2017年07月07日

砕かれた少女/カリン・スローター

 『三連の殺意』に続く、GBI特別捜査官ウィル・トレントシリーズ第二弾。
 実はシリーズ三作目『ハンティング』を図書館に予約しているのだが、近々きそうなのだ。 予約は続いているだろうから延長はできまい。 なのでその前に、二作目を読んでおきたかった(なにしろ日本での刊行がシリーズの順番通りじゃないもんでね。 版元も違うし)。
 やはりすでに一作目を読んでいるせいか、600ページ越えだけどそれほど長くは感じなかった。 三日間の出来事だから、ということもあるかもしれないが。

  砕かれた少女.jpg やっぱりこの表紙、なんとかならなかったのか・・・。

 アトランタの高級住宅街で、恐ろしい事件が起こる。 上司アマンダと共に現場に行くことになったウィル・トレントだったが、彼はしばらく前にアトランタ警察の悪徳警官を徹底的に調べる捜査をし、結果的に数名を起訴と辞職に追い込むことになり、アトランタ警察の刑事から憎まれていた。 そんな中に乗り込むわけだからウィルは地元警察の協力をほぼ得られないが、上からの命令でフェイス・ミッチェルという女性刑事がウィルのサポートにつくことになる。 フェイスもはじめはウィルに反感を持っていたが、まったく捜査官らしくないウィルに興味を覚えていく。
 そして残忍な殺人事件に見えた現場は、実は誘拐事件を隠していた。 連れ去られた18歳のエマはどうしているのか。 誰もが最悪の状況を想定する中、ウィルだけはエマが生きていると信じて懸命に捜査を続ける・・・という話。
 『三連の殺意』は視点のずらしによるどんでん返しと構成が見事だったけれど、これはアクロバット度は少し控えめ。 ウィル視点・もしくはフェイス視点でほとんどの話が進んでいき、その分キャラクターが掘り下げられるのでとても<シリーズもの>らしい流れになったような気がする。
 ウィルの過去が更に明らかになり、そのかわりアマンダとの関係においては謎が増え・・・シリーズの先へ興味をもたせる展開に。
 更に事件の方も手抜かりはなく、ウィルのディスレクシア(失読症・難読症)が有効に使われることになる(若干、回り道もしましたが)。
 こういうタイプの犯人、「立証できる証拠がない」とかで野放しになったりしてるケース、現実に多いんだろうなぁと推測されて、大変イヤな気分になります。
 “砕かれた少女”はエマのことだけではなく、暴力の被害に遭った未成年者すべてのこと(それは肉体的暴力だけでなく精神的支配も含む)。 ウィルもまたその中の一人で、だからウィルは今も人との距離感がよくわからない。 彼のあやうさが、この先もとても気になる。
 フェイスが新しいパートナーになったことはきっとウィルにとってプラスに働いてくれるだろう・・・そう願わずにはいられない。
 今回出番の少なかったアンジー(ウィルの幼馴染)が、次はどんなトラブルを引き起こすのだろうと思うとおそろしい(出番は少なくとも、この作品でも不穏な空気は発してるからさ)。

 ただ、94ページに致命的な誤植がある・・・その場面にいない人が主語として登場してきたのは目を疑った。 こういうのがあると(どんなにいい作品の翻訳権を獲得しようとも)レーベルに対する信頼感が薄れるから、気をつけていただきたいですね。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする