2017年02月11日

聖杯たちの騎士/KNIGHT OF CUPS

 テレンス・マリックの映像美がなんだか好きです。 『シン・レッド・ライン』が個人的に衝撃的。 けれど予告の印象から、これも『ツリー・オブ・ライフ』っぽいんだろうなぁ(ストーリーがあるようでない感じ)と思いつつ、それでもいいや、と。

  聖杯たちの騎士P.jpg すべてが運命のひと

 新進気鋭の脚本家としてハリウッドに招聘されたリック(クリスチャン・ベイル)は、その華やかな業界がもたらす生活に溺れ切ってしまう。 だが心の中では、自分を見失い、むなしさが降り積もってくる現状にも危機感を持ってはいた。 しかし流されるように時は過ぎ、リックもまた流され、さまよっていた。 そんなときに出会った6人の女性たちがリックに与えてくれたものを拾い集めながら、次第に自分と向き合っていく。 そんな魂の彷徨。
 とはいえ、そんなあらすじが意味をなすのかどうか・・・どこまでが事実で、どこまでが願望で、どこまでが幻覚で、もしかしたらリックの創作内容かもしれない、どの場面もそんな明確な区別はつかない。
 あたかもモダンアートのインスタレーションのよう。

  聖杯たちの騎士2.jpg 一人目の彼女がイモージェン・プーツとはまったく気付かず。
 だって 『マイ・ファニー・レディ』と全然違うんだもん!
 そんなわけで実はものすごく豪華キャストなのでありますが、表情をアップで撮るシーンもあるんだけど遠景のほうが多くて、「人間も背景の一部」という構図が結構目立っていて。 個人の魂の彷徨を描きつつ、人間の内面そのものよりももっと大きなものと一緒に映すことで、所詮人間の悩みや苦しみなどはちっぽけなものだと言われているような気持ちに。

  聖杯たちの騎士5.jpg タイトルの意味がよくわからなかったが(てっきり聖杯伝説のほうかと)、タロットカードが出てきて「あ、そういうことか」とわかった。 でも聖杯伝説要素はゼロではなかったかな。

 映画もタロットカードを切るように章立ての構成。 カードの意味をあらわすように女性が現れる。
 冒頭のナレーションで、父である王に託された使命を果たす途中で美酒の誘惑に負け、眠りに落ちて使命を忘れてしまう王子の寓話が引用されるが、同じようにナレーションはあたかもリックの父であり、神でもあるような立場で時折現れる。 ちなみにタロットカードにおける<Knight of Cups>は、正位置では「ロマンチスト、優雅、成功」を意味し、逆位置(めくったときにさかさま)ならば「口達者、女たらし、嘘つき、敗者」という意味らしく。 まさにリックを表現するカードである。

  聖杯たちの騎士4.jpg 水・海・空といったモチーフは必須。

 テレンス・マリックの映像美はまさにそこに集約される。
 「人間もまたその場面の構成要素のひとつ」と特別扱いしないことで、他の生き物やら自然や地球、場合によっては時の流れそのものを、映像に残そうとしているようだ。 あたしもその美しさに、黙って酔う。

  聖杯たちの騎士1.jpg 人を動かすのは、海に波紋を起こさせるためのようにも。

 勿論、光と影を利用した美しいショットも多々あり・・・観ていてほんとにぼーっとしてしまう。
 「物語がない」という批判はこの映画には当てはまらない。 だって、最初から物語ることを放棄しているのだから。
 これは夢だ、と言われてもすんなり納得できてしまう。
 これはリックという人物の彷徨、夢に落ち、目覚めるまでのひとときを映したものだけれど、そんな時期は多かれ少なかれ誰にもあって、でも重要なのは「目が覚めてからどうするか」なのだ。
 きっと、リックは正しい旅の道を見つけ、辿っていくことだろう。 そうでなければ、6人の女性たちの存在が意味をなさなくなってしまう。
 あぁ、そうか、これは「出会いという意味」を考えさせる映画だったのかもしれない。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 08:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする