2017年05月01日

産む、産まない、産めない/甘糟りり子

 てっきり筆者をエッセイストだと思っていて、「おぉ、全女性に対して煽情的なタイトル!」とつい手に取ったが・・・小説だった。
 エッセイだけじゃなく小説も書いていたんですね、すみません。
 帯には<妊娠と出産をめぐる「心の葛藤と選択」を描いた8つの物語>とあり、作中人物の言葉から「出産が女の人生のすべてとは考えないようにしませんか?」という台詞が引用されている。
 いや、女の人が全員、「子どもを産まなきゃ!」という呪縛にとりつかれているわけじゃないんだけど・・・。

  産む産まない産めない.jpg まぁ、この表紙で小説と気づいてもよかった。
 連作短編、といってもいいのでは。 各短編の主人公は別だが、同じ人が登場したりして、読者だけがわかる仕掛けもある。
 ちなみに、引用されている台詞はレディースクリニックの医師によるもの。
 あっさりと読めてしまったのだが・・・正直、既視感満載というか、「これ、いつの時代?」という感覚が拭えない。
 まぁ、それだけそういう女性たちをめぐる環境が変化していない、ということなのかもしれないけれど・・・あまりに古くないか、と。 戦後とかの価値観に比べたらそりゃだいぶ進みましたが、それでも十年・二十年単位ぐらい古い気がする。 そんなのに縛られている女性たち、かわいそ過ぎるだろ!
 というか、あたしを含めあたしのまわりには「子供、いらない」という考えの人が結構いるので・・・「命に代えても子供がほしい」とか「子供を産まなきゃ自分に価値などない」と考える人たちが理解できない。 理解できないまでも共感できればと思って読んでみたのだが・・・かなしいかな、作者もまた「子供を産まなきゃならないと思っていない」タイプの人であるため、子供を願う女性たちの姿があまりにも類型的であり、ときにエキセントリックすぎる。 いろいろ取材したみたいだけど・・・所詮他人事、みたいな気がしないでもない雰囲気を感じる。
 作者あとがきによれば、この短編の連載から本になるまで9年かかっているそうである。 そりゃ古いのは仕方がない。
 9年かかった原因は、身内にダウン症の子が生まれてショックを受けたから。 他人事であったことが、作者にとって初めて当事者意識としてつきつけられたのかもしれない。 でもそれを消化するのにそんなに時間がかかるとは・・・覚悟を持って「子供のいない人生」を選択した人じゃないんだろうな、というのも感じた。
 小説としては、作者の姿が見えてしまうものはちょっと残念な気がする(作者の体験を背景にしたものは別にして)。
 やはりこの人の本質はエッセイストなのではないかしら。
 でもそのわりには、「産まない」選択をした女性は出てこない。 自分を掘り下げることを無意識に避けた?
 もしかしたら、次に書くもののほうが面白いかもしれない。

ラベル:国内文学
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする