2016年11月01日

燃える蜃気楼/逢坂剛

 <イベリア・シリーズ>もさくさくと第3弾。
 舞台は外国で登場人物のほとんどが外国人だというのに、翻訳ものに比べて格段に読みやすいのは何故なのか。 そこがやはり母国語ってことなんですかねぇ。 まぁセンテンスが比較的短めで、トリック云々とかではなく運命に翻弄される個人という大河ドラマという性格上の違いもあるかもしれません(日本人作家の作品でも、読みやすさよりロジック重視ならば時間がかかるかも)。

  燃える蜃気楼1.jpg燃える蜃気楼2.jpg 日米開戦後の展開。

 チャーチルの思惑通り日米が開戦、となると北都とヴァジニアの関係もより複雑に。
 北都の「自分はペルー国籍で(かつて家族ごとペルーに移民したから)、今ではスペイン国籍も持っている」という言葉に対し、ほぼ誰もが「とはいえお前に流れている血は100%日本人だろ」と答える。 そんなこと言われちゃったら、<国籍>って何?、と考えてしまう。
 勿論、現代とは時代も違うし事情も違うのはわかるのだが・・・アイデンティティーをどこに持つのか、それは心の中の問題で何にも証明できないってことなんだなぁ、と。 となれば強権的な一派が権力をもてば、証明できないことをいいことにやりたい放題になってしまうではないか。 ・・・人間って、おそろしい。
 今回、新しい登場人物として「アメリカ国籍を持つ日系女性」杉原ナオミ、一作目に出てきたペネロペと瓜二つの女性(しかし本人はペネロペなど知らない、という)が加わった。
 他にもゲシュタポの手先である双子の兄弟など、雑魚キャラなのか今後も重要な役割を果たすのかよくわからない人物もいろいろ。 そこが大河ドラマの面白さ。
 あと、どこまでが架空の人物でどこまでが実在の人物かというのが微妙によくわからないので(それはあたしが近・現代史に疎いからです)、「はっ、キム・フィルビーってグレアム・グリーンの上司だったとかいうあの?!」と今頃気づいたり。 ということはあの人もあの人も実在の人物かも・・・(でも調べてその人の人生の先がわかっちゃったら面白くないので、あえて調べない)。
 ほんとにこのシリーズ読んだら、第二次世界大戦全体を俯瞰できちゃうかも!
 最近つくづくと、子供の頃から娯楽として“読書”を楽しんできただけのつもりが、いろいろ読んでいくと最低限の歴史や教養がないと深いところまで楽しめない、ということに気づかされる(勿論、そういうことを意識していなくても様々読んできたおかげで身についた知識も多いのですが)。
 うむ、知ることに終わりはない。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする