2017年05月23日

スプリット/SPLIT

 M・ナイト・シャマラン完全復活!、との噂のこちら。 長年のファンとしても見届けなければいかんでしょ。 マカヴォイくんも好きだしね!

  スプリットP.jpg 誘拐された女子高生3人VS誘拐した男23人格
    恐怖は<分裂・スプリット>する

 高校のクラスメイト、クレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の誕生パーティーに招待されたケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)だが、実はクラスのはぐれ者で「無視したらいじめてると思われるから」とお義理で招かれたにすぎず、そのパーティーでも親しく話す相手などいない。 パーティーがお開きとなり、クレアの父がクレアの親友マルシア(ジェシカ・スーラ)とともに車で家まで送っていくよ、ということになるのだが・・・気づけばその車に乗り込んできたのは見知らぬ男(ジェームズ・マカヴォイ)で、女子高生三人が事態を把握する前にクロロホルムらしきもので意識を奪われ、目を覚ました三人は拉致され、いずことも知れない場所に閉じ込められたことに気づく・・・という話。
 クレアのお父さん、受難、のシーンがかなり省略され、でも詳細が観客には想像できてしまう流れ、うまいです。 静かであるからこそリアリティがあるというか、突然現れた男に「車、間違えてますよ」と言っちゃうクレアも能天気には見えない。 普通、そんなリアクションになっちゃうよね、と妙に納得。
 とはいえ・・・誘拐犯がいわゆる多重人格者(正確には解離性同一性障害)だというのはポスターにも書いちゃってるからネタバレにはならないんだろうか・・・「え、この人、なんかおかしい」と彼女たちが気づく流れも結構早いので別にいいのかな。

  スプリット2.jpg 誘拐したのは潔癖症の男。
 しかしそれよりも違和感を放つのが、ケイシーの落ち着きぶりというか冷静さである。 パニックになっちゃうクレアとマルシア(きっとこっちが普通の反応)にぼそっとアドバイスしたり。 彼が潔癖症だと瞬時に見抜いたり。 むしろ「ケイシーのほうが何者?」と思わされてしまう。 多分これもまたシャマランの手口なんだろうなぁ、と思いつつ。
 そして次々に人格が入れ替わるさまを、服装のチェンジだけで演じ分けるマカヴォイくん、さすがです。

  スプリット4.jpg かつらとかなしでも、これだけで十分女性だとわかるという・・・。 ある意味、スキンヘッドは無敵なのか? 声の調子や喋り方は変わりますが。

 女子高生たちがどうにか話の通じそうな人格を探り当てようと試行錯誤するのと並行して、“彼”は ドクター・フレッチャー(ベティ・バックリー)のもとに通って治療を受けている場面も挿入され。 『24人のビリー・ミリガン』がモトネタというか、参考にされているのかな、と感じた。 その人格が表に出る(肉体を使える立場にある)ことを「スポットに立つ」みたいな表現してたし。 となれば複数の人格たちは自分以外の存在を知っている場合も多く、教師役もいるはず。 何も知らないのはもともとの人格であるご本人だけ(強度のトラウマ故、意識下層にもぐりこんでしまっている可能性大)、という可能性は高そうだ。 ドクター・フレッチャーはダニエル・キイス的な立ち位置で“彼”に接している気がする(学会での発表内容はもっと踏み込んでてさらに過激ではあるが)。 読んだのだいぶ前なのに、意外に覚えているなぁと驚いたけど、それだけ強烈な内容だったからだろう。 逆に、解離性同一性障害についてあまり知識がない人がこの映画を見たらどう感じるんだろう。 解離性同一性障害を認めないという根強い一派もいらっしゃるみたいですし・・・(「理屈に合わない」という感覚もわかりますしね)。
 と、ホラー映画にも関わらず真面目に精神医学についても考えてしまった。

  スプリット3.jpg 9歳の少年を味方につけることにしたケイシー。
 とりあえずここから出なければ話にならない、と女子たちはがんばりますが・・・今話している相手が9歳の少年でも、次の瞬間誰が出てくるかわからない。 もしかしたら別の誰かが少年の振りをしているのかもしれないし、とか考えちゃうとハラハラ感倍増!
 やはりこういうのこそ、シャマランの真骨頂なのではないかと思ったり。
 ただ、登場する人格たち(さすがに23人全員は出てこない)の一部が熱望する<24番目の人格>の登場には・・・やっちまった感あり。 そうじゃない表現方法はなかったのか? あんぐり、と口をあけるしかなかったですよ。 後半では『アンブレイカブル』を連想させるシーンもあって、「セルフパロディとかやるのはまだ早いんじゃないの」と思っちゃったし・・・ほんとに「完全復活」なのか心配になってきたじゃないか(ちなみに『アンブレイカブル』は大成功&大評判だった『シックス・センス』の次の作品だったため非常に期待され、それ故に「期待はずれ」とかなり叩かれたんですが・・・あたしは当時から好きだったのです。 悪役の悲哀を正面から描いていたところとか。 あの頃、アメコミ映画がこんなにも主流になるなんて誰も思っていなかった時代)。
 それはともかく、女子高生それぞれが別の部屋に閉じ込められ、それぞれが孤軍奮闘する様は、地味ながら的確なカメラアングルとともにハラハラドキドキです(針金ハンガー一本でここまでドキドキさせられたのは久し振り)。

  スプリット5.jpg そして、ケイシーが何故冷静でいられたのかわかった瞬間・・・「そう来たか!」と思いました。
 ケイシーを演じるアニャ・テイラー=ジョイという若き女優の今後はすごい期待できるぞ!、と確信できるような凄み。
 あたしにとってはそれで十分「どんでん返し」の意味はあったと思えたのですが・・・。
 恐るべきラストシーンで、全然違う意味で「はいっ?!」となりました。
 複数の人格を見事に演じ分けたマカヴォイくんの素晴らしい演技力すらぶっ飛んだ。
 「マジですか?!」と心の中で叫んだよ、あたし。 エンドロールもそのことで頭がいっぱいになっちゃった。
 そしてエンドロール終了後・・・明かりがつくはずなのにスクリーンに映し出されたのは<急告>という日本語テロップ。
 「――えっ!」、と声が出そうでしたよ。
 マジか・・・これはシャマランのオールドファンへの贈り物ではあるけれど、『スプリット』自体を打ち消しかねない危険を背負っている。 まして知らない人にとっては「なんのこっちゃ」だろうし。
 2019年公開予定だという新作を待つほかない。

  スプリットP海外版.jpg 勢いで、パンフを買ってしまいました。
 表紙はアメリカ版ポスターと同じ仕様のようです。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする