2017年04月22日

にぎやかな落葉たち/辻真先

 手にとってあらすじだけ読んだとき、「シリーズ化できるんじゃない?」とさらっと思いましたが・・・第一章まで読んで「あ、これはシリーズ化など考えてない、これ一冊で終わらせる気だ」という作者の気概を感じました。
 何故ならば・・・人のよさそうな登場人物が続々登場するものの、彼らが抱えているものがそれぞれかなり重たい、ということがわかってきてしまうから。
 小さなグループホーム<若葉荘>は北関東の山間部にひっそりと佇む。 そこは元天才少女作家として一躍マスコミの寵児となったものの、小説以外のことで潰されて以降、地元で親の介護をしていた野末寥が、両親を看取ってから立ちあげ、オーナーとして、かつ世話人として携わっている。
 グループホームとは、単なる老人ホームではない。 本書によれば「病気や障害のため普通の生活が困難になった人たちが、一般の住宅で集団生活する施設」とのこと。 バリアフリーなテラスハウスという感じ? なので<若葉荘>の住人たちにはご老人もいるけれど、車いすの40歳もいるし、住みこみスタッフには17歳もいる、といった具合。
 17歳にしてはしっかりしてるな・・・という綾乃さん、作者がお歳だから昔の価値観で書いてるから、ではなくて、いまどきの17歳がなんでこんなに肝が据わってて立ち居振る舞いもしっかりしているかをその生い立ち故であると読者にわからせる。 その境遇がかなり修羅です。 でもそれだけつらい目に遭った経験があるからこそ、探偵役ができるという説得力でもあるんですよね。

  にぎやかな落葉たち.jpg アットホームな表紙絵に騙されてはいけない。
 いや、内容は<家族愛>や<同志愛>に満ちているのだけれども。

 いじめは、やった方は忘れても、やられた方は忘れない。
 これが終戦時幼い少年だった作者のいちばん言いたかったことなんだろうな・・・。
 なんとなく、この国の進まんとしている方向が物騒である、とその当時の空気を知っている人にとっては、知らない世代よりも敏感に感じ取れるもかも。
 でも、個人的レベルのいじめに関してならば、確かに忘れてないけども(あ、あたし昔、いじめられっこだったもので)、復讐とか考えてる暇ない。 いじめっ子たちとは没交渉ということもあるけれど、自分が楽しい方が重要。 だって、「自分が幸せになることが最高の復讐」っていうじゃない? 彼らの幸せを望みはしないし、もし幸せではないと知ったら「ざまーみろ」と思うかもしれないけど、あえて知りたくはない。
 けれど、狭い町の中でずっと顔を合わせて成長していかなければならないとしたら・・・きびしいな。
 いじめっこは、常に自分の行動がいじめだとは思っていない。 自己顕示欲による権力の発露に過ぎないから、ひとつひとつのことなど覚えていられない(それだけ、そういう行動は彼らにとって日常だから)。 でも彼らも屈辱を受ければ忘れないだろう。 でも恨みの強さは、反撃できないいじめられっ子のほうが勝る。 そしてその恨みは深い。
 そんなことを、思い出してしまった。

 それでも、ラストはあたたかに締めくくられる。 それこそ、辻真先ワールド。
 ちゃんと(?)メタ効果をつけるあたりもまた。
 辻真先はもっと評価されていい人だと思うんだけど・・・ジャンルオールミックスでクロスオーバー的に横断してしまう人はひとつのジャンルにとどまれないから、そもそも評価できる人がいないのかもしれない。
 だからこそ、読者としてあたしは辻真先を支持する!

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする