2017年06月19日

メッセージ/ARRIVAL

 ずっと観たかった! ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。 原作越えとの評判も高いこの映画、いくらハードルを上げても大丈夫な気がしていた。 だって、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だもの! ← どんだけファンなのか・・・。

  メッセージP.jpg ある日突然、巨大飛行体が地球に。 その目的は不明――

 言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は娘を病で失った記憶にさいなまれ、日々をただ義務のように生きていた。
 ある日、世界各地に謎の飛行物体が突然出現したというニュースが舞い込む。 地球上の12ヶ所に同時に現れた“それ”は、どうやら宇宙からの飛来物のようだった。 以前、軍の通訳をつとめたことのあるルイーズはその縁で、ウェーバー大佐(フォレスト・ウィテカー)の訪問を受ける。 異性人との意思疎通は可能かどうか、いや、彼らからのメッセージを解読し、こちらからも正しいメッセージを送らなければならない。 同じく召喚された理論物理学者イアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)とアメリカとして協力して各国代表とともに研究を進める。 争いを避けるために。

  メッセージ1.jpg エイミー・アダムス、ちょっと疲れた感じがナチュラルでよかった。

 突然、謎の飛行物体が現れ・・・というくだりが伝わっていくなんとも言えない静けさがやけにリアルだった。 世界で12ヶ所ということは、“それ”を直接見ることができない人たちのほうが多いわけで、テレビのニュースやネットの画像が出回ることでしか現実として認識できない(ちなみに日本では北海道に出現してます)。 でもあわてる人たちはあわてていて、その混乱をルイーズが働いている大学キャンパスの駐車場での車の追突だけで表現してしまうスマートさ。 学者というのはだいたい多少浮世離れしているものですが、この映画の目的はそっちを描くことじゃないから、という宣言のようで潔い。

  メッセージ6.jpeg 謎の物体、日本では「ばかうけがモデルです」と監督に言わせたりして別方向に盛り上がりを見せましたが、本編ではなかなか全貌が見えないのであたしはまるで『ピレネの城』だと思いました。 実際は、実在する小惑星がモデルとのこと。 四角いとモノリスになっちゃうもんね。

 アメリカ国土に出現した物体のために、軍が中心となってあらゆるチームが招聘されていた。 ルイーズたちはその中のひとつ、そして最重要な役割を担っている。 言語そのものの成り立ちもわからない者同士がコンタクトすることは可能なのか(そもそも、相手にこちらが言語と認識できるコミュニケーション手段を持っているかどうかもわからない)。 そんなトライアル&エラーがすごく面白い! 知的興奮とはまさにこのことですかね、ぐらいの感じで観ているこっちもドキドキワクワクです。

  メッセージ4.jpg 音声でのやりとりは難しいと判断、文字でいくことにした。 その方法ならば表意文字を使う言語のほうが有利そうだが・・・。

 謎の物体の内部に入っていく過程、まるで洞窟のようなそのビジュアル。 その奥に磨りガラスのようなものがあって、その向こうに異星人たちがいる!、というファーストコンタクトシーンは更にドキドキ。 うっすら見える異星人たちの姿はまるで何千年も生きている樹木のようであり、象のようでもあり、複数の脚(手?)が動く様子はタコのようでもあり・・・結局人間は、未知のものに対して自分が知っている何かとどう似ているかということでしか判断できない、という固定観念の強さを痛感させられました。
 “ヘプタポッド”とルイーズとイアンによって名付けられた彼らに対し、研究対象以上の感情移入で向かっていくルイーズは傍から見たらとても危なっかしく思えたのでしょうけど(イアンなんて途中から完全にルイーズのサポートにまわってるし、大佐はちょっとやばいかなと思ってるし、でも結果は出してるから)、ルイーズ目線で映画は進むので、そののめり込み方、わかる!、と思ってしまいました。
 そう、あたしはずっとドキドキしていたのです。

  メッセージ5.jpg ヘプタポッドからの答え。 「英語では伝えるのに2・3分かかる内容を、彼らはこの円のような文字で数秒で答えてくる」とルイーズは感嘆。 ちょっと墨で書いたみたいなビジュアルにもワクワク。

 「使う言語が違えば思考も違う」というのがルイーズのもともとの主張。 特に日本語は世界でも特殊な言語だと自分でも思うので・・・英語で話すときは日本語で考えていたら追いつかないし(それはあたしの英語力の乏しいせい)、日本語が微妙な外国人とメールのやりとりをするときは簡潔明瞭を心がける(謙譲語など使うのはもってのほか、せいぜい丁寧語にとどめるべし、回りくどい表現をしない、とか)。 そうすると思考が直球になる。 何か国語をも話す人は、使う言語によってちょっと性格も変わってきたりするんじゃないだろうか。
 だから彼らの言語を理解するにつれ、ルイーズが彼ら寄りの思考になっていくのはよくわかるし、彼らもまたそれを望んでいるのだと。

 テッド・チャンの本『あなたの人生の物語』(短編集で、その中のひとつが映画の原作である『あなたの人生の物語』)を読んだのはいつのことだったか。 それを映画にすると聞いたときには「すごい無茶するのね!」と思ったものだが・・・まさか原作を越えるものが出来上がるとは。 そして難解気味の原作を更に深く掘り込み、より分かりやすく提示するとは。
 映像の力ってすごいなぁ!
 それは、文章や言葉よりも表意文字ひとつのほうが情報量が多いという映画の内容そのものにも繋がっている。
 あぁ、SFって素晴らしい、と久し振りに思えた映画。

  メッセージ2.jpg だからどうか、これまで見えたものとは違うふたりのしあわせを願わずにはいられない。

 湖畔の家、さざめく水面、風に揺れる草木、流れていく雲、色を変えていく空。
 もし、時間の流れが一方向ではなかったら。 未来がわかっていてもそれでもその道を選ぶのか。
 つまりはそういう話なのですが・・・胸打たれました。 あたしにはルイーズと同じことができるかどうかわからないけど、でも同じ状況にならないと決断はできない。 それはもう想像や共感の範疇ではないから。
 オープニングと同じ音楽がエンディングにも流れ、更に観客は感動の追い打ちをかけられました。
 原作のタイトルは“A Story Of Your Life”。 映画の原題は“ARRIVAL”、そして邦題は『メッセージ』
 この違いもまた、言語とその文化の違いなのだと納得するのでした。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする