2017年04月23日

ジャッキー ファーストレディ 最後の使命/JACKIE

 リアルタイムの熱狂を知らないあたしにとって、ジャクリーン・ケネディ(のちのジャクリーン・オナシス)は歴史上の人物である。 その姿を知っている人を知っている、という意味ではジェームス・ディーンのように“伝説のスター”に近いかも。 ジャッキーみたいに愛称で呼ばれるアメリカ大統領夫人ってあまり聞かないし(あたしが知らないだけかも知らないけど)、国民に愛された存在の人だったのかなぁ、というイメージがあった。 あと、JFK暗殺の際に撃たれて飛び散った頭蓋骨や脳の一部をとっさにかき集めた、ということからくるけなげで懸命な感じというか。 でも、ケネディ一族の伝記ドラマとか見たりすると、決して幸せな結婚生活ではなかったよな・・・と感じたり(ジョンの浮気癖とか、まぁいろいろね)。 政治的な意味合いとしての存在はアメリカ国民にしかほんとのところはわからない気もするので、他国民からしたら「悲しい宿命に巻き込まれた女性」を見る気持ちで。 あたしもナタリー・ポートマン観るために、みたいな気持ち。

  ジャッキーP.jpg ケネディ大統領暗殺。 彼女は、最愛の夫を伝説に変えた――。

 1963年11月22日、テキサス州ダラスにて、パレードの最中にジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された。
 その数年後、あるジャーナリスト(ビリー・クラダップ)が未亡人であるジャクリーン(ナタリー・ポートマン)のもとを訪れ、単独インタビューを申し出る。 オフレコあり、原稿もすべてチェックするという条件付きで取材に応じることにした彼女は、ファーストレディとしてホワイトハウスにいた時期から過去を振り返り・・・という話。
 インタビュー中の<現在>と、ジャクリーンの<回想>がそれぞれ映像になっている。
 ホワイトハウスを案内する番組に出ているジャクリーンはとても自信なさげで弱々しくて、なにか攻撃されるのを恐れているかのように見えた。 国民に愛された存在だと思っていたのでこの場面は衝撃的だった。 もしかしたら彼女はファーストレディとして自信を持っていたわけではなかったのか? 強気で自己主張するのが美徳だというアメリカ的な考えはこの時代まだそこまでではなかったのか?

  ジャッキー2.jpg ダレス空港、あのパレード直前。
 ダラス市民の大歓迎を目の当たりにし、「これってほんとに私たちのため?」と驚き、よろこびを隠せない。
 今と違って情報の伝達に双方向性がないから、現場に行かないとわからないというのは確かにあるだろう。
 ちなみに映画はジャクリーン視点で語られるが、JFKの存在は後姿や影中心。 そっくりさんを仕立てましたか、というくらいほぼ台詞もない。 やはりJFKを演じさせるというのはアメリカ人の観客にとってハードルの高いものなのか(でもこの映画の監督はパブロ・ラライン。 確かチリの方ではなかったか)。 ジャクリーンを中心にするためには夫は邪魔なのか?
 まぁ、彼の業績やその当時の人気振りを描写として追加してしまえば映画は2時間以上必要になるから、ということかもしれないけれど、ここまで影が薄いとそこになにかの意味があるのかと勘繰ってしまうよ。
 ちなみに、ジャクリーンが夫をジャックと呼んでいたのが印象的(英語圏のあだ名のつけ方はよくわからん)。

  ジャッキー6.jpg そのかわり、重要な役目を果たすのはボビー。
 ロバート・ケネディ(ピーター・サースガード)がジャクリーヌの強い味方として登場。 ピーター・サースガード、いつもと全然雰囲気違う(かといってボビーにそっくりというわけでもない)!、ということに驚いた。 でもすごくいい人に描かれていて、ジャクリーンにとって頼れる人だったということがよくわかる。 彼女が再婚したのはもっとずっと後のことだと思っていたんだけど、実はボビーが暗殺された年だったと知って・・・これまた驚いたのだが、ケネディ家における彼女の位置づけというかなんというかを思うと、唯一の味方であったボビーがいなくなったらケネディ家を離れるしかないよな、というのは実感としてよくわかり・・・そりゃ自由になりたくなるよね。 でもこれは現代の視点であって、当時は相当バッシングにあったらしいという記憶はあたしにも残っていた。

  ジャッキー4.jpg ジョンソン大統領の承認式。
 どうやらダーレン・アノロフスキーは、ナタリー・ポートマンに<ひそかに狂気を秘めた女>を演じてもらいたいらしい。
 夫でもあり大統領を失ったショックに加え、自分が<元ファーストレディ>になってしまったという事実を受け入れられない、突然のアイデンティティの喪失に襲われた知的な女性が、プライドを保つために何をするのか。 回想シーンの大部分を占める“暗殺から葬儀まで”の4日間を、彼女は「JFKを永遠の存在」にするため奔走する。
 葬式の準備が煩雑なのは、いそがしくすることで遺族たちの気を紛らわせる意味もあると聞いたことがあるけれど・・・ジャクリーンもそれで救われた部分もあるだろうし、でもそれ故に合間にポカッと開いた空白に落ち込むと廃人寸前の表情を見せる。 夫の血の付いたシャネルのスーツをいくら側近に言われても脱がないなどのエピソードには、脱いだら終わったことになってしまうという気持ちと、「着替える余裕があったんだ」と他人に思われることが許せないという主観的&客観的な視点が同時に存在しており、常にその感覚があったからこそ政治家の妻、そしてファーストレディをやってこられたんだろうなぁ、と感じさせる。 当時の世間的にはファッションアイコンでしかなかったのかもしれないけれど、彼女の中には鋭い知性と激しい情熱と、それを表に出さない自制心があった。 けれど暗殺事件がきっかけで、そのタガが緩む。 そこに狂気が顔を出すのだ。

  ジャッキー5.jpg あぁ、ジョン・ハート!
 ジャッキーが相談する神父さんの役として登場。 やっぱりこの人、声がいいよなぁ、としみじみ(彼がナレーションを担当する映画はクオリティが嵩上げされる感じがある)。 彼女が頼ってしまうのは神父というだけではなくこの声がもたらす穏やかさによるものではないかなぁと思ったり。 これが、彼の遺作なんだろうか・・・(涙)。

  ジャッキー1.jpg 葬儀のはじまり。
 リンカーンの葬儀をなぞるように、ジャクリーンのプロデュースにより盛大なる葬儀は行われる。
 今でも歴代大統領の人気投票で上位に食い込むジョン・F・ケネディ像をつくり上げたのは自分である、という自負が、このときの彼女にはある。 自信なさげにホワイトハウスを案内していた、美術品で飾りすぎじゃないかといわれてなんとか精一杯に反論していた彼女はもうそこにはいなくて、二人の子供を、亡き夫の名誉を守る未亡人として凛々しく佇む強い女性がいる。 内なる狂気をすっかり覆い隠して。
 これはジャクリーンという女性の形を借りた、ナタリー・ポートマンのための映画。
 伝記映画の形をとっているものの、どこまでが真実かはわからない。 「JFK伝説をつくったのは彼女」というテーマなんだろうけれど、そのテーマのために構成された物語という気もして・・・やはりもう歴史上の人物のことなんだから、創作が入っても気にするべきではないのかも。

  ジャッキーローズベリーティー.JPG 『ジャッキー』をイメージした映画館オリジナルドリンク<ローズベリーティー>を飲んでみました。
 結構ローズの味が強い感じ。 ベリーの味もするけど、ローズが勝っている。 ホットもあるので、それだとまた違った味になるのかもしれない。 フレーバーティーとしては飲みやすかったですよ。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする