2017年07月21日

ライフ/LIFE

 ジェイク・ギレンホールの新作がSFで、しかも真田広之共演だなんてうれしすぎる!、と思っていたのですが・・・日本版ポスターでさえも真田広之は映っていない。 そうか、そういう役か・・・でもいいんだ、アクション俳優出身の彼の素晴らしい身体能力は、無重力を表現するワイヤーアクションで誰よりも美しくしなやかに動くことを可能にしているだろうから。 そして他のキャストたちのお手本になっただろうと思うから。

  ライフP.jpg 人類の夢も未来も砕かれる

 現在、ISS(国際宇宙ステーション)には6人のクルーがいる。  このプロジェクトのキャプテンであるエカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ(オルガ・ディホヴィチナヤ)、ISS473日滞在の世界記録を更新し続ける医師デビッド(ジェイク・ギレンホール)、CDCから来た検疫官ミランダ・ノース(レベッカ・ファーガソン)、航空エンジニアのローリー・アダムス(ライアン・レイノルズ)、システムエンジニアでクルー最年長のベテランであるショウ・ムラカミ(真田広之)、宇宙生物学者ヒュウー・デリー(アリヨン・バカレ)である。
 ある日、火星からサンプルを採取してISSに戻ってきた無人探査船<ピルグリム>は、途中で軌道を外れ、あやうくデブリと化すところだったが、チームワーク抜群の6人の宇宙飛行士たちの連携プレーによって無事回収され、サンプルはラボに回される。
 宇宙生物学者であるヒュウーが分析したところ、サンプルの中から休眠状態と思われる単細胞生物が発見された。 地球以外で初めての“生物”の発見の情報はISSだけでなく世界中を熱狂させる。 細胞を目覚めさせようとするヒュウーたちの努力が実り、細胞は次第に成長して知能を示すようになる。 だが、ある思いもかけぬ事故によって事態は急展開を迎えてしまう・・・という話。
 基本設定だけならば、普通のB級ホラー。 でもそれを一段格上げしてるのは、豪華キャストと圧倒的なリアリティ。
 ジェイク・ギレンホールの名前がいちばん先に出るけど、序盤の彼はむしろ印象薄め。 6人のアンサンブルが大変バランスがよいので、誰が先に死ぬのかまったく予想がつかない。 そして6人のキャラクターのバックグラウンドも描かれすぎず、かといって不足すぎず、彼らの行動や選択の理由づけとしてしっかり機能している。
 説明しすぎないバランスってほんと難しいけど、これは成功していると思う。

  ライフ3.jpg 真田広之が予想以上に超かっこよかった。 宇宙や機械以外で、初めてスクリーンに登場する人物は彼なのだ。 やっぱり動きが綺麗だった(髪を後ろで結ぶのは“サムライ”のイメージなのか)。

 火星由来(?)のその生命体の初期成長過程は、ほぼ粘菌そのままのように見える。 粘菌の生命力(拡大力)の強さを考えれば、それがあくまで美しく見えても、そののちの展開に怖さしか感じない(予告でもう不吉な感じを出しているせいもあるが)。 かといって音楽でおどろおどろしい感じを出すわけでもなく、描写は比較的淡々としているのです。 なので6人の芝居もすごくナチュラルというか・・・宇宙飛行士になる人たちなんだからそれぞれ能力が高いのはわかっているけど、狭い中でずっと一緒にいるからずっと気取っていられるわけもなく、「みなさん、素ですか?」と言いたくなるほどスターオーラを消している。 多分ほぼノーメイクなのではないかしら。

  ライフ4.jpg ライアン・レイノルズが多分このメンバーの中では「見たことある顔」、スターオーラがいちばん出ているはずの人なのだが・・・最初すぐ気付かなかったよ(まぁ、あたし自身がジェイクと真田広之出てるってことしかわかっていなかったこともあるけど)。 『デッドプール』もだし、アクションには多少慣れているかと思ったが、エンドロールではキャストそれぞれに一人ずつワイヤーアクションのサポートがついていたと書いてあった。 が、真田広之にはサポートはついていなかった! むしろ彼が指導できる側的な?

 粘菌状の細胞は、さらに成長しクリオネのようになる(地球で名前を公募し、カルビンと命名)。 「うわー、頭部っぽいところががばっと開いて口になるのでは・・・」と誰もが思ってしまう不吉なルックス。 けれどヒュウーはカルビンをまるでわが子のようにいとおしみ、夢中になりすぎてしまう。 カルビンも怖いがあなたも怖いよ、と思ってしまうのだが、彼の生い立ちというかそういうものを考えればのめり込む気持ちもわからないでもなく。
 いや、そもそも「名前をつける」ということが実は大変危険である、ということをこの作品はとてもよく教えてくれる。
 名前をつけたら情がわく、まるでペットのように思ってしまう。 実際、地球上でペットを飼っている人がその動物の気持ちを100%理解しているかなんてわかるはずもないのに、言葉の通じる人間同士ですら誤解はたえないのに、まして相手は初めて遭遇する<異種>である。 こっちの気持ちを理解してくれるわけがないという前提で接しなければならないのに、相手が小さいから(のちのちどんどん大きくなりますが)・自分が育てたような気がするから、と人間の尺で考えてしまうことが大失敗をもたらす。
 これもまた<想定外の悲劇>ということになってしまうのか?

  ライフ1.jpg ISS内の機能不全に相まって、画面もだんだんダーク調に。
 人間側に悪意はなかったのだが生命の危機を感じてしまった<カルビン>は、ここにいる者すべてを自分の敵と認識、クリオネからひらひらとしたヒレがヒトデ状に分布する形に進化してクルーを襲い始め、ISSにある自分の成長に必要なものをむさぼり食べる。 そして更にカラダを巨大化させ、変態していく。 その過程も荒唐無稽ではなくて、科学的リアリティに裏付けされているのよねぇ。 勿論、封じ込めようとする人間側、逃げて自分が有利になる位置を確保しようとするカルビン側の攻防のほうがメインなので、そんなことは気にせずハラハラドキドキできるんだけど。
 そして残ったクルーは決断しなければならなくなる。 カルビンを地球に持ち込んではいけないと。 宇宙の果てにはじき飛ばさなければならないと。
 これは・・・9月公開の『エイリアン:コヴェナント』よりずっと『エイリアン』じゃないだろうか!
 ジェイク・ギレンホールの憂い顔には誰も反対できないしね。

  ライフ2.jpg 間近に“絶望”を見ると、人はこんな顔をするのだろうか。
 そして訪れるエンディングは、美しい映像と明るい音楽で観客を彼同様絶望に叩きこむ。
 『LIFE』というありがち過ぎるタイトル(同じタイトルの映画あるし、しかもBBCearthのドキュメンタリーみたいだ)には、最初「もうちょっとひねりはないのかいな」と思っていたんだけれど、もうこれ以外のタイトルないな!、と思わされました。
 というか外国語のずるいところは、ひとつの単語に複数の意味を持たせているところ。 “life”を日本語に訳すなら“生活”・“人生”・“生命”・“いのち”・・・といろいろ浮かぶけど、この映画のこのタイトルには全部の意味が込められているのだから! そりゃ、邦題もカタカナでそのまま『ライフ』にするしかないよな、と納得。
 とはいえ、そう思えたのは帰り道のこと。 こういう映画自体は観慣れているから本編中は普通だったんだけど、ラストシーンのあと暗転し、タイトルが差し込まれて無邪気な明るい曲が流れ・・・そのあとずんずん来る暗い音楽に変わってから、あたしは心臓がバクバクいいはじめ・・・序盤から積み重ねられてきたこの映画の言いたいことに一気に打ちのめされていたのだった。
 あぁ、なんておそろしい。 なんて映画を観せられちゃったんだ!
 エイリアンものとしては正統派ではあるんだけど・・・『メッセージ』とは正反対で、ほんとSFって素晴らしいジャンルだわ、と思う。

 それにしても・・・公開に合わせて真田広之が来日、いろんなインタビュー受けてたけど・・・あたしも全部読んだわけではないんだけど、インタビューアー(当然日本人だ)、彼がアクションスターだったこと知らないんじゃないの?、と感じられるものがいくつか。
 これはあたしがトシをとったと嘆くべきなのか、インタビューアーが勉強不足なのを怒ればいいのかどっちだろう。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする