2017年07月04日

22年目の告白 ―私が殺人犯です―

 祝・入江悠監督、完全復活! おめでとう!!、と上映終了後にバンザイをしたくなった。
 身贔屓が入っているかもしれませんが・・・いまのところ、邦画、ベストワンです。
 ネタ元は韓国映画『殺人の告白』ですが、完全に別物。 日本でなければならない物語になっているし、ミステリとしてもフェアに成立している。 『ジョーカー・ゲーム』でがっかりさせられたけど『太陽』で盛り返し、満を持してのメジャー復活。
 もうこれは大成功としか言えないのではないでしょうか。 興行成績も、ついてきてるし。

  22年目の告白P.jpg すべての国民が、この男に狂わされる。

 1995年、5件の連続殺人事件が起こった。 当時、事件を追っていた刑事のひとり、牧村航(伊藤英明)は待ち伏せて犯人をもう一歩のところで取り押さえるところだったが、逆に犯人に切りつけられて大怪我を追う。 そのことで犯人の標的となった牧村は、尊敬する先輩刑事・滝さん(平田満)を殺されてしまう。 刑事が殺されるという事態に警察は総力を挙げて事件を追うが、ついに事件は時効を迎えてしまう。
 あれ以来、人が変わったような牧村は時効を迎えても事件のことは忘れてはいなかった。 それは被害者の関係者たちも同様で。
 そんなある日、曾根崎雅人(藤原竜也)と名乗る男が22年前の一連の事件についてまとめた手記『私が殺人犯です』を発表し、世間に顔をさらすという・・・という話。
 まず、冒頭のニュースの音声にどきりとする。 それは阪神淡路大震災のときのニュースだった。 今は神戸市民であるが、当時、あたしは北東北に住んでおり、でもあのニュースの衝撃は鮮明に覚えている。 映画館の中で、あの地震を経験し、思い出して具合の悪くなった人はいないだろうかと本気で心配になるほどの臨場感だった(実際に経験した人によると、「ニュースなんか聞いてる余裕なかったよ」ということだったので直接聞いている人は当事者ではない可能性が高いようである)。 「あ、『22年目の』というタイトルにはそういう意味もあるのか、と納得。 そして22年間を駆け足で走るオープニングに、大事な伏線もミスリードもほぼ込められているのだ!
 きっかけはニュース音声のせいかもしれないけれど、そのあと、ずっとあたしはドキドキしていた。
 <映画で観る・観せるミステリ>の覚悟が確かに感じられたから。

  22年目の告白2.jpg ついに姿を現す“犯人”。
 観目麗しい外見も相まって、「ソネさま」と呼ばれファンがつく。

 時効が成立してしまっている以上(現在、殺人などの重大事件には時効はないが、法律成立前に遡って適用できないため、日本の犯罪史上“最後の時効が成立した事件”となっている)、牧村はじめ警察は手が出せない。 むしろ、被害者の遺族や関係者が復讐に動くことから守ってやらなければいけないという理不尽さを抱える。
 牧村の苦悩をよそに、妻を殺された医師の山縣(岩松了)のもとに謝罪に行くなど、やりたい放題の曽根崎。 マスコミは群がり、彼は時代の寵児になっていく。
 そんなとき、当時この事件を追いかけていたジャーナリストの仙堂(仲村トオル)は、「法で裁けないのなら良心で裁きましょう」と自らがホストを務めるニュース番組に曽根崎に出演依頼。 曽根崎は「牧村刑事も出演するなら」と承諾する。
 もう、このテレビ討論のシーンはとても白熱。 真実へとつながるヒントが沢山こぼれるので、一言も聞き逃してはならない。
 緊張感あふれる演出、それに応える俳優たち、どれをとっても素晴らしい。

  22年目の告白4.jpg 挑発的なひそひそ話。
 藤原竜也がまたすごいイヤなヤツとして登場。 ドラマ『リバース』の愛すべきおどおどくん・深瀬の面影はかけらもなく、完全に<藤原竜也劇場>でした。 いつもより少し声がかすれている感じがしたけれど、それすらにも意味がある! 藤原竜也は入江監督と以前仕事したことがあるので、「お互いちょっとわかっている感」がかなりプラスの方向に働いた気がする。 たとえそうじゃなくても、曽根崎役は藤原竜也以外考えられないよ!、となっているので、ほんとすごい役者だと改めて実感する。
 脇の方々も適材適所というか(先輩刑事が平田満なんてぴったりだよね!)、安心して観ていられる。
 だから<藤原竜也×伊藤英明>という異素材ミックスが楽しめる。

  22年目の告白1.jpg この短髪具合がちょっと西島さんぽいのは、ハードボイルドの雛型? 22年前はボサボサ髪でした。
 初共演だそうですが、確かに系統違うよね・・・でもそれが、この映画ではよかったです。
 長年のミステリ読みとしては途中でネタ割れしてしまうのですが、それでも「この続きが気になる、続きが観たい!」と一切集中が途切れることはない。 「あぁ、それは!」とか「それそのままにしちゃダメだって!」とつい声をかけてしまいたくなるほどに。
 これまで、そんなに伊藤英明に惹かれたことはそんなになかったんだけど(『悪の教典』の悪ノリ振りはちょっと好きでしたが、でもあれは三池監督のフェティッシュな部分のせいかと)、今作では野暮ったさを引きずる昔堅気の刑事がはまってました。
 ミステリなので多くを語れないのが残念ですが・・・残虐シーンはそんなにないので、是非多くの人に直接観てほしい。
 観た人は、入江監督のすごさに気づくと思う! ← でも次回作へのハードル、あがっちゃったかな。

  22年目の告白3.jpg サイン会って。
 なんでそんなに人が集まるのか。 いくら事件のことを知らない世代が中心といっても。

 だからといって完璧な作品、というわけではない。ツッコミどころは実は多々あって(22年前、曽根崎はいくつだったのかと誰も言及しないとか)、しかしそんなマイナス要因を吹き飛ばすパワーがある、ということなのです。
 “無差別凶悪殺人”や“シリアルキラー”といったものに無責任に興味を持つ事件に無関係の一般市民に対する問題提起(あなたはどこでその好奇心に線を引きますか?、という問いかけ)も描きつつ、説教くさくもなく押し付けがましくもなくしっかりエンタメに昇華できているところ。 そのさじ加減が絶妙でした。
 だからこの映画のラストシーンを「後味悪い」と感じるか、「むしろ爽快だ」と感じるかも人それぞれで、どちらが正しいわけではなくて「なんでそう思ったのか」観客に話し合わせることができる。 あたしが観た回ではお客の入りが結構多くて、しかも高校生とか若い人のグループが多かったから、彼らがこの映画を観てどう感じるのかどう語り合うのか、すごく聞いてみたいよ。
 「あー、面白かった(感動した)」のあと、何も残らない映画もいいけど、何日も引きずるようなそんな映画に出会ってほしい。
 そして日本映画でそれを成し遂げた。 入江監督、やっぱりすごい!
 でもこの映画はワーナーブラザーズ配給だという・・・日本アカデミー賞とかにはガン無視されるかもしれませんが、あたしはこの映画を評価する!

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 05:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする