2017年01月20日

こころに剣士を/MIEKKAILIJA(THE FENCER)

 2017年、今年最初の映画はこれにしました(と書いたところで、2016年の映画を振り返っていないことに気づく。 あとで手帳を見直します)。
 フィンランド映画『ヤコブへの手紙』のクラウス・ハロ監督最新作。

  こころに剣士をP.jpg 勇気の先に未来がある

 舞台は1950年代はじめ頃のソ連統治下のエストニア。 レニングラードから移ってきたエンデル(マルト・アヴァンディ)は、エストニアの小さな田舎町で体育教師の職を得る。 実はエンデルはドイツの有名なフェンシング選手なのだが、ナチス政権崩壊後はソ連の秘密警察に追われている身だった。
 いろんな意味で厳しそうな校長から「生徒たちの課外活動に運動部を」と言われ、理不尽な紆余曲折を経てフェンシング部をつくることになったエンデル。 落ちている木切れで即席の剣をつくり、子供たちに教えるエンデルだがもともと教員経験があるわけではなく、子供が苦手な自覚もある彼は、フェンシングに対して手を抜くことができず厳しく指導してしまう。 それが生徒たちから反感を買うことになるが、エンデルの精一杯さを知っている少女マルタ(リーサ・コッペル)と、旧友から中古のフェンシング練習キットが届いたことで盛り上がり、生徒たちはひたすらフェンシングに打ち込むように。 そして、レニングラードで行われる学校別フェンシング選手権に子供たちが出たいと言い出し、しかしエンデルはレニングラードに戻れば身の保証はない。 みんなはまだ試合に出られるレベルではないと説得するエンデルだが・・・という話。

  こころに剣士を4.jpg どうせやるなら本格的な道具、ほしいですよね。
 全体的に説明は少ないのだが、流れでだんだんわかっていく構成。 実話ベースということなので『ヤコブへの手紙』のような謎を残すアクロバットな仕掛けはしなかった模様。 物語は予想通りの展開を辿るけれども、決して退屈ではない。 不器用なエンデルさんもいい味を出している。
 そして『この世界の片隅に』のように、スターリン圧政下なのだけれども絶対的な悪人が出てこない、というのもなにか共通するものがあるのだろうか(ソ連の秘密警察は登場するが、それはあくまで記号としてしか描かれない)。 いじわるな校長だって所詮は小物というか、スターリニズムに反するものは排除しなければ、という思い込みで動いているだけだし。

  こころに剣士を1.jpg マルタ、気の強そうな感じがなんともかわいい。
 むしろ態度から雄弁に語るのは子供たちである。 エンデルに対して警戒心や反感を持ってもそれを表に出さないのは、親たちがどんどん秘密警察に捕らえられているからだし(なのできょうだいの上の方は下の方の世話をするのが当たり前)、フェンシングに出会って楽しいと思っても、最初はなかなかはしゃいだりしない。 一生懸命、自分たちの感情を抑えている。 それが次第に普通の子っぽくなっていく様が、本作のいちばんの見どころではないかと。 エストニアの冬の光景が、いつの間にか明るい夏に変わっていくように。 多くの親を奪われている子供たちにとって、エンデルとの関係は疑似親子のようになっていく。 それが切ない〜。
 基本的に静かな映画なので、試合の場面では意外にも躍動感を覚えてしまう。 王道の流れなのになんだかハラハラしちゃいました。
 ・・・思いのほか、よかったなぁ。
 一年の最初に観るにふさわしい映画だったかも。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする