2017年02月07日

夏の沈黙/ルネ・ナイト

 不意に図書館の新刊棚で遭遇。 「もう新刊じゃないだろ・・・」と思いつつ、図書館基準はよくわからない。
 発売前に東京創元社が<ゲラ読んで感想募集>という企画をやっていて(不定期ながら、結構そういうのをやっている)、たまたま知ったあたしは応募したのですが、見事にはずれました。 やっぱりあたしには懸賞の類の運がない! そういう意味で、妙に記憶に残ってしまった本でした。 なので借りて読むしかないだろ、と。

  夏の沈黙.jpg ルネ・ナイトのデビュー作。
 49歳のキャサリンはテレビドキュメンタリー制作の仕事をしつつ、充実した人生を送っていた。 夫は優しく理解ある存在、一人息子との関係はうまくいっているとは言えないが独立していて、周囲からはまったく問題がないと、むしろうらやましいと思われている。 更に手がけたドキュメンタリー番組が賞を獲得し、まるで人生の絶頂期であるかのような。
 だが、引っ越してきた新し家で、見覚えのない本を見つける。 『行きずりの人』というタイトルのその本は、彼女しか知らないはずの彼女の人生が、20年前の夏の記憶が描かれていた・・・という話。
 本を読んでて、主人公が「これって、自分?!」と感じるような体験なんてほぼない(作家が知り合いで勝手に自分をモデルにされていた場合はのぞく)と思うので・・・ある意味キャサリンは貴重な体験を。 でも気分のいいものじゃないのはわかる、しかも内容が自分がずっと隠してきたことなら。
 時間軸は現在と20年前を行ったり来たり。 その合間にキャサリン側の事情、本を送ってきた人物の思惑、『行きずりの人』本文が挿入されて、次第に謎が解けていく構成。
 とはいえ「すっきり謎解き!」という感じではなく、人の心は誰にもわからない(むしろ自分の気持ちを自分でいちばんわかっていない)というサイコサスペンス系・・・読み手によってどう解釈するかの余地があるのが逆に怖いというか、読後感すっきりしない味わいです。
 解説では『ゴーン・ガール』とも比較していましたが、そっちより『妻の沈黙』のほうがテイストは近いかと。
 わりと突き放した描写なので、登場人物たち誰にも感情移入ができないようになっていて、それがサスペンス色を強めているものの、感情移入が目的で読む人にとっては物足りないというか理解できない話になっているかも・・・結構賛否両論のようですが、原因はそれかも。
 うーん、あたしとしては、親がなんらかのわだかまりを持っていると、子供は意識的にか無意識的にか「それは自分のせい」と思いこんじゃって屈折する、という典型的な例を見せられたような気が・・・大きな隠し事のない人生って大事だなぁ、としみじみ。
 イヤミスと言えるほど突き抜けてはいないんだけど、後味悪いというか手触りがざらっとしているというか。
 前評判で翻訳権が何カ国にも売れたとか、デビュー作としては破格の対応とのことですが、世界的にこういうのが求められてるってことなのかなー。 それはそれで、なんだか複雑。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする