを前に見ていたのですごくよくわかった)、米林監督はすごくシャイで無口とか。
 いくつか質問を用意していたけれど、ここまでメアリの話ばっかりだったら「メアリと全然話が違うんですけど」って言えないよ!、となんだか同調圧力に屈してしまった。 残念だが仕方がない。
 で、サインもいただきました!
 しかしみなさん『メアリと魔女の花』(ハードカバーの人もいた!)を持って並ぶ中、あたしが持ってきたのはこれだ・・・。
  鏡の迷宮.jpeg 鏡の迷宮(集英社文庫6月の新刊)
 どれにするか悩んだのですが(角川文庫の『メアリと魔女の花』は明らかにアニメ絵が表紙なので・・・『思い出のマーニー』のときはそうではなかったのに)、選ぶのは逆に失礼かなと思い、自分の持っている本でいちばん新しいものにした。 でも本屋さんのイベントだったらこんなゆるいことできないよなぁ。
 「メアリじゃなくてすみませーん」と謝ってしまいましたが、「いやいや、まさかこれを持ってきてくれるとはうれしいなぁ」とよろこんでいただけた(ような気がする)。 やはり作者がビッグネームじゃない・映画化などのタイアップがついてない翻訳本はあまり売れていないのだろうか・・・。
 気がつけばあっという間の時間だった。
 たまたま気がついたからよかったけど、うっかりしたらこのイベント、スルーしちゃったんだわ、と思うと情報のアンテナを正しい方向に立ててないとダメだな、と思い知るのであった。
 あ、初めて見た越前敏弥さんの印象は、気さくでさりげなくおしゃれな英文学の教授って感じでした!

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台・演劇・芸術・イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする