2016年11月03日

傷だらけのカミーユ/ピエール・ルメートル

 『悲しみのイレーヌ』の痛みもさめやらないうちにこれを読むのもどうかと思ったが・・・人に貸す約束をしていたので(その人は『悲しみのイレーヌ』を読んでいるところ)、いざというときのために早めに読んでおくことにする。 そういうのがないと積読本が増えるばかり・・・。
 『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』に続く、カミーユ・ヴェールヴェン警部シリーズ三部作の最終章(日本での翻訳の順番は、アレックス・イレーヌですが)。

  傷だらけのカミーユ.jpg なんだか表紙も“狩猟画”みたいなイメージに・・・。

 早朝に宝石店を襲う強盗事件が発生。 それに巻き込まれてしまった通行人のアンヌは大怪我を負い病院に搬送される。 実はアンヌはカミーユ警部の恋人で、その関係を周囲に伏せていたため言い出せず、けれど自分が事件の指揮をとると宣言してしまう。
 勿論、事件関係者が近しい人の場合は捜査に参加できないのはどの国でもお約束。
 カミーユは事件を追いかけながらアンヌの心配もし、なおかつ上層部にアンヌとの関係がばれないように気をつけねばならず・・・三重苦を背負いながらの捜査は当然思ったようには進まない。 やがて真犯人(主犯格)の思惑も見えてきて・・・という話。
 シリーズ物には前作を読まなくても全然問題のないタイプと、順番を間違えるとネタバレするタイプとがありますが、この三部作は完全にネタバレ対象。 特に本作は『悲しみのイレーヌ』と密接した関係にあるので、そっちを読む前にこっちを読んではいけません!
 前2作はかなりアクロバットな構成だけれど、本作は比較的順当(?)なつくり。 時間軸もいじっていなければ大どんでん返しがあるわけでもない。 けれど、「あぁ、主役はカミーユ警部だったんだな」ということをしみじみ納得させてくれる(いやいや、それなりに<意外な展開>はあるのだけれど、もはやそれくらいでは驚かなくなっている自分がいる)。
 作品単体の衝撃度としては『その女アレックス』が確かに抜きん出ているのだが、それが三部作においては中継ぎに過ぎないという恐ろしい事実!
 視点を変えるとそうなっちゃうのか・・・というのも非常に驚きです。
 原題の意味は“サクリファイス/犠牲”ですが・・・カミーユ警部は立ち直れるのだろうか、と、とても気がかり。
 あぁ、ほんとにフレンチミステリは後味が悪い。
 ちなみに本作はCWA(英国推理作家協会)インターナショナルダガー賞を受賞(数年前に『その女アレックス』も受賞)していますが、今年も『天国でまた会おう』で二年連続受賞してしまっております。 イギリス人もはまっているのか、ピエール・ルメートルに。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする