2017年06月05日

BLAM!/ブラム

 『君の名は。』『この世界の片隅で』のおかげで、「昔はそこそこ見てたんですけどねー、最近のアニメはさっぱりわかりませんのよ(特に萌え系入ってからは遠ざかる一方でして)」のオールドアニメファンとしては「大人(この場合、おじさん・おばさん年齢を指す)も一人でアニメ観に行っていいよね!」と免罪符をもらったような気になりまして・・・予告編で面白そうだったこれにチャレンジしてみることに。
 でもシネ・リーブル神戸でアニメを上映すると、客層がいきなり違ったり人が多すぎたりとひるむ要素いっぱいだったんですよ・・・でも今回は、比較的大丈夫でした(ということは、マニアはいないのか?!)。
 長らく映像化不可能と言われた原作、とのことでしたがあたしは知らず・・・今回、映画化のおかげで新装版の1巻が電子書籍無料になっていたので読んでみた。 アフタヌーンに連載してたんですね、あたしはモーニング派だったから知らなかったのか(でも20年前の作品ということで、その頃モーニングをがっちり読んでいたはずなので姉妹誌の宣伝ページだって見ていたはずなのに)。
 そんなわけで今頃原作を読み・・・全然意味がわからなかった。 原作1巻を読み終える頃、ようやく世界観がわかりかけたぐらいだったのだけれど・・・この映画はオープニングのナレーションで世界観をしっかり説明してくれました。
 なので原作未読でも十分楽しめる。 むしろこれを観てから原作に入るほうがわかりやすいと思う。

  ブラムP.jpg 生き延びろ―――。

 遥か遠い過去になにかが蔓延・感染し、人類はテクノロジーから切り離され、都市は自らの意志により無限に増殖しはじめた。 そして都市は人類を違法居住者と認識し、見つけ次第攻撃・抹殺を図る指令が出される。 どうにか残された人類は防衛システム“セーフガード”の影におびえつつ、点在して日々の暮らしをどうにか守っていた。
 そんな集落のひとつ、<電基漁師>たちの村も長らく安定を保っていたが“セーフガード”の脅威が迫ってきたことと食糧不足で追い込まれつつあった。 少女・づる(雨宮天)は、村を救おうと仲間を募り、食糧を求める旅に出るが、あっという間に<監視塔>に見つかり、“セーフガード”の一群に襲われる。 仲間たちが次々に襲われ、追いつめられたときに現れたのは、“この世界を正常化する鍵”であるらしい<ネット端末遺伝子>を求める探索者・霧亥(キリイ)であった・・・という話。

  ブラム2.jpg とりあえず、右目に光が二個あるのがコワいんですけど!
 で、何故か右の下の方が小さい。 彼女らがかぶるヘルメットも同じ構造をしているので、かつての遺物なのだろうなぁと推測されます。
 あ、映像はすごくきれい。 でもCGや3Dポリゴン使ってます!感は薄くて、セル画アニメのタッチを要所に残しているので、「最近のアニメはわかんないよ!」な方々にも抵抗ないかと。 少なくともあたしはすんなりその世界に入れました。 実力ある声優を集めたのもよかったです(といってもあたしはなんとなくしか知らない人が多かったですが、萌え声とかに特化してなくてよかったです)。
 最近はアニメ専業っぽい声優さんも外画(海外ドラマや映画の吹替え)に出たりしているので、うまい人はちゃんと使い分けられるというか、それだけ場数を多く踏むことになるので、アニメであってもナチュラル演技っぽく聞こえる技術が培われる感じが。 海外ドラマでもまわりがベテランの中(外画中心に活動する方は基本、舞台俳優さんが多いからか)、「海外ドラマ初めてです」という声優さんはいかにアニメのキャリアがすごくても微妙に違和感があるんだけれど、シーズン終わりぐらいには合わせてくるのでさすがだなと思います(今、『シカゴメッド』という医療ドラマに霧亥役の櫻井孝宏さんがメインで出てますけど、まだ話数一ケタなので、ちょっと違和感あり。 『虐殺器官』のジョン・ポール役ではそんなことはなかったので、やっぱり慣れの問題でしょう)。

  ブラム1.jpg 何故あなたはそんな強力な武器を持っているのですか(勿論、正解は提示されないが)。
 キリイさん、謎です。 ほとんど喋らない、喋ってもそこにはほぼ感情がこもっていない(なのに櫻井孝宏をあてるということはどういうことか)。 原作のイメージよりもはるかにキリイは人間離れしている。 彼が求めるのはネット端末遺伝子だけで、彼女らを助けたという意識もなく、誰も知らないならとその場を立ち去ろうとする。 ネット端末遺伝子って・・・未来は生体サイボーグ中心の世界なの? それともナノテクによるなんらかの遺伝子操作?、とあたしの頭の中はぐるぐるしますが、勿論正解が提示されることはなく。
 ずるは「自分は知らないけど、もしかしたら村にいる大人たちなら知っているかも」とキリイを説得、一緒に村に戻ることに。
 無限に増殖する都市により、キリイは700階層下からやってきたらしきことを言うけれど、そんな下の世界のことは村の誰も想像できないのだった。

  ブラム3.jpg 意外にずる、巨乳系美少女であった。
 なんというか・・・、<サイバーパンク・時代劇>とでも申しましょうか。
 かつては高い技術で都市を支配していたはずの人間たちも、切り離されて以降は自分たちでモノをつくることができず、時間とともに「あるモノを使う」ことしかできなくなっていく(まぁ、それは現代に生きる人も同じですが。 マッチを擦って火を起こせても、マッチそのものは専門知識がないとつくれないように)。
 それでもこの村はおやっさん(山路和弘)を中心にまとまりがある。 彼らは<電基漁師>と呼ばれる職業(?)で、ライフルから矢が飛び出してくるような武器を使って狩りをする。 そのときの防御服がちょっと武士の鎧を思わせるデザインで・・・旅人を客人として歓待する、という風習(?)も含め、文化レベルも時代劇っぽいのです。 ずるが密かにキリイに想いを寄せる、というあたりも。

  ブラム5.jpg <電基漁師>たちの村。
 世界は多重階層に覆われている。 何故ここだけ“セーフガード”に見つからずにいられるのかは、ある秘密が隠されています。
 もうここまできたら太陽の光なんてものは存在しないも同然。
 <科学者>の生き残り・シボ(花澤香菜)との出会いもあれど・・・キリイはたまたま通りかかって、そしてまた去っていく。 そういうところも『七人の侍』的な(もしくは『シェーン』的な)ものを感じるのですよね。 伝統的な時代劇・西部劇チックというか。
 その中で<ネット端末遺伝子>をめぐる攻防(?)は、どこか『AKIRA』っぽくもあり『ハーモニー』っぽくもあり、『攻殻機動隊』っぽくもあり・・・勿論まったく同じではないんだけれど、ちょっと思い出してしまうのはそういうアニメ体験が少ないからですかね。 ディストピアな階層都市というあたりは<サイロ三部作>にも通じるものが。

  ブラム4.jpg おやっさんの安定感が素晴らしい。 さすが山路さん!
 改めて考えると・・・これは原作のエピソードをひとつ膨らませたものなのか、それとも同じ世界観のもと新たにつくられたエピソードなのかまったく区別がつかないんだけど(なにしろ原作を全部読んでいないので)、でも原作者・弐瓶勉氏が構成にかなり関わっているようなので
、原作通りではないとしてもアップデートされた世界観は共有されているはず。
 連載当時から「映像化不可能」と言われていたそうなので、たとえ完結していようとも全体の流れはぶった切り、ひとつのエピソードでまとめたのは正解だったと思う。 なにより、初心者にもわかりやすいですし。
 ちなみに劇場公開は2週間限定、それ以外はNetflixで配信、という形態をとってて、上映館がない地域の人でも観られるし、繰り返し観たい人もそっちを利用できるというのはマニアックなファンが存在しそうな作品に対しては有効な手段じゃないかと思う。 製作費が集めにくい作品も、相互乗り入れで資金が確保できるならば。 なんだかんだ言っても映画館で観たい人間はある程度存在するし(スクリーンの大きさ・音響等でのアドバンテージはいかんともしがたい)、ネットで十分と思う人もいるだろうし。 紙の書籍と電子書籍が敵ではないように、映画館での上映とネット配信、そんな配給の仕方もまた敵同士ではないはずで。
 視聴者(?)としては、いい作品が観られればそれでいいので、これがいい例として共存しあってくれればな、と思います。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする