2016年12月11日

蜂のざわめき/ヴァレリー・ギアリ

 いろいろ読みかけのシリーズを抱えているくせに、不意に気になって手にとってしまうときもある。 そんな典型。
 舞台はアメリカ、オレゴン州の小さな町。 少し前に母親を病で亡くして「天国なんてない、死んだら何もかもなくなる」とかたくなな気持ちになる15歳のサム(サマンサ)と、幼い頃から霊的なものが見えて、彼らに自分の身体を乗っ取られてしまうことに懸命に抵抗して生きてきた10歳の妹オリー(オリヴィア)。 だからオリーは近くにあまりに力の強いものがいると彼らの言葉を喋らされてしまうので、ときどき口をきかなくなり、ヘンな子供と思われている。 特に、悲しみに抵抗している姉にとってはただひたすら、自分を手こずらせる、信じないものを信じている振りをしている困った妹だと。
 そんな二人が、近所の川で若い女性の死体を発見する。 引き上げるまもなく、通報することもできず死体は川を流れていってしまう。
 そんな姉妹二人の最悪で、忘れがたい夏のこと。

  蜂のざわめき.jpg 表紙には夏を感じさせる要素はないけれど。

 父親が変人であるといろいろと町で噂になっていることもあり、サムは父親を疑ってしまい、その後、容疑を晴らそうとしてものっぴきならない羽目に落ち込む。 オリーはオリーでいろんなものが見え、<それ>らが伝えてくる情報もあるのに誰にも知らせることができないというジレンマを抱えている。
 殺人事件にスピリチュアル要素は反則だろ、と思う向きもあるでしょうが、なにしろ相手はティーンエイジャーですし、そうでなくても現実世界と折り合いをつけるのが難しいお年頃、あまり気になりません。 むしろ、本心ではお互いを思いやりつつも実際には衝突しがちな姉妹の様子がリアル。
 小さな町の出来事なので犯人の意外性などはそんなにないものの、狭い世界に生きているからこその<生きていく上で、しでかしてしまった過ちと償い>の残酷さがくっきりと浮かび上がる。

 原題の“CROOKED RIVER”はオレゴン州に実在する川の名前らしい。
 遺体が見つかった川なのかもしれない。 でもそれでは日本人にはわかりにくいから、姉妹の父が養蜂をしていることと(ミツバチは基本穏やかな性格だが)、姉妹の不安(特にサムはミツバチの身の上を自分の境遇に重ねている部分あり)とを掛け合わせた『蜂のざわめき』という邦題はふさわしいかな、と思う。

 「めちゃくちゃ面白いです!」と万人に薦めたいというわけではないのだが、なんだか自分の心に引っかかる忘れがたい作品。
 そういう出会いもまた、タイミングです。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする