2016年12月27日

さらばスペインの日日/逢坂剛

 <イベリア・シリーズ>もついに最終章まで辿りつきました。
 思えば、これを入手してから約三ヶ月。 一気に駆け抜けた全7作でございました。
 今年中に読み終われてひと安心。
 はじめは「最終巻にふさわしく、分厚いな」とニヤリとしていましたが、結構これまでの振り返りが多く(そりゃ普通は一年後とかに続きを読むわけなのでそこは親切なのだろうけれど、シリーズ一気読みした身としては「重複多い」と感じてしまうのはいたしかたないことか)。

  さらばスペインの日々1.jpgさらばスペインの日々2.jpg この劇画タッチの表紙絵もなんだか懐かしい。

 ナチス・ドイツは降伏したが、日本はまだ負けを認めていなかった。 しかし無条件降伏を突き付けられた挙句の原爆投下についに降伏、第二次世界大戦は終わりを迎える。
 戦争は終わったが、結局何の役にも立てなかったと北都昭平は忸怩たる思いになるが、それは英国情報部員のヴァジニアとて同じこと。 戦後処理で北都は戦犯扱いになるかも知れず、ヴァジニアは情報部にいる二重スパイの存在を白日の下に晒さなければ気がおさまらない。 そんな二人を罠にかける陰謀が密かに進行していて・・・とそれなりに活劇場面はあるのですが、全体としての緊張感は薄い。
 やはり戦争が終わってしまったからか。
 そして敗戦国の人間である北都に戦勝国側のみんなが優しいと感じてしまい、なんだかご都合主義の香りが・・・。
 いちばんリアリティがあるのは敗戦国の人間を国へ戻す引き上げ船での描写。
 もしかしたらここが最も書きたいところだったのかも。
 北都が日本に戻ってからの物語性もいまひとつ・・・日本で戦っていた人々(というか、ある意味焼け出された人々)を目にして実際の祖国の悲惨な状況を初めて知ってショックを受けた、というところがポイントなのかも。 スペインでの日々は恵まれていた、と感じるところ(ベルリンにいた尾形記者も同じように感じているので、ほんとに日本はひもじかったんだろうな、と)。

 まぁ、ハッピーエンドは読者サービスだとしても、一作目『イベリアの雷鳴』の面白さとは質が違うものになっちゃったな、と残念な気持ちになったが、作者による覚え書きを読んで一気に気持ちが変わった。
 そこには、作中に出てきた実在の人物についてと、その人々を知る方々へ取材したことについて書かれており・・・本編より熱量あり。
 でもその熱を感じられるのは、やはりこのシリーズを読み切ったからこそ。
 素晴らしいボーナストラックをありがとう!、なのでした。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする